第17話 模擬戦出場順

「それでは、これよりドラバルド教員担当生徒とハルト教員担当生徒の模擬戦を行う。では、1戦目の生徒前へ」


 そう審判役の教員が言うと、見物の生徒達が大きく盛り上がる。

 そしてドラバルド側から出て来たのは、リティアであった。


「(あ~あ、こんなに人がいると手抜きも出来ないじゃない。でもまぁ、めんどそうだから1番にしてくれたのは、ありがたいんだけど)」


 リティア・ヘル――リーベスト魔法学院で、マルスに次ぐ成績結果を毎回出し、女子生徒のトップに立つ生徒。

 容姿も美人である事から学院内でも美女として有名で、女子からもクールな女性として憧れている。

 だが、あまり他人からの視線を気にせず、人とは必要最小限しか関わらない態度で、一見他人に興味がなさそうに見えるが、マルスやガウズといるとは全く違う態度で親しく表情豊かに接している。

 その時のギャップにやられる生徒が多くいるらしく、噂ではファンクラブがあったりするらしい。


「なるほど、結構詳しくまとめられてますね、この資料」

「いや資料より、どうして貴方が観客側にいるのよハルト先生」


 俺は何故かミイナに怒られてしまった。


「どうしてって、もう俺がやる事がないからですよ。言いたい事は伝えましたし、後はあいつら次第なんで、俺はこうやって見やすい所から見てるんですよ」


 俺はミイナから試合の役に立つかもと持ってきてくれていた、マルス達の資料に目を通しながら返事をした。

 ふ~ん、得意な魔法は炎か。

 するとそこで、うちの1戦目生徒が出て来た。


「(え~何で貴方? 私はてっきり、あのレモン色の彼だと思っていたのに。はぁ~……めんどいな)」


 リティアの前に立ったのは、デイビッドであった。


「(たっく、あのヤロウ! 何で俺が一番手なんだよ! 俺はあのガウズって奴とやり合いたいって言ったのに! どうして、女のコイツなんだよ! 話がちげぇぞ!)」


 ――遡る事、数分前。


「え、出る順番?」

「はい、ドラバルド先生の方から、ハルト先生に渡してくれと言われまして」


 俺は突然来た審判役の教員から、何故かドラバルド側の出場順が書かれた紙を受け取った。


「え、何で?」

「さぁ? それは私にも分かりかねます。とりあえず、出場順を決めてもらえますか?」

「あ、はい。直ぐに決めるんで。終わったらいいに行きます」

「それでは、よろしくお願いします」


 そう言って、審判役の教員は審判控え所に戻って行った。

 俺は貰った紙を見つめながら、相手の出場順を確認しているとデイビッドが話し掛けて来た。


「おい、俺はあの金髪ヤロウの相手にしろ。順番がそれに書いてあるんだろ」

「あ~はいはい。分かった、分かった」

「絶対だぞ」

「オッケ~、オッケ~」


 俺はデイビッドに適当に返事をしながら、何故ドラバルドがこんな物を渡して来たのかを考えていた。

 意図がよく分からんな。

 そう言うルールでもないし、どんな相手でも問題ないと言う頂点に立つ者の余裕的な? ……要は、舐められてる?


「ねぇ、そんなの渡して来るって事は、私達舐められてる?」

「そうに決まってんだろ! 新入生だからって相手にならねぇと思ってんだよ!」

「僕はとりあえず、マルスさんと当たらなければいいです」

「まぁ、それが普通の反応だしここに居る生徒全員、お前らが勝つなんて思ってないだろうな」


 俺の言葉にデイビッドが睨んで来た。


「そう睨むなって。俺は別に無謀に学院トップの生徒と模擬戦を組んだ訳じゃない。お前らなら、相手に一泡吹かせられると思ったからやってるんだ」

「ハッ! 当然だろうが! 俺の強さを証明出来る最高のチャンスなんだからよ、他の2人がどうだろうが俺だけは勝つ!」

「(……実力を見る模擬戦なのに、どうして3年生に勝てる様な言い草なの?)」


 デイビッドはやる気満々だが、エリスは俺に少し疑いの目を向けて来て、ノーラスは小さくため息をついていた。

 三者三様ってか。

 まぁ、とりあえず相手の順番が分かるのなら存分に使わせもらうか。

 俺はドラバルドから貰った紙を見て、こちらの出場順を決めた後その紙を燃やして立ち上がった。


「よし。順番は決めたら、後はその通りに模擬戦をしてくれ」

「ん? ハルト先生、その言い方だとここに居ないつもりに聞こえるんですけど」

「あぁ俺はここでは見ないぞ。後はお前らの好きな様にやってくれ。俺は観客の方で見るから」

「ちょっと、どう言う事?」

「あーいけいけ。別にお前なんていらねぇよ」

「ほら、デイビッドもあぁ言ってるし。じゃ、順番だけ言うから後よろしく」


 俺は陽気にそう言って、出場順を伝えた後審判役の教員にも同じ出場順を伝えた後、観客側へと向かうとそこでミイナに捕まったのであった。

 そして時間は今に戻る。

 審判役の教員が出場生徒に腕輪を1つずつ渡して、模擬戦のルールを話し始めた。


「ルールは2つ。1つ、相手が気絶するか降参した時点で終了とする。2つ、先程渡した腕輪を付け、前胸と背中に急所ポイントが出現するので、先にどちらかが破壊された時点で終了とする。ルールは以上だ。質問はあるかい?」

「私はないで~す。慣れてますし」


 そう言ってリティアは、渡された腕輪を手首に付けると前胸と背中に急所ポイントが出現した。

 それを見てデイビッドも同じ様に腕輪を装着し、急所ポイントを出現させた。


「要は相手の攻撃を受ける前に、攻撃すればいいって事だろ」

「(うわぁ~昔のガウズみたいな考え方してるよ……)」


 リティアはデイビッドの発言に少し引きながら小さなため息をついた。

 その直後、模擬戦1戦目の開始合図が言い渡されるのだった。

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