ディオスとの決着!

 俺はディオスの攻撃を軽々と避ける。

 ディオスは焦りいつもより表情が硬く余裕もなくなっていた。



 「何やってるのよディオス」

 「おいしっかりしろディオス」

 「わざとですか?」



 見物人として決闘場に足を運んできているエルシー達が動揺する。

 何せ彼女たちはディオスの圧勝を見に来ているのだから。



 「そりゃユニークスキル《ラプラスの悪魔》を持つライルには勝てないわよ。当然の結果よね」

 「そうですね。恐らくライルさんには100%勝利の結果が見えているんでしょうね」



 アーニャとリーファは最前列の席でライルとディオスの決闘を見に来ていた。

 そして二人はライルの勝利を100%確信していた。


           ◇


 俺はディオスの攻撃を軽々と回避しつつ考える。



 (こんなにディオスって弱かったか?)



 仮にも国の英雄でSランクパーティーの【ホーリーナイト】のリーダー。

 俺も数年共にしていたが色々な高難易度のクエストを一緒に達成してきた。

 だからこそ俺は今のディオスの現状に戸惑っていた。



 「おい本気出していいぞ。手加減されると困る」

 「何生意気な事言ってやがる。俺は全力だ!」

 「え!?」



 ディオスの言葉に呆然とした。

 これが全力? 嘘だろ。



 「ファイアソード」



 ディオスは自身の銀の剣に火を纏い俺に向かって攻撃してくる。

 


 「はははっ終わりだライル!」

 「アイスソード」

 「何!?」



 俺は氷属性の初級魔法のアイスソードを使用した。

 鋼の剣+に氷を纏う。

 勿論銀の剣と鋼の剣+では銀の剣の方がランクは上だ。

 だが結果は――



 「け、剣が!?」

 「はああああああああっ!」

 「がはっ!」



 俺はアイスソードでファイアソードを余裕綽々と破った。

 そして軽くディオスの腹部に蹴りを喰らわせた。

 観客が一斉にざわめき出す。



 「お、おいどうなってんだ。あのディオスが一方的にやられてるぞ」

 「手加減? それとも不調か?」

 「おいしっかりしろディオス。こっちは有り金賭けてるんだ」



 観客たちの野次がディオスへと飛んでくる。

 ディオスは腹部を抑えて地面に蹲っている。



 「悪いが俺が勝つ未来は100%だ。いくら足掻こうが無駄だ」

 「き、貴様調子に乗りやがって!」

 


 ディオスは得意の火属性の上級魔法を次々と使用してくるが俺は全てアイスソード一本のみで全て無効化させた。

 呆然とするディオスと観客。そして国王とアレイグル。



 「殺す気は無い。負けを認めろ」

 「だ、黙れ。これは何かの間違いだ。そ、そうだ卑怯な手を使ったに違いない!」

 「何も使ってない。負けを認めないなら殺すしかないな」

 「ま、待て。こんな結果は認められない」

 


 往生際の悪い奴だ。しかしどうするか。幾ら俺を追放した奴だと言っても殺す気にはならない。かといって素直に負けを認める奴ではないだろう。何せプライドの塊だからな。

 仕方ない脅すとするか。



 「三つ数えるまでに負けを認めないならお前を殺す!!」



 俺は決闘場全体に響き渡るぐらいの大きな声でそう宣言した。

 決闘場全体が一斉にどよめき出す。



 「こ、国王! こいつが決闘前に俺に毒を飲ませたんです!!」



 ディオスは決闘場全体に響き渡る程の大きな声でそう主張した。

 余りにも醜すぎて俺だけでなくアーニャやリーファも呆然としていた。



 「ど、毒!? そんな物を飲ませるなんて卑怯だぞアクアラプラス」

 「やっぱりそうかあのディオスが負ける筈ねえもんな。ずるい手使いやがって」

 「プライドはねえのかクソガキが!!」



 ディオスの言葉を信じる観客。

 それを見たディオスはニヤッと笑う。

 俺は心底溜め息しか出なかった。

 そんな時――



 「見苦しい言い訳ですね。スーパータイガーにすら勝てなかったと言うのに」



 突如リーファが立ち上がりディオスを指さして冷たく言い放った。

 


 「何だと貴様! この俺が嘘を付いているとでも言いたいのか。このディオス様が」

 「はっきりと申し上げます。貴方は嘘を付いています。大嘘つきはどちらですか」

 「き、貴様!!」



 リーファの姿と発言に決闘場全体がどよめき始める。

 焦りだすアレイグル。



 「おいあれ魔聖女のリーファ様だろ。何でここに!?」

 「そういや新しくホーリーナイトに加入したって噂が」

 「リーファ様がそうおっしゃるなら、嘘を付いているのはディオスなのか?」



 場の空気が一気に変わる。

 ディオスの信頼度よりリーファの信頼度の方がどうやら圧倒的に高いようだ。

 しかもディオスは現在このざまである。



 「何度やっても貴方はライルさんには勝てません。いい加減負けを認めるべきです」

 「黙れ黙れ黙れ!」



 激昂したディオスが立ち上がりリーファに向かって魔法を使用する。



 「フレイムキャノン」

 


 炎属性の上級魔法がリーファに向かって飛んでいく。

 それを俺はアイスソードで軽々と防ぎ無効化した。



 「分かりましたかこれが実力差です。アタッカーの貴方とサポート役のライルさん。本来ならアタッカーが勝つのは自然の摂理です。しかし現実はライルさんの圧勝」



 俺の行動とリーファの言葉を見聞きして観客たちが納得する。



 「何がホーリーナイトだ、この国の面汚しが!」

 「出ていけこの国から。大嘘つき野郎が!」

 「毒なんて嘘じゃねえか。ピンピンしてたじゃねえか!」



 観客たちがディオスに向かって怒りの声を上げる。

 ディオスの顔が見る見るうちに青ざめていくのが分かった。



 「おい国王様どうするんだ。殺していいのか?」

 「こ、このし、勝負はら、ライルのか、勝ちとする」

 


 国王は覇気を失くして動揺して必死に言葉を紡ぎ出す。

 


 「だとさ。じゃあリーファはアクアラプラスに加入させるからな」

 「ま、待てライル。も、戻ってこい。そ、そんなにつ、強いとは思わなかった。俺が特別にもう一度ホーリーナイトに復帰させてやる」

 「もう遅い。戻る気なんてないんだ。アクアラプラスでの今が凄く楽しいんだ。そっちも元気に頑張ってくれディオス、じゃあな」

 「ま、待て!!」



 俺はこの日ディオスに決闘場で決闘に勝利した。

 大勢の観客がディオスに失望し怒りを抱く。

 そして結果的にアクアラプラスのライルとしての知名度が著しく向上した。



             ◇



 「今日から宜しくお願いします。ライルさん、アーニャさん」

 「ライルでいいよ。宜しくなリーファ」

 「私もアーニャでいいよ。宜しくねリーファ」

 「はい宜しくお願いしますライル、アーニャ」



 リーファは満面の笑みで笑って見せた。

 今日この日アクアラプラスにリーファが加入した。

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