自称3000歳ロリ!【ド】エルフが旅に逝く!

『大お婆ちゃん、また明日ね~♪』


『うむ』


 種族的に何故か耳が長いエルフ、

 …の女の子、名前は、【マリカ】じゃったかのぅ?


 マリカが弟の【クル】を家に戻すために、ワシの屋敷まで来た。子供の相手はいつも疲れる。今日は、来るのが遅くてヘトヘトじゃわい。


『お母さんが、カレーを作ってくれたわよ』


『やった~♪』


 集落の家は、外界とは違い、蹴鞠のような形になっておる。

 なっておる…というか、ワシがそうなるように植物を品種改良したんじゃが。


 こう、ちょちょいと!


『クルの手を繋いで帰るんじゃよ。マリカ』


『カナデ様、

 私は【キリカ】で、弟は【コル】ですよ』

『マリカとクルは、祖父母です』


 なっ!?


『う、うむ、分かっておる』

『お主を試したんじゃ』


ーーー何のために……とは聞かんでおくれ。

 ワシも言ってて、よぅ分からん。


『大お婆ちゃん、ボケたぁ?』


『(子供の言葉は、よく効くのぅ…)』


『コラッ』

『カナデ様だって、老いが迫っているのだから仕方ないでしょ!』


 キリカや…、まったくフォローになっとらん。


 カナデは苦笑いしながら、屋敷の門から見えなくなるまで2人を見送った。


『もぅ、3000年かぁ……』

 

 空を見ながら屋敷に戻る。 


………………

…………

……


 前世の名前は、米田 奏。


ーーー3000年前。


 ドワーフの長、エルダードワーフの父様と、

 エルフの長、ハイエルフの母様が、

 その祖先が起こした【世界樹戦争】(とは、名ばかりの縄張り争い)を終結させるために、休戦を申し出る。



 そこから何年か、


 第3勢力(蛮族)が、両種族が【世界樹戦争】により疲弊している勘違いし、侵略しに来たのを迎え撃つために【世界樹同盟】を作って、第3勢力を全滅させる。


 落ち着いてきた頃に、種族間で交流が広がり、結果的に生まれたのがワシなのじゃが、


 長寿のドワーフやエルフが約200~300年、さらに、長寿のエルダードワーフやハイエルフが約500~1000年生きるのに対して、


『3000年かぁ……』


 生き過ぎた。


 【世界樹村】から見る景色は3000年経っても、ちっとも変わらんし、我が子たち(産んではないが)の顔は区別がつかん。

 エルフは美男美女。ドワーフは活発系少女、男の中の漢。


ーーー普通が、おらんっ!


『日本の普通の顔が恋しい』


 1000年前から、エルフの秘薬をボケ防止用に飲んでおるが、最近になってマジでボケがヤバい。


『【世界樹ちゃん】、お主も歳か?』


 【世界樹戦争】時代の生き証人、


 集落では生き仏、


 数世代後の親族が務めている族長の、さらに上の大族長にされた、


 【ドエルフ】のカナデ=スエン=ドは、この集落を【守っている】世界樹に向かって尋ねる。


『(【加護】がボロボロじゃ)』


 ワシが産まれたと同時に植えられた【世界樹ちゃん】。


 世界樹の寿命は約4000年で、

 生涯に一度だけ黄金の果実を実らせて、その果実の種が次代に繋がるのじゃが…。


 【世界樹ちゃん】は3000年、果実を実らせてない。

 この1000年間は、花すら咲かせない。


ーーーそして、世界樹の自己防衛機能【深緑の加護】が薄くなっとる。


 このままだと、外界に集落が見つかる恐れがある。


『ワシも、大族長として判断を迫られてるのかもな』



 で、



『【大お婆ちゃん】、【ドエルフ】、【カナデ=スエン=ド】ってなんじゃよっ!?』


ーーー3000年分の不満が吹き出る!


 屋敷の中でドワーフの火酒を飲み干してから、防音の魔法を構築して叫ぶ!!


 正直、


『大が10個以上ぐらい付くはずが【大お婆ちゃん】と呼ばれているだけマシなのは分かっている!分かってるがっ!』


 あと、


 ドワーフの【ド】と【ワ】、エルフの【エ】と【ル】で、


『【ドエルフ】になるのは分かってる!』

『この世界では、けっっっしてやましい言葉ではないけどな!ないけどな!(※大事)』


 あと!!!


 母様のスエン家、父様のド族の名を引き継いでるのは分かるけどっ!?


『悪意を感じる!!!!!』


………………

…………

……


ーーーというわけで、


『家出したいのじゃ』


『大大お婆さま、『【大】が多い』お婆さま『そこまで若くない』(めんどっ)』


 現族長のマーの屋敷に訪れて、単刀直入に言うカナデ。


『ダメですよ』

『あなたは、この集落の神様のような存在なんですから』


 とりあえず、

 マーはお菓子の皿を勧めながら、カナデの話を却下する。


 カナデもバリバリ、ボリボリ、バキバキと食べる。


『ワシ、神じゃないもん!』


『例えですよ…』


 ぷくぅー!っと頬を膨らました。


『【加護】が切れかかっとるのじゃ』


『……また、そんなことを』

『世界樹は、まだ青々としてるじゃないですか』


 最後の生き残りだった、ハイエルフの母様とエルダードワーフの父様なら分かっていたがのぅ。


 あれは【深緑の加護】の一部を、その身に宿した者だけが言える種族。

 【世界樹ちゃん】が弱っている今じゃ、ワシ以外にいない。




ーーーこの集落をワシの代で終わらすわけにはいかん。


 まっ、いつ死ぬかは、知らんが。


『言うのを忘れとったが、

 ワシ、ここを出てくと決めたのじゃっ!』


『だから、ダメですって…』


ーーーゴアアアアアアアッ!!!!!


 テーブルに起これたコップの中の水面が揺れ、水が零れ出すほどの鳴き声。


『この声は…!』


 族長の屋敷の天井に巨大な爪が侵入する!


『ド、ドラゴンだと!?』


 咄嗟に族長は槍を掴み、臨戦態勢を取っていたが、相手がドラゴンだと認識すると震え上がる。


『【リュリュー】!』


 屋根を上から鷲掴みにして破壊し、夕焼けの空と共に姿を現したのは、ジュエリー・ドラゴンのリュリュー。


ーーー外界の人間共に乱獲されたジュエリー・ドラゴンは滅ぼされたと言われていたが、ワシが子供の頃から保護していたから、絶滅はしとらん!


『リュリュー、外界までワシを連れていってくれ!』


とりあえずの目標は、


・【世界樹ちゃん】の回復手段の確保

ーーー西の国の魔術または、魔術師のスカウトじゃ♪


・旅途中での人材の確保

ーーー戦力の強化!(少子化対策も)


 どの家も親戚同士で血が濃くなり過ぎとる。 

 ここいらで、別口を入れんと!


 だって、エルフとドワーフでやってくれんのだもん!


・ワシのパートナー探し!

ーーーさすがに住民は、ワシの子と言っても過言じゃないからのぅ……


・観光♪


『大大大お婆さま!?』


『【大】が多いわっ!!!』


 ワシ、初めて旅に出る。


 楽しみじゃ。

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