第18話 怒り



 

 それから何日か経つ。

 サーゲンレーゼが飛べるように、ライルとクレイドははサフィーやシノ、ジャン、にスキャットマンにニルスと共に部品調達に出ていた。


 というのもあれから、地球の政府がやってきた。事態の説明を行った後。 エールスはマイロに今回の新型が、現状ライルでないと動かせないことを説明していた。


子供「わーい!!兄ちゃん!!」


お母さん「こらこらタク!  またライル兄ちゃんに迷惑かけたらだめよ! 」


タク「はーい」



お母さん「ごめんね。 ライルさん。 うちの子あれ以来、ライルさんに憧れちゃったみたいで。 ライルさんみたいになるんだっていつも言ってるのよ。 本当にあの時はうちの子を救っていただいてありがとう」



 タクのお母さんは深々と頭を下げてあげようとしない。  タクはライルにべったりだった。



ライル「頭を上げてください。 それより、家の方は大丈夫なんですか?」



あ母さん「あぁ、おかげさまでね。 国の大臣さん。 マイロさんがね、支援してくださって、今ではあそこで暮らしているのよ」


 お母さんは新しくたった小さな家を指していた。



タク「ねぇねぇーちゃんって、ライルにぃちゃんとよくいるよね。 夫婦なの?」



お母さん「こら、タク。 ごめんね、クレイドちゃん」



クレイド「い、いえ、いいんですよぉ。 違うよぉ、お姉ちゃんたちは仲がとってもいいだけだよぉ」



 二人はとても照れていた。 ライルは遠く彼方を向いていた。



タク「でもめっちゃ顔赤くなってんじゃん!」



お母さん「こら! タク!」


 タクのからかいっぷりがいつも通り炸裂する。


タクはライル達の乗ってきた車の方へと逃げ隠れる



タク「あれ~?  にぃちゃん? これ何? このでかい袋!! もしかして俺たちへの食糧!! こんなにいっぱい」



お母さん「タク!!!」


ライル「大丈夫です」



 クレイドはタクの横に立つ。


クレイド「違うよぉ~。 残念でした。 これはね。 とても大切なものなんだ~」



タク「ん? なになにねーちゃんとにぃちゃんの大事なものが入っているの。 中見たい!!」



クレイド「あっ、こらぁ! だぁめぇ~」



 クレイドは開けようとするタクをなんとか引き離そうとする。


ライル「タク。 それは駄目だ。 それは、俺の親友のものなんだ。 だから開けるのは駄目だ」


 タクは乗りの悪さに頬を膨らませた。



ライル「本当に大事なものなんだ、 届けなければいけない預かりものなんだ。 だからこれは誰にも触らせない」



 ライルはその大きな袋を必ず移動する車に積んでいる。  一度たりとも忘れたことはない。



サフィー「なんか訳ありなんだね」


ライル「そんなんでもないんですけど。 これを渡すときは覚悟決めないといけないとは思いますが」


スキャットマン「なんだよ、余計気になるじゃねぇか。 何ならもう見せろよ」


グロス「ほんとだぜ。 ここまで来て隠し事はねぇよな」



 周囲は驚いた。


サフィー「グロスさん!?」


ニルス「グ、グロスさん!! なんでいるんですか」



 グロスはにひひと笑っていた。 


グロス「俺もみんなと行こうと思ってな。 同伴は必要だろ」



ニルス「あなた、整備の手伝いはどうしたんですか!?」


グロス「あんなもんはナットが変わってくれたよ。 俺がいない方がいいんだとよ」



 全員が絶対嘘だという顔をした。



ジャン「ちょっと、皆さん何しているんです。 話してない手伝ってくださいよ!!」



グロス「いやいや、今さ、ライルの宝物見つけちゃってさ。 お前も気になってただろ。あのでか袋」



 遠くから荷物を抱えたジャンが重そうにやってくる。

 

ジャン「そりゃ気になってましたけど。 そろそろ運ばないと俺知りませんよ。 向こう相当たまってますからね」



グロス「まぁそう固いことうなって。 せっかく船から降りれたんだしよ、気長にやろうぜ」



ジャン「てか、なんでグロスさんここにいるんですか……」



グロス「な~に、驚かせてやろうと思って、積み荷に隠れてたんだ、、、」



シノ「ちょっと、あなたたち! 何しているの。 荷物が全然運ばれないのだけど」


 グロスたちは凍り付く。 


ジャン「俺、知りませんからね」



 スキャットマン、ニルス、サフィー、は急いでシノの方へと走っていった。 

 グロスは隠れようとしていたが、隠れる場所がすでに、荷物で埋まっていた。


シノ「あら? グロスさん?? どうしてこちらにグロスさんが?」



グロス「いや、ほら、あのあれだよあれ。 俺も頼まれてさ、こっちの手伝いに」



シノ「あなた、整備の手伝いでは」



 グロスはなんとかはぐらかそうと頑張ったが、シノには勝てず、ライル、クレイドの分も運ばされることとなった。


シノ「ライルさんとクレイドさんは少し休憩していてください。 あとは私たちが運びますので」


 地球政府が来ているとき、エールス艦長は上官や指令達と通信を行い、交信を行っていた。 そこで今回の大舞台だったアレスティアラ宙域戦で敗戦した事を伝えられた。 そこでエールスは皆を集め、伝えた。 またザギン大将もそこで戦死された事を告げ、皆が暗い夜を過ごした。 さしずめ、まだ命令はなく、また追って連絡するとの事。 そのためシーキュウナ隊の目的は変わってしまったのである。


  


 そんな時だった、町の人々から声が上がる!!



 突如上空にADが現れたのだ。 ライルもなんども戦ったことがあるエターだ


ライル「!!」


シノ「な! あれは、アルカーナ軍」






ジータ「な、あれは連合軍のトラックか。 ここで何をしているんだ」



 スラックの命で偵察していたジータはL.S.E.E.Dの軍服を見つけ、牽制をかけた。


ジータ「さては、この辺で隠したりしているのかい?」


 ジータは語りかける。


ジータ「動くな。 L.S.E.E.D。 おとなしく拘束されろ」



 シノはすかさずライルに合図を送る。



シノ「ライル君。 積んできたあの機体に行ける? お願い」



 ライルは走った。 袋にかぶせ、トラックでけん引してきたのである。 


ジータ「逃げるなって言ってんだろ!!」



 ジータは当たらないように発砲してくる。 ライルは命かながら岩陰に隠れた。



ジータ「ちっ、なんだい、ただの民間人のガキかい」



 シノはこの時ライルは軍服を着てないことでもしかしたら、踏んでみた。



シノ「やめないさ ここの人たちは関係ありません。 彼らには危害を加えないでください」


 シノはクレイドに声をかけ、逃げるように言うと、クレイドはタクの母に呼ばれタクの家へと逃げ込んだ。


 ジータは一人でつぶやく



ジータ「はぁ? 民間人なんて殺しゃしねーよ」


 ジータは再び脅しをかけるため、声を放った。



ジータ「此処の奴らを殺されたくなければ、全員隠れてないで、さっさと出てこい」



 ジータはゆっくりと、シノの近くにADを着陸させる。


 シノはジャンたちを呼び、トラックの方からもスキャットマンたちがやってくる。 


ジータ「いるのは1,2,3……6人か。 本当にこれで全部か? 嘘だったらそこに逃げ込んだやつもろとも、お前らを殺す!



シノ「嘘ではありません。 これで全部です」


 ライルはなんとかエクリプス2号機に乗り込みたいのだが、敵がエクリプスをとらえていて、なかなか岩陰から出れない。 あともう少しでエクリプスに乗れそうなのに、今入るところを見られる訳にはいかない。



ジータ「その積み荷はなんだ? 何を運んでいる!」


シノ「こ、これは、船を整備するための部品です」


 ライルが動かす前に、撃たれてはまずいと機転を利かすグロスは注意を外させる。



グロス「おい!ねぇちゃん!!」



ジータ「なんだ? ん? おっさん。 どうしたお前は逃げないのか??」


 グロスもまた日頃から軍服着てはいない。


グロス「どうしてこんなことをするんだ。 此処をめちゃくちゃにしてあんたらに徳でもあんのか」


 ライルはこの隙にエクリプスに乗り込み、電源ボタンを押す。


ライル「ニフティ。 起動できるか」


ジータ「お前らには関係ねぇ。 なんだ、お前もほかの奴らのようにさっさと逃げなのか? 勇猛なおっさんだな」



 ジータは近くに隠れている兵士がいないか、上昇して乱射する。 


 それがトラックの近くに当たり、車が横転する。


ジータ「どうした? 本当にいないのか? 死ぬぞ」



 しかし出てこないところを見ると、また6人の方に視線を戻す。


 この時トラックの後ろのカバーがずれ、エクリプスの機体の細部が顔を出していた。



ジータ「お前、そのバッジは副艦か!? 名前を名乗ってみろよ」



 ジータはシノに銃を向ける。


「私はシノ。シノ=ハスギ。 このシーキュウナ隊の副艦をと努めています」


ジータ「そうか。 面白い。 艦長ではないのか。 お前みたいなやつまでこんなところに出ないといけないとは、よほど人で不足なんだな」


シノ「そうね。 あなたたちの損害は正直痛いわ」


ジータ「それじゃ、選びな

 投降して、隠している箱物の場所を教えるか、ここで死ぬかだ」



 その時、ジータの機体が捕まり、吹き飛ぶ。


ジータ「な、なんだ」


ライル「うわぁぁぁ、やらせるか」



ジータ「こいつ新型機!! あそこに積んであったのか。 くそ」



 ライルとジータが戦っている間に、皆は隠れ散らばる。


ジータ「ちーー、せっかくの人質が!! やってくれたね、こいつ」



 しかし、戦っていて、一対一では分が悪いと思った、ジータは退却を余儀なくする。 


ジータ「くそ、ここまでか。のろまなんだけどね、この機体。 タフ過ぎんだと、その機体」



 ライルはジータの攻撃に全くついていけてなかった。 被弾はライルばかり。牽制はできたがダメージを与えたのは一発だけだった。エクリプス用のライフルは 荷物になる為、積んできていない。  そのためブレードで戦った。



ジータ「そいつが出てくるのは誤算だよ。 まぁ、強さは大体わかったけど」



ライル「引いていく……」



 ライルは倒れたトラックを起こし、エクリプスで搬入作業を進めファクトリへと帰った。 帰りは自身のジープに乗る。  それで帰れば目につきやすいからだ。


シノ「皆、帰ったら、また一仕事あるわ。 私から言って少し休憩をもらうから、ついたら、みんな一度休憩して」



サフィー「や、やったぁ、 まさか敵が来るとは思ってなかったよ」


ニルス「偵察しに来るなんて、どういうことだ。 奴ら、どこにそんな余裕を隠し持っている」



ジャン「彼らも、あの戦いで、相当疲弊しているとは思っていたんですが、飛び回れるんでしょうか?」



グロス「なぁ、クレイドちゃん」


クレイド「はい、なんですか?」


クレイド「この星、地球もよ、あの上級都市とかだっけ。あそこの奴らとは暮らしが違ったように見えたけどよ



クレイド「そうですね あそこは違います。 私たちにお金などありませんから。 あそこは選ばれた人達だけの楽園なんです」


 クレイドは笑って帰した。 



グロス「楽園ねぇ…… どこの場所も、結局は行きつく先は同じなんだな」


 クレイドは首をかしげていた。 グロスの言う言葉の意味が分からないから。









 荒野を一台のバイクがかけていた。 ヘルメットからはツインテールにした薄い金色の髪がなびいている。 ずっと旅をしてきたのだろうか、荷物も多い。



 彼女はある場所につくとヘルメットを取ってみ上げる。 かつてジンクスと宇宙兵器が打ち合った、惨場。 その一台。 膝から上のない、青いジンクスの前に立つ。 



「見つけた……  これ、」



 彼女はすりつくように、ジンクスの残骸に寄り添うと、涙を流していた。 そして何かを覚悟するように、形相が変わる。

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