第8話

「もう一度言います。お金は結構ですので、

退店していただきたく思いま...」


と言いかけたときだった。


お金持ちそうな年老いた美人マダムが席を立ち、

つかつかと藤島さんの前に躍り出た。


マダムはうちの店の常連のお客様だった。


「あらー、一度だけ来て、二度と来ないお店?

それはあなたのお店じゃなくて?

店名は伏せますけどもね、あなたのお店、

この前、初めてうかがいましたが、味に上品さはなくぼやけた味でしたわ。それから、可愛い女の子バイト使ってるみたいだけど、甘やかされて教育がなってないせいか、接客はイマイチでしたよ」


「な...!」


「お前に何が解るって言うんだ...!?」


「申し遅れましたが、私、こういうものです」


マダムは流れるような滑らかな動作で高そうなショルダーバックから名刺入れを取り出し、名刺を藤島さんに一枚渡していた。


「り、料理研究家の...あの勇名辛口コメンテイターでありインフルエンサー...」


「私ね、こちらのお店のファンになってしまったの。一週間くらい前だったかしら、初めて

お伺いして、ランチメニューをいただいたんだけど、凄く美味しくて。それから毎日通っているの。SNSでも紹介してしまったし、ブログでも絶賛のコメント文を思わず書いてしまったわ」


藤島さんはガタン、と腰を抜かし、それから

慌てて。


逃げるように店から出て行ったのでした。


俺のお店が。

広告費を使わず、

全く宣伝していないのにもかかわらず、

連日、盛況しているのには、

今、知ったんだが、このマダムの影響力が

あったみたいで。


高級レストランのお客さんは真横の俺の店に流れ。


更に、


マヒロちゃんは、閉店間際に俺の店に来て。

入り口のところで、俺にこう懇願した。



「人手足りないって噂を聞いたの!

私を雇ってくださいっ!」


と言われ、マヒロちゃんを雇うことになった。


今は。


仕事に追われて恋愛どころじゃないけど。

もうちょっと落ち着いたら、マヒロちゃんを

デートに誘おうと思ってる今日この頃です。










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上司に会社(高級レストラン)をクビにされてしまったが美人な女性常連客や可愛い女性料理人が独立した俺の店に流れてきたwオーナーシェフよ、戻って来いと言われてももう遅いですからw。 雲川はるさめ @yukibounokeitai

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