第十九話 思惑

 彼女は自分の部屋でベットに横にながら、スマホの画面を眺めつつも、時折指を動かしてスマホを操作している。彼女のいる部屋は真っ白な壁に囲まれており、床はフローリングだ。ベットのすぐ隣には勉強机が設置されていて、机上は整理されており、付属の棚には教科書やノートが綺麗に収納されている。そして他には自分の服が入っているタンスくらいしかこの部屋には無い。そんな部屋で彼女は少しサイズが大きなジーンズに彼女にしてはぶかぶかのサイズのTシャツを着ている女子高生、紅優莉は現在スマホで友人と連絡を取っているところだった。その相手はよく連絡を取る霧島花凛だった。彼女とは同じ能力者というこの世で限りなく少ない共通点を持つ友達だ。同じ学校に通っているわけではないので、毎日は会えないがたまにこうして連絡を取り合っている。普段はお互いの学校であった話などの他愛も無い内容だが、今日は違った。

「藍澤さん、ダイバーと戦うことにしたらしいです。」

唐突な話に紅はえっ、と声を漏らし、両手の指を使い、素早く返信する。

「どうして戦うか知ってる?」

「私もそこまでは分かりません。でも大門地さんから聞いたんです。」

「そっか……」

しばしお互いにメッセージを送らない時間が流れた。紅はう〜んと唸りつつ思考を巡らせていた。普通なら、大怪我をするかもしれないのに戦うなんて選択はしないはずだ。それでもダイバーと戦うということは何かしらの理由があるのだろうが、それを紅が知るよしも無かった。

「どうして戦うんだと思いますか?」

それは霧島から送られた文章だった。霧島も紅と同じことを考えていたのだろう。

「分かんない。」

と返し、その日はもう霧島との会話は終わった。




 七月九日、俺は先日会った加藤からの依頼を果たすために加藤からもらったターゲットの写真をロストシティでアスファルトで生成した土人形に記憶させる。そして土人形に下す命令は、人に見つからず、カメラに映らないこと、そしてターゲットを攫うこと、これらの命令を念じると、土人形は目的を果たすために地面へと潜っていった。この能力を手にしている時点で、考えるだけ無意味だと思うが、なぜ土人形が簡単な命令なら理解し、実行できるのか、なぜ地面に潜ることができるのか、それらは俺にも分からなかった。たまにターゲットを連れてこずに戻ってくることがあるが、それは近くに人目やカメラがあったのだろうと考えていた。土人形の目的の達成を祈りつつ、俺は誰にも見つからないように本来立ち入り禁止になっているロストシティから家に帰宅した。

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