第14話:守護神ヘルメス
キャッスル王国内を遠回りしながらブゼル大荒野にたどり着くのに、なんと三カ月もかかってしまいました。
十五万人もの民と一緒に移動しているのですから仕方ありません。
いえ、ブゼル大荒野にたどり着いた今では十八万人を超えています。
移動途中で出会った貧民を母上が見捨てられなかったのです。
「セシリア、本当に大丈夫ですか。
徐々にダイヤモンドと真珠の値段が下がっているのではありませんか」
母上の言われる通りです。
一度にあまりにも多くのダイヤモンドと真珠を使って買い物をしたので、価値が少し下がってきてしまいました。
「大丈夫でございます、母上。
何も心配する必要はありません。
ダイヤモンドと真珠は商会を通して大陸中に売っています。
キャッスル王国内で使った程度では直ぐに値段は戻ります。
それにもし値が戻らなれば、色付きのダイヤモンドと真珠を創り出しますから」
「そうですか、セシリアが大丈夫だと言ってくれるので安心です。
ただ食糧の値段が四倍になっているのが心配です。
貧しい民が困っていないでしょうか」
「大丈夫ですよ、母上。
将軍を通して冒険者に魔境で狩りをさせる許可はとっています。
大荒野にも意外と多くの魔獣が住んでいるそうです。
開拓のついでに魔獣を狩って食料にしますから」
「そうですか、セシリアがそう言ってくれるのなら、もう心配するのは止めます」
母上はお優しいから色々と考えてしまわれるのでしょうね。
絶対に不可能な事なら民を助ける事も諦められるのでしょうが、無理をすれば助けられる状態なら、つい無理をしてしまわれる。
その点は私が上手く調整してあげないといけませんね。
母上を慈母聖女に祭り上げて、コリンヌやソマーレッドに復讐しようとしているのですから、できるだけの事はしなければいけませんよね。
(そうだぜ、セシリア。
守護神である俺様の力を使えば簡単に復讐できるのに、全然頼らずに自分の力だけで復讐しようとしているのだからな)
(うるさいわね、話しかけてくるなと言ったでしょ、ヘルメス)
(ちぇっ、俺様はセシリアの守護神様なんだぜ。
そんな薄情な事を言うなよ。
もっと俺様を頼ってくれよ。
セシリアが望むのなら、今日にでもジェイムズ王国を滅ぼしてやるぜ)
(私も父上も母上もそんな事は望んでいないわよ。
どうせ貴男に任せたら、国中の人間が誰も信じられなくなるような噂を流して、殺し合うように仕向けちゃうんでしょう。
そんな事は絶対にやらせないからね。
とっとと消えてしまいなさい、ヘルメス)
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