第19話 横暴な町




エレク「駄目だ。 これじゃよう、ナノウェーブの熱伝導に耐えられない」


ベクトル「どうします?」



エレク「どうするも、こうするも、部品がなきゃ、飛べねぇよ」



  サーゲンレーゼの方エンジンは大打撃を受けており、飛べる状態ではなかった。 さらに、悪い事に、地球には、サーゲンレーゼに変わる部品がない。 ライル達が調達してきた部品を使っては見たが、使えるような部品ではなかった。まかなえるところは賄ったが、一番肝心なエンジンが動かせないでいた。




 それは艦長につも伝わると、整備を手伝っていたクレイドが、提案をする。


 ラークスの部品ならどうかと。早速ファクトリーにある部品を使って作業を進めたが、何とか耐えれられるレベル。 これで飛べるかと言うと、いつかは落ちるだろう。 しかし、ここに部品がないのなら何とかで代用するしかなかった。  


 だが、問題はそれだけではない。 ラークスの部品では形も大きさも合わない為、使える部品を除いて、もっと大量に厚くする必要があった。



 調達するため、クレイド達は、ベクトルを連れ、ある場所を目指した。


 それは、クレイドの住んでいた場所。 ラークスの部品を製造した場所だ。




 


ライル「テミール地区かぁ、懐かしいな。 なんだか」


クレイド「そうだよね」



 クレイドは嬉しそうにしていたが、町に近づくなり、異変に気付いて、車の速度を落とす。


シノ「あれ、何かしら? もめごと? あれは帝国軍!」



 すでにシノの町にラーデル隊のADが銃を突き付けていた。町には煙も上がっている。 住民の皆が武器構え戦っている。


クレイド「おばさんが心配!!」



 ライルはすかさずエクリプス2号機で出る。



ジータ「こいつら、いい加減にしろよ」


ドメイク「ジータ!! こっちに何か来るぞ」


ジータ「新手かい? ここの星の奴らが何体来ても一緒なんだよ」


ドメイク「違う!!? 新型だ!!」



ライル「お前ら!! ここで何してる!!」


 ライルが猛進して突進してジータを突き飛ばす

 2対1の構図ん翻弄されるライルだが、必死に攻撃をよけブレードで反撃す。


 町の人たちは何が何だかわからない。 ただ、知らない機械がやってきて、急に争始めたことに、愕然として見る。

 


ジータ「へっ、遅いんだよ、こののろま」


 彼らの乗っているエターはエターでも今まで見たエターとはどこか形が違う。


ライル「早い。 早すぎて攻撃が当たらない」


 それでもライルは必死に守ろうと、戦い、余裕を見せたジータの左腕を落とす。 出力を落として戦うブレード。 その一瞬を狙って絞りながら出力を伸ばしたのである。 



ジータ「こいつ、腕を!? あのブレード、伸びるのか!?」



ドメイク「大丈夫かジータ? きっと出力を絞ってたんだろう。 あれで普通の長さだと認識させるために」




ジータ「やってくれるね。 以外に頭切れる奴じゃんか。 だけどあたしは、嘘つくやろうが一番嫌いでね」



 ジータの攻撃は猛攻になった。 だからこそ隙が生まれやすくもなる。


ライル「くそ、あいつめちゃくちゃ撃ってくる! 町にあたったらどうするんだ!」



 ライルは後ろへ下がる。 町から引き離すために。


ジータ「待て!逃がすか」



 ジータは追っていった。


ドメイク「ジータ、待て!! 熱くなるな」



 ライルの機体は早く、エターでなかなか距離を詰められない。


ジータ「あいつ早いね。 だけど、出力を最大にすれば、追いつけないこともない」




 やがて、ジータが追いつくと目の前にはブレードを構えたライル機。


ジータ「こいつ、これを狙って」


ライル「終わりだ!!」



 しかし間一髪、ドメイクがジータ機に体当たりすることで軌道をそらした。


ドメイク「馬鹿か!! 死ぬぞ。 しっかりしやがれ」


ジータ「痛っててぇ~。  悪い、 おかげで頭が覚めたよ。何やってんだ私は」



 それからの2人の連携は完璧だった。 ライルは防御するので精一杯。攻撃は何ひとつできなかった。



ライル「なんだこれ、捉えられない。 死ぬのか俺……」



ジータ「とどめだよ!!」



 その時ジータ機とドメイク機が爆発する。 後ろから、テミール区の住人がランチャーをぶっ放してきたのだ。



ドメイク「こいつら…… なんだっていうんだ」


ジータ「そんな生身で。 相当殺されたいようだね!」



 ビビったライルはすかさず、ブレードを伸ばし、横降りに振ったそれは、気を逸らした2機に当たる。


 もちろんテミール地区からの攻撃も止まない。



ドメイク「畜生。今回の目的が、戦いじゃない。 武装もちゃんとしていないんだ。 引くぞ」



ジータ「手柄を立てれたかもしれないって言うのに……」



 2機は撤退した。


 その民間の車には窓から手を振るクレイドがいた。


ライル「何やってるんだよ!」



クレイド「ライル! 助けに来たよ。 大丈夫」


 クレイドは飛び降り、すぐに、エクリプス2号機に飛び乗る。



ライル「ありがとう、助けに来てくれて」


 やさしく包んでくれるクレイド。ライル達はしばらく二人の空間で、身を寄せ合った。




 みんなと町に戻ると歓迎を受けた。 クレイドも久しぶりに知り合え抱きつ姿が目に映る。 



サフィー「なんだか暖かい街ですね」


スキャットマン「クレイドちゃんが説明したらすぐさま飛んで行ったもんな」



 ライルは再び感謝を伝えた。 町の人たちはいいんだよと、笑って返した。自分たちも攻められるところを助けてもらったんだと。



シノ「しかしどうして、帝国軍が≪かれら≫が?」


住民「わかりません。 急に彼らが武装して飛んできて、殺り合いに」


スキャットマン「なんて野蛮な奴らなんだ。 副長、もしかして、奴らこうやって植民地に」



シノ「サフィーすぐに、艦長に報告を」


サフィー「はい!わかりました」



 クレイドの住んでいた家で料理をいただき、一緒についてきた、ミゲル、サイ、ルーシェは大はしゃぎしていた。


おばさん「なんだいあんたたちの子供は元気だね」



 クレイドとライルは否定した。 


おばさん「わかってるよ。 この子達全然顔似てないじゃないか。 こちとら親やってたんだ。 それくらいわかるよ」



 二人は真っ赤になり、食卓は笑いに包まれる。




 料理をいただいた後、 ラークスを作った工場に向かう。 シグという男に会いに行くためだ。



 みんなが驚いたのは、シグに会った時だった。


クレイド「シグさーん」


 シグはクレイドの師でもあると聞いてる。馴染みがあるように抱きつく姿。 工場はでかく、100人以上の人が働いている。 こんな場所をライルも見たことがない。 そこでは大量の機械が生産されていた。


スキャットマン「ま、マジかよ」


サフィー「え? シグさんって……」


ライル「お、女!?」



クレイド「え? うん。そうだよ。 あれ?言ってなかったっけ? きれいでしょ」



 クレイドは自慢げに語る。 目の前に立つのは男性ではなく女性。 しかも30そこそこではないかというナイスバディな女の人だだった。


シグ「うちのクレイドがお世話になってるみたいだね。 あんたらが宇宙から来たっていうあれだろ? なんでもすごい機械を持ってるとか」


スキャットマン「なんて、美人なんだ……」


 心の声が漏れだすスキャットマン。



 シグさんは誰かを見つけると、真っすぐに歩いてくる。


シグ「あんたが、ライルだろ? クレイドからは、よく聞いていたよ。 あいつったらいっつもあんたの話ししてたからな。 で、要件ってのはなんだい?」




 シノたちは今までの事を話した上で、サーゲンレーゼに見合うパーツを探していることを説明した。



シグ「ふぅ~んなるほどね。 あんたらの兵器とやらが一体どんなものなのかは私も見てないから何ともだけど、そいつはもしかしたらここにはないのかもね」



 みんなは残念そうな顔をした。 クレイドはラークスの素材の事を話す。


シグ「そりゃあんた、いいけど、あれの素材にも限りがあるよ。 多分、持って行って使えば、二度とラークスを作るのは無理になるかもだけどね」



 ライルはそれでもいいと言った。


シグ「そうかい。 じゃぁ、準備するよ。 工場長! ありったけの部品を準備してくれ」



 シグは大きな声で下にいる作業員の一人に呼びかけた。


 すると作業員は一斉に準備に取り掛かる。


シグ「それじゃ、私も連れて行ってもらおうか」



 シグがライルのファクトリーに来た時、そこには5台のトラックが止まった。



 帰ってきたエクリプス2号機を見てエレク達は唖然としていた。 


エレク「おいおい、なんだよ。ずいぶんやられてきてんじゃねぇか。

 おい、パイロット。もっと大事に扱え。 今俺たちには新型≪コイツ≫の部品≪替え≫はねぇんだぞ」


 シノから状況を聞いたエールスは新型を出すべきではないと結論付けた。


 サーゲンレーゼを見た時シグ達はとても驚いていた。 こんなもの見たことないと。 そのテンションがピークに上がったのは、エレクと話し、図面を見せてもらった時だった。 



ライル「クレイド? なんだか楽しそうだな」


クレイド「うん。 だってね、あんなシグさんの姿見れるの何年ぶりだろうっと。ずっと、難しい仕事押し付けられて、笑顔すら見せてなかったから」



 シグは政府にその腕を認められる。あの大きな工場を与えられ、ジンクスやネクストを作っていた。 それは過密なスケジュールでもあり、また過酷であった。 それゆえに、あの町は少し裕福に優遇された。 シグでなければ、達成できない。案件ばかりだ。



シグ「なるほど。 こんな構造、見たことないが、確かに私の持ってきた金属では心もとないな」


エレク「あぁ、すまねぇな、こんなに大量に持ってきてもらって」


シグ「いいんだ。 別に、あれと引き換えだからな


 ……だけどそうだな。 もう少し俺に立ってもらえるなら、まだましな部品があるぞ。 今この地球で一番最強の機体、ネクストに使われているものなら、何とか耐えうるかもしれない。 俺も材料分しかもらってないから、話してみてやってもいいよ」


エレク「ほんとか!」




シグ「ただし……」



 シグは条件を付けてきた。 それはサーゲンレーゼの設計図のコピーが欲しいということ。 当然この艦は連合政府の最新鋭の極秘艦だ。渡せるものではない。 エレクもそれは断ったが、そうでなければ、渡せないと、シグも対抗する。


 エレクだけの判断では仰ぎきれない為、エールスにつなぐ。


エレク「ノン艦長。 いい素材が手見入るかもしれねぇんだが、ちと困ったことが。 向こうさんも条件を出してきてよ、タダでって訳にはいかないみたいなんだわ」


 エールスはその条件を聞き返すと、それは無理だエールスも断る。 しかしそれでは飛べないサーゲンレーゼ。 上からは早く上がってこいと指令を受けている。 動けないままではまずい。 だからエールスは大量のお金を出すことで交渉した。



シグ「悪いね。 金はめちゃ欲しい。 だけどさ、あんた達の金じゃね。 いくらもらったって、ここじゃ紙切れにも使えない。 だから無理だね」



 あっさりと断られる。 困りはてたエールス。何せ極秘艦。なにも渡すことすら許されない。軍法会議ものだ。 反逆罪にだって問われる。 しかし、また飛ばなければならない、板挟み。 エールスはどちらかを選択するしかない。 苦肉の策を出す。



 それは修理したのち、壊れたサーゲンレーゼの部品を全て渡すということで、纏まった。 当然、エレクトロニックはプライベート回線を使用していた為、これはシグと、エレクトロニックとエールスだけの秘密であることを、しっかりと口付けた。



 シグのおかげで部品の調達はできたが、取りに来いとの事だった。 多忙の為いったん帰るシグ、ライル達は、約束された日に、取りに行くことになった。 だがそこにライルが行くことでまた運命に翻弄される事になる。




ライル「なんだよ、この町……」


 聞いていた話とは違って、とても、静かでよそ者を受けつけていないような、そんな街だった。 


 町の人は冷たい目でライル達を見てはカーテンを閉める。 



スキャットマン「なんだ、なんだ。 俺たち、違う町にでもきちまったか」


クレイド「なんだか、面会謝絶って感じだね……」


 エールスたちはそれでも、目的地まで車を進めた。 すると前方で住民たちが待ち構えており。皆こぞって、出て行けと、モノを投げつけてきた。 こんな町でダレンという男に会いに行かなければならない。



グロス「っち、すげー荒れようだな、艦長! 俺たち歓迎されてないみたいだぜ」


ベクトル「笑ってる場合ですか!! どうするんです? 俺たち降りて殺されるとかないよな…… 艦長」



 ベクトルは慣れていないように事態にてんぱっていた。 エールス達はそれでも車を進めていった。


 目的地に着き、面会を申し出たが、拒否され、エールス達は困り果てていた。 

 町の飲食店へ入って相談していた。 そんなとき、絡まれている女性がいた。 クレイドと同い年かそれ以下に見える。 クレイドは率先して、立ちはだかると、女性だからと、殴ろうとする男と達にエールスが立ち向かって、ぶん投げる。


エールス「いい加減にしないか。 いい大人が、何をやっている。 やるなら私が相手になろう」


 エールスの軍服を見た時、彼らは逃げ出した。 この町では女性の軽視が一部の者たちで行われた。 彼らはいかにも悪を強調したいような恰好でうろつく。



住人A「早く!!こっちです」


住人B「またあいつらが」



 住人の男連中がこぞって入ってくると、上着を脱いで、おびえる女性と、クレイドの前に立っているエールスを見て、一人の男が殴り掛かる。


「貴様ぁぁぁぁぁぁあぁ」


女性「お父さん!? 止めて! その人は恩人よ」


 男性が中途下が、エールスは反応で、女性のお父さんを投げた。


お父さん「ぶぅはぁぁっ」


女性「お父さぁぁあん!!!」


 同じ席について話合う。 彼女の名前はリレ。 女性の差別が一部横行しているところで彼女が標的になっていたと話してくれ、それに対し父が、だから行くなといったんだと、怒っていた。エールスは不可抗力とは言え、投げたことを詫びると、男もまた非礼を詫び、なんでもさせてくれと、言ってきた。


 困った、エールスは断るが、どうしてもと聞かない。そんな時店の人が彼をダレンさんと呼んだ。



エールス「え? あなたダレンさん?」


 エールス達は前回のグロスの件と、地球に溶け込むために、ライルに頼んで、私服で来ているので、軍人とは誰もわからない。



シグ「そうです。 うちの娘の命を救ってくれたんだ。 なんだってさせてほしい」


エールス「でしたら、」




 エールスは自分達がシグさんの紹介で来たと言い、事を伝えた。


 ダレンはとても考え込んだような暗い表情をした。


ダレン「悪いことは言わねぇ。 だけど……さっさとこの町から出て行ってくれ」



エールス「どういうことです? 話が違いますよ!!」




 ダレンは決して、部品を渡そうとはしなかった。 それどころか、住人達がこぞって出て行けと集まり囲う。 クレイド達もその勢いに怯えていた。


 それを止めたのがリレだった。



リレ「もう止めてぇぇぇ。 どうしてこんなことをするの。 この人たちは優しい恩人な方ですよ。 そんなこと私が許さない。 これじゃあ、今追い払ったあの人たちと何も変わらない」




 住人達は怒鳴るのを止めた。  ダレンはしぶしぶ、エールスを受け入れ、部品を渡すことにした。



ダレン「欲しいなら持っていけ。 だけど、俺は忠告したぞ。 聞かなかったのはお前らだからな。 悪くは思うなよ」



エールス「どうして、我々をそこまで嫌うんです? シグさんとは知り合いでは?」



ダレン「あぁ、シグは恩人だよ。だけどよ、お前らは別だ。 別に信用しているわけでもねぇ。 さ、さっさと用事が済んだなら、帰りな。 まだここにいたら、命がねぇぞ」



 シーキュウナ隊はいい気分がしなかった。そんなエールスの裾を持ち、首を横に振るライル。



クレイド「仕方ないんです。 これが、地球なんですよ。 信じられる人なんてそう、居ない。 みんな人を信じてくるしめられた人が多いので」


 ライルとクレイドは地球のここではこれが当たり前だと、暗い顔を隠しながら伝える。



 荷物を車両に積み終えると、エールス達は言われた通り、すぐに町を後にした。


 リレはクレイド抱き合い別れを惜しむ。


クレイド「またくるからね」


リレ「ごめんねお父さんの事。 悪く思わないでほしい。 ありがとう。待ってるからね。 皆さんも本当にありがとうございました」


 リレは頭を深々と下げながら、手を振って見送ってくれた。


グロス「可愛かったな、リレちゃん」



ベクトル「なんか、あんたが言うとm、如何わしく聞こえるよ」





 ダレンはその大きなや屋敷から、出ていくシーキュウナ隊を見ると、電話を掛ける。




ダレン「はいそうです。 追い払いましたが、たった今出ていきました」


スラック「そうか。報告ありがとう。 ご苦労だった」

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