政略結婚から始まる、幸せになるための物語

妾腹の子である雪宮志乃はある日、父の命により会ったこともない男のもとへと嫁がされる。

家の利益になるための政略結婚。そこに愛もなければ幸せもない……と思いきや。
嫁いだ先、滝川の家は変わった場所でした。女中や使用人が次々と止めていくため、家の事は志乃がやらなければならず、目が見えない義祖母の世話もしなければなりません。
けどこの義祖母の千代さん、そして夫である慶一郎が、とっても良い人たちなのですよ。

慶一郎はちょっと言葉足らずなところがありますけど、それでも志乃を思う気持ちは本物です。それ故にもっと分かりやすく気持ちを伝えなさい、千代さん、慶一郎に渇を入れてあげてくださいって何度も思いましたけど、そんななかなか上手くいかないもどかしさが、このお話の面白いところ。

滝川の家に来た当初はオドオドしていて、成り行きに身を任せるだけだった志乃ですけど、だんだんと自分の好きなこと、やりたいことを見つけていく様子が感慨深かったです。

滝川の家はみんないい人。
特に気に入ったのが、やって来た志乃のことをちゃんと可愛がってくれて、孫夫婦を優しく見守ってくれる千代さんです。もしかしたら彼女の存在が、夫婦円満の鍵なのかもしれません。
そしてそんな千代さんに懐いている飼い猫ちゃんにも、たくさん癒されました。

出会いや交際の過程をすっぽかして、結婚から始まる夫婦の物語。
読み終わった後、幸せは結婚してから家族で作っていくものなんだって思いました。

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