第11話杏美の様子を通話で

午後3時過ぎ。

俺は、録画していたアニメを観ていた。

ソファに座り、寛いでいる。太ももに愛依の頭がのっかっていて、寝転んでいる。

テーブルに置いていたスマホが着信を告げた。

「ゆづにぃ、鳴ってるぅ早くしてぇ」

「分かってるよ。もしもし、誰です?」

スマホを耳に近付け、通話をする。

『平塚先輩ですか?紫夏見しかみです......あずちゃんの友達ですけど』

「そうだけど。あずちゃんって......杏美のことかな?女子から連絡なんておかしいんだけど......」

『......はい。あずちゃんが部屋から出てこなくて、掛け布団を頭から被って何も喋らなくて。その、平塚先輩が関わってるのかと......思って。かけたんですけど、心当たりはないかなぁ......と』

「そうなんだ。珍しいね、杏美がそうなるのは。もし、俺が関わってたらどうするの?」

『......ゆっ、許しません。あずちゃんがいつも通りになるまで謝ってもらって、傷つけないことを誓ってほしいです。関わっているなら......ごごっごめんっ、なさいっ!つい感情的になってしまって』

「友達が塞ぎ込んでたら、そうなるのは仕方ないけど。えっと、落ち着いて聞いてくれるかな?」

「えっ......は、はい......」

「杏美がそうなったのは──」

俺は一通り話終え、紫夏見の反応を窺う。

「そうですか。例え、そうだったとしても......私はあずちゃんの味方です。明日、あずちゃんに謝ってください。絶対ですっ!」

「あのさ、杏美ん家知らないけど。」

「知らないんですか、平塚先輩?嘘ですよね、それ」

「本当だから。それほど親しい関係じゃないから、杏美とは」

「何言ってるんですかっ!平塚先輩は!って、ごめんなさい......あずちゃんの住所言いますので、いいですか?」

俺は、紫夏見の迫力に気圧されて、謝る。

「えっと、ごめん。お願い、住所言ってください」

「あずちゃんの住所は──」

「ありがとう。明日、謝りに行くよ。紫夏見さん」

「お願いします。それでは」

プツッと、通話が切れたタイミングで、玄関から凍華の声が聞こえてきた。

「お邪魔しまぁす、遅くなってごめんね」



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