第16話 ランダム×魔法


 私は十一歳になった。

来年からは、バラトニア学園という、ベアー王国首都の学園に通う事になるらしい。


 バラトニア学園は屈指の進学校であり、名門である。父ベルギウスも祖父ジョセフも通っていたらしい。


 もちろん、ここルミエール領から、ベアー王国首都まで通う事はできない為に、寮生活を強いられる。


 ニャン五郎を連れて行けないの?


 そもそもだが、私は教師達の反応から、そんな進学校に受かる自信はないと、父ベルギウスに伝えた。


 しかし、父ベルギウスは言う。


「バラトニア学園は、もちろん優秀な平民もいるが、貴族は皆、あの学園に通うのがしきたりである。だからフィンは落ちる心配はないのだよ...いざとなれば...」


 裏金を使うんですか? まぁ良い! これもまた貴族の責務というやつである。


 私は一番やり残した事はなんだろうか? と考えた。


 礼儀作法ーーそんなもんはパーティ行けば大丈夫! 実戦で覚えるわ! 


 歴史ーーもっとも要らない知識である。


 話術ーーナンパ出来れば問題ないと自分では思っている。


 剣の稽古ーーマジでセンスを感じないのだよ。今更もう遅い。諦めた。


 ダンスーーなんとか三曲は踊れるようになった。


 やはり魔法であろう。

魔法使いになってから今まで、実戦経験がなかった。


 キラは教えるだけで、剣の稽古みたいに、手合わせはしてくれなかったのだ。


 本人曰く、手加減が苦手らしい。

まぁ確かに、貴族である私に、魔法が当たれば、キラ自身も刑罰モノであるし、怪我どころの話ではない。


 下手したら、死んでしまうのではないかと思う。


 実戦経験が出来ない、悔しさをキラに伝えた。


「バラトニア学園は、毎年、武芸大会が開かれるから、その時で構わないよ! 焦らなくて良いから」


 キラがそう言うならば、従っておこう。

しかし、ランダム魔法まで、まだ使ってないのはどうなのだ? 


 私は夜の魔法訓練でこっそり使ってみようと思った。


 夜の訓練場にて、私は待ちに待ったこの時を迎える。思えば、ランダム魔法とは、私が作った魔法であり、唯一無二の魔法と言っても過言ではない。


 キラも初めて見る、魔法名だと言ってくれた。


 私は、ネクタイを外し、第一ボタンも外した。薔薇を手にして、いざ唱える。


「ランダム魔法」


 すると、五匹のヒヨコ達が現れた。ヨチヨチ歩いて、実に可愛らしい。


 やがてヒヨコ達は、目標のカカシを突っつくと消えていった...


 私はこの時、このランダム魔法ハズレかな? と思ってしまった。兎に角、実験が必要である。また唱えてみた。


「ランダム魔法」


 すると今度は、雨雲が現れて、カカシに雷が落ちた。


 この落差はなんだ? だいぶランダムだなと私は感じた。よし魔力が切れるまで使ってやると意気込み、更に唱えた。


「ランダム魔法」


 すると、今度は水の波が現れて、アヒルの親子が優雅に泳ぐ。そして、カカシに一突きした後消えていった...


 なんだ? 一回当たりを引いたらネタ魔法が来るのかな? とりあえずまた唱える。


「ランダム魔法」


 すると今度は、極大の光線が放たれたかと思うと、大地は揺れ、木々は吹き飛び、カカシどころか、塀までが吹き飛んでいた。


 あまりの事態に、ジェイは心配になり、駆けつけてきた。


「フィン様...これは一体...」


 ジェイが絶句したのもわかる。地形が変わる程の魔法だった...


 私はランダム魔法をしばらく封印しようと思ったのであった。

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