第15話 キラ×生き様


 私の先生の名前はキラと言います。

女湯を覗き、捕まったキラは、投獄されて、減刑を条件に、魔法の先生になりました。


 しかし、刑期が終わっても、我が家に居座り、貴族屋敷を満喫してます。


 そう! 我が家にいれば、家賃や税など払わずに、三食昼寝付きの、自堕落な生活が送れるからです。


 基本的に、私の魔法の授業以外は、部屋から出て来ません。


 ある日、日中は、何をしているのか聞くと、修行だと言われました。


 だけど、メイド達の話を聞くに、食べるか、寝てるかしか、していないらしいのです。


 そんなキラに、当主たる祖父ジョセフも、次期当主の父ベルギウスも、注意しません。


 私への教師としての期待だけでなく、魔法使いは、貴重な為に、傭兵扱いで、飼い慣らしているからです。


 私は、師匠のお腹をペチペチして、言います。


「師匠! セクシー道を鍛え直しましょう。私もお付き合いします」


 しかし、キラは言います。


「嫌だよ! 私は楽園を手にしたからね! もう働かないぞー」


 私はそんな、キラの様子を見て、呆れると同時に、羨ましくなりました。


 私も本当は、そんな生活をしたいのだよ! 


「でも先生は、結婚しないのですか?」


 すると、キラはさも当然な事のように答えた。


「え? 貴族は、当主が結婚相手を決めるから、私は探さなくて良いのだよ」


「いや先生は、平民では?」


 キラは、ハッとなり、気づいたらしい。

平民であった事に! 


「すぐに、当主ジョセフ様に、綺麗な結婚相手を、見繕って貰い、この屋敷に住まわそう」


 キラは自分が貴族だと思い込むくらい、貴族屋敷に住むのが、気に入ったらしい。


 まぁ持ちつ持たれつの様な関係ではあるし、私にもまだ、キラの教えは、必要であったのだった。







 キラは元々、貧乏な牛飼いの家の三男に産まれた。


 小さな頃から、家を継げないのに、牛のミルクを絞らされたり、牛小屋の掃除をしたりと、日の出前から日の入りまで働かされた。


 働かずに生きていきたい。

キラの切な願いであった。


 十二歳になり、学校に通うと、キラには、魔法の才能がある事がわかった。


 学校の図書館でひたすら、魔法書を読み漁り、セクシー道を歩み始める。


 キラには、光と風と火の属性に適正があり、学園生活中に、三種類の属性全て、上級まで使える様になるまでに成長した。


 学校を卒業すると、もう成人である。

キラは、冒険者の道を歩み始める。


 正直、どのパーティからも、引っ張りだこであったが、冒険者とは、死との隣り合わせである。


 慎重にパーティを決めないといけない。

しかし、キラは、可愛い子がいるパーティを選んだ。名はキャメリンである。


 キャメリンを護る為に、そのパーティのフリーダムに入ったと言っても、過言ではなかった。


 キラは、数々の冒険を経て、やっと一人前の冒険者に成長する。


 魔法の継続時間や強弱に、ピンポイント魔法は、実戦で身に付いたものであった。


 フリーダムも有名になった頃、事態は動いた。キャメリンが、とある貴族に見初められて、その貴族の妾になったのだ。


 キラも放心状態になり、フリーダムのパーティから抜けた。

その後、キラは遊び人になり、街を渡り歩きながら、浮名を流した。


 そんなある日、たまたま通りかかった脇道から、女湯が見えた。


 キラは正々堂々と、覗いていた所を、兵士に捕まったのである。


「私は何もしていない!」


 しかし、覗きの現行犯逮捕であるから、言い逃れはできない。


 キラは、設備の悪い牢屋で、自分の不運を呪った。


「神様! どうか私に快適な生活を送らせてください」


 願いが通じたのかある日、身なりの良い執事がキラに面会をしに来た。


「キラと言ったかね? 貴様は、魔法使いなんだな? 教える事は可能かね?」


 キラは、藁にも縋る思いで、頷く。


「私はルミエール伯爵家執事のジェイと言う。ルミエール伯爵家のフィン様が、魔法使いで、あらせられる。その魔法教師になるなら、減刑と、屋敷住まいと、給料を保証しよう」


 キラは承諾して、泣いて感謝の意を伝えたのである。


 キラは神に感謝していた。

貧乏で重労働だった幼少期に比べて、

今は、こんなに快適な生活が送れる事に...



 人生はつくづく、何があるかわからないものだと、キラは思ったのだった。

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