第7話:慈母聖女2
「どういう事ですか、どうしてこの街にはこんなに乞食が多いのです」
母上様の怒りが一向に収まりません。
最初の被害女性達の問題は何とか話がつきました。
街の守備隊長が話の分かる男で、母上様が被害女性達を保護する事を認めてくれたのです。
被害女性達の家族が文句を言ってきた場合には、被害女性達の救出費用を請求した上で、被害女性達が助けてくれた母上様にお礼のために仕えると言った、証言書を家族に見せてくれると言うのです。
母上様も色々と配慮してくれる守備隊長を評価していたのですが、新たな問題が起きたのは諸手続きが終わって街の奥に案内された時でした。
街道の宿場街とは思えないほど多くの乞食がいるのです。
中には餓死しそうな女子供や老人までいるのです。
少し前に激怒されていた母上様が、そのような光景を見て激高されるのは仕方がないのですが、私としては守備隊長はよくやっていると想像していました。
「伯爵夫人のお怒りは仕方がないと思いますが、守備隊としては彼らを街の中に入れるのが精一杯なのです。
守備隊が国や街から預かっている軍資金や兵糧を、彼らのために使うわけにはいきませんし、街に彼らを養うように強要する事もできません。
守備隊にできるのは、彼らが野獣や盗賊に襲われないように、城壁内に入れる事だけなのです」
守備隊長の話は私の想像通りでした。
母上様も渋々守備隊長の言い分を認めています。
でも何とか他に方法がなかったのかという想いを抑えきれないようです。
「王都にこの状況を知らせなかったのですか」
「至急援助を願いたいと伝令を送ったのですが、未だに何の返事もなく……」
守備隊長はできる限りの手を打っているようです。
被害女性達への対応を見れば騎士道精神に溢れた漢なのでしょう。
その守備隊長が悔しそうな表情をするくらい、王国の対応が悪すぎるのでしょう。
それに、恐らくですが、そもそもの原因がウィルブラハム公爵家だと思われます。
だからこれ以上母上様が努力している守備隊長に文句を言うのは、母上様に恥をかかせてしまいかねないので、私がこの後の話を引き受けた方がいいでしょう。
「守備隊長殿、この乞食になってる者達は、元はウィルブラハム公爵家の領民なのではありませんか。
ウィルブラハム公爵家の厳しい税に耐えかねて、生きるために逃げてきた者達ではないのですか」
「ウィルブラハム公爵家の政治を批判する気は全くありませんが、確かにこの者達はウィルブラハム公爵領に住んでいた者達です」
守備隊長の立場ではこれ以上の事は口にできないでしょうね。
「まあ、なんていう事でしょう。
ウィルブラハム公爵家の悪政が全ての原因だったなんて。
私は守備隊長殿をどうこう言える立場ではなかったのですね。
貴男、セシリア、乞食にまで身を落とした領民達を助けられませんか。
セシリアにそれだけの余裕はありませんか」
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