第16話さりげないキス

数日後の昼下がり、炎天下の歩道を二人で並び歩いていた。

「暑いぃーよぉ~もう~、どうにかなんないのかなぁ~ゆづぅ~」

「余計暑くなるよ。暑いって連呼するのやめてよ、凍華」

「仕方ないよぅー、この暑さは異常だってぇー」

額の汗を腕で拭いながら愚痴り続ける凍華。

愛依にパシられている俺と凍華。近所にケーキ屋があるがそのケーキ屋にはない期間限定のケーキを食べたいと言い出した愛依のためにケーキ屋に向かっていた。

目的のケーキ屋が近付いてきた頃、見覚えのある人物がこちらに気付いて駆け寄ってきた。

「平塚せんぱぁ~いぃっ!会いに来てくれたんですかぁっ、嬉しいですぅっ!」

「ちょっ、離れろって!おまっ、暑苦しいってぇーのっ!うぜぇ~ってぇのっ、杏美っ!」

抱きついてから腕を絡めてきた杏美。

「仲が良いんだね、二人は」

凍華が拗ねたように頬を膨らまし、杏美を睨み付けている。

「違うよ、凍華ぁっ。目を逸らさないで、凍華が考えているような関係じゃないよ。本当だから、ねぇっ凍華!」

「否定することないじゃ~んっ、平塚先輩ぃ~。ううぅぅっ、ぐっすっうぅぅ......消えた、いぃぃっああああああ」

「こんなとこで泣くなよ、状況的にまずいだろ、これはぁぁっ!あっ、とうっ──」

歩きだした凍華を呼び止めようとした瞬間、踵を返した凍華が左頬にキスをしてきた。

「っ......ふぇっ!と......うっかあぁっ?」

俺の間抜けな声を聞いて、叫びだした杏美が右頬に唇を近付けて、キスをしてきた。

「うっ......ううあああっっ!私もっ、すっうぅるっしぃっ!」

「......何で張り合って、キスされるの?二人から」

外の気温と彼女らからされたキスが相俟って、身体が火照っていくのを感じる俺。

「「何でって、分かんないなんてサイテェー」」

息ぴったりで挟まれた二人に返された。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る