エピローグ①

 ロストシティの戦いから数日後、夏休みに入った僕は午後から大門地さんの家に向かった。ギラギラと日差しが僕を天から苦しめてくるが、そんなことに気分が落ち込むような僕ではなかった。今日は大門地さんの家に新しい仲間が二人も来るからだ。うきうきしないわけがなかった。

 目的地に着き、大門地さんに迎えられてリビングに通されると、もう皆は勢ぞろいしていた。

「お!藍澤も来たな。これで全員揃ったわけだ。」

「藍澤君こんにちは。」

 武田さんに始まり、僕らは皆に挨拶した。

「よ、よう、藍澤。」

 普段の挨拶に加わり、今日はこの家では初めて会う青年、上條京輔と加賀悠太郎がいた。

「こ、こんにちは。」

 二人は緊張した面持ちでやはり少々居づらそうにしているようだった。それも無理はないと皆は理解しているので、あえて気を遣わずに自然体でいようとしている。

「おーい、クッキーできたぞー!」

 大門地が大きなお皿の上にのった大量のクッキーを運んできた。テーブルの上に置かれたそれらのクッキーを皆が手に取り、口に運んでいく。

「美味しいぃ。」

 紅はほっぺたが落ちるかのような表情をしている。

「本当に大門地さんの作る料理は美味しいですね。」

 霧島さんもそれに同調する。

「う、美味い……。」

 ぼそっと上條と加賀が同時に言ったその言葉を大門地は聞き逃さなかった。

「だろだろお? うちの自慢の特製クッキーだ。たらふく食べていくといいぞ!」

 すかさず大門地がそんなことを言い出すので、二人はそれをおかしく思ったのか、キョトンとした後に笑いだした。二人の緊張が解けたと思ったのか、僕を含め他の皆も安堵の表情を浮かべる。

「お前たちは本当に仲がいいんだな。」

 上條は羨ましそうに僕らを見て言った。

「おいおい、その仲にはお前らも含まれるんだからな。」

 武田さんが人差し指を鼻と唇の間に当ててへへっと笑いながら言った。その言葉に誰もが賛同している。僕は一歩前に出て、二人に握手を求めた。

「これからよろしく。」

「あぁ……!」

「うん、こちらこそ!」

 二人は僕の手を取り、満面の笑みを浮かべている。上條の表情は彼と出会ってから初めて見る、心の底からの笑顔だった。

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