第17話 現状を理解して



ニフティ「認証、照合完了。 お帰りなさい。 どちらに行っていらしたんですか?」



ライル「今はそんなことどうでもいいから早く起動してくれ!」





ニフティ「かしこまりました」


 操縦席内が水色に光、たくさんのモニターが表示される。 前からはナキートが走ってくる。








ライル「こいつ。ライフルに盾もある」



サフィー「聞こえる? ライル君? それがその機体の装備よ。 あなたが乗った時には持ってなかったと思うけど、」



 やっぱり。 とライルは思った。 表示されてる、メータと表記から威力が今までのより桁違いなのだということだけは見て分かった。



 威力のほどはわからないにしても、これを撃てばナキートは死んでしまう。



ライル「ニフティー、これは駄目だ、使えない。 何か接近して使える武器はないか!?」



ニフティ「でわ、こちらのブレードを」


 ニフティーはマニュアルと共にその詳細票表示させる。



ライル「なるほどこれか。 ニフティー! これを縦横に絞って、出力を20%に」



 もうナキートはそこまで迫っている。



ニフティ「わかりました」




 手に持つブレードでナキートの片足を切り落として、倒れこけるファクシミリオン。


 ダンクが銃を乱射して迫ってくるが、ライルには全く効いていない。


 ライルはブレードを持っていない手で、ダンクを殴り飛ばすと、キムの乗るジンクスの両腕を切り落とす。



ナキート「ち、畜生ぉぉぉ」


 ダンクはナキートを担いで撤退した。 キムがそれを追いかける。



ライル「た、助かったのか」



サフィー「ライル君! そっちが終わったら、ごめんなんだけど、こっちを助けてほしいんだけど……」


ライル「え? 」


 猛攻を受けながらなんとか耐えるサーゲンレーゼ。 まるでスズメバチに囲われたように攻撃を受けている。 断れる状況ではなかったライルは割って入る。





兵士「隊長!! 新型のADが現れました。!」



 スラックは状況をじっくりと観察していた。



ニギュー「隊長!! やつです! 奴が出ました!!」


ギエン「全員! 新型艦を狙え! 何としても落とせ。 あいつの相手は俺がする」



 ギエンとライルは激しくぶつかりあう。 


ライル「こいつらになら使えるか?」


 ライルは持っていたライフルをギエンに放つ。 その弾はギエンの乗る新型機には当たりはせど、分厚い岩の塊を跡形もなく溶かし消した。



ジトー「な、なんだあれは、……」


ギエン「あの新型艦の援護か? あんなもの食らったらひとたまりも、ないぞ……」


シノ「なっ、」


エールス「なんて威力だ……、あれがADの出せる威力なのか……」


 それは皆が驚く光景だった。 


ライル「な、なんだよこの銃。 こんなの使ったら、人が消えるぞ!

 こ、こんなのが戦争なのか…… この国の……戦い方なのか……」




ギエン「何をしている、間合いががら空きだぞ」



 ギエンはすかさず、距離を詰めていた。 


マレー「少尉が危ない。 行きましょう!」


ニギュー「わかってるよ! そんなこと」



 ニギューとマレーはすぐさま駆け付けた。三対一。



ライル「くぅ、 ニフティー! ブレードを、出力40だ」


マレー「なんて早さなの……」



 たとえ三人に囲まれたとしてもライルとニフティーは容易に戦っていた。


 しっかりと左で持つ盾で攻撃を防ぎながら戦うライル。 ブレードに傷つく三機がいた。 


ニギュー「なんで確実に当たらねえ。 なんだこのパイロットは3人がかりだぞ」


 ギエンの攻撃で、けり落されたライルは威嚇でライフルを打ち込む。


 すさまじい重みと、恐怖が一瞬にして空間に流れる。


ギエン「っく、近づきにくい。 気を付けろ、あの攻撃」



ライル「あの見たことない機体。 あれだけは動きが違う」


スラック「そろそろか。 ジータ! ドメイク、行ってやれ。 

 リラルド!惹きつけを」



ジータ「あいよ」

ドメイク「っしゃぁ」



リラル「任された」



 スラックは決して戦況を簡単には見ない。その経験からか、大体の事態を彼は把握する。



マレー「少尉! エネルギーがもう持ちません」


ニギュー「隊長、こっちもだ」


ギエン「二人は後退しろ。  こいつは俺が引き受ける」


ニギュー「しかし、それでは」


ギエン「大丈夫だ。 こっちも新型。 隊長の命令が聞けんのか」



ニギュー「いえ、 そんなことは……」



 最初はギエンが押してはいたが、エネルギーが先につきかけるのもまたギエンの方。


ギエン「ここまでか、 これで貴様に充てる最後の一撃だ。 これで破壊できなければ、俺の負けだ」



 ギエンは最後のエネルギーをかけてライルに挑んだ。 ライフルを撃ち、同じくブレードで接近してまた距離を開ける。しかし攻撃はかする程度、倒れるまでに至らない。

 ギエンは覚悟を決めていた。 これ以上悠々と動くことはできない、 エネルギーがなくれば、動くとすらできないそんなギリギリのところまで来ていたからだ。 


サフィー「すごい…… ライル君が押している……」



 しかし向かってきていた三機が横やりを入れる。 



ジャン「艦長! エター、一機! こちらに来ます!」



 ライルもまた爆発を食らってよろめく。 予想もしない方向からの攻撃、ドメイクとジータが詰め寄る。


ドメイク「おいおい、行くぞ」


ジータ「こんなところで死のうなんてしてんじゃないよ、 少尉が」



 ドメイクが攻撃を仕掛け、ジータがその隙にギエンを担ぐ


ライル「邪魔だー」


ドメイク「おっと、お前の相手は俺だ! させるかよ」


 ドメイクの動きもまた、今まで戦ったものとは違った。 ブレードがすべてかわされる。


ドメイク「動きがおせぇんだよ、 こののろま」


 ドメイクのライフルが炸裂する。



ドメイク「何!? この至近距離で焼けきれないのか! なんだこいつ」


リラルド「行くぞ、ドメイク! 今回は撤退だ」


 ドメイクは距離を取り、そのまま撤退する。


 リラルドとドメイクがゆらゆらと浮遊するジータ機を手伝う。 



シノ「ライル君!チャンスよ! その横のライフルで彼らを撃って! 早く!!


エールス「ライル君、早く撃つんだ」



 ライルは言われるがまますかさずライフルを取って構える。


 ターゲットに三機の機体が入る。 このまま撃てば確実に三機と戦艦を葬れる射線距離にある。 


サフィー「今よ! ライル君」



ニフティ「エネルギーの消耗が激化 残存40% 現在のエネルギー量でそのライフルを撃つと、かなりの消費が見込まれます。」



 ライルはじっと構える。 スラックはその姿をモニター越しに捉えた時、危機をいち早く察知した。



スラック「まずい! おまえら、すぐにそこから散らばれ! 直撃するぞ」



 スラッグ隊の三人、ジータたちはその凄まじさを知らない。ただのライフルだと思って飛んでいたので、射程距離を遠に外れいていると思っていたのだ。




スラック「狙い撃ちされる 全艦! 援護しろ、目標新型機!」


 だが、砲台が新型機に向くまでに時間がある。 どうしたって間に合わないのである。 それでも、そうしなければ気がすまないその少ない可能性にかけて。スラックはできる精一杯のことしているだけである。 


 ライルはじっとライフルを構える。 射程に入っている三人をターゲット越しから覗いて。



エールス「何をやってる!? あいつは 早く撃たないと、逃げられてしまうぞ」


シノ「ライル君?」


ニルス「あいつ何やってるんだ。 ふざけてるのか! サフィー!」



サフィー「はっ、はい!!」


ニルス「あいつにつなげ」


サフィー「わ、わかりました。 通信つなぎます」





ニルス「おい、ライル君とか言ったな。何もしているんだ! 何かあるのか

? なぜじっとしている? 今が撃てるチャンスだぞ」



 ライルは何かつぶやていた。



ニルス「なに? 何を言っている? 聞こえないぞ!」



ライル「撃てないって言ってるんだよ!! こんな銃撃てるか! 逃げてる人を後ろから、 こんなの人殺しじゃないか!!」


 ライルは決して撃とうとはしなかった。 



スラック「?


 待て!! 


 なんだ? 撃ってこないのか? あの新型。

 どういうことだ? 逃がしてくれると言っているのか…… 」



 ラーデル部隊の四機はサイジロスに無事帰還していった。




スラック「ふん。戦争をしているというのに、とんだ甘ちゃんもいたもんだな。 まだあんな奴もいるとは。L.S.E.E.Dもまだ悪と決めつけるものでもないか。


 とにかく、今回は礼を言おう。 仲間を無事に返してくれたことを新型のパイロット。 だがこれが裏目に出ても恨むなよ」




 サイジロスは親子のように帰っていた。 一機は黒い煙を上げながら。まるで親を追うように、ふらふらと去っていった。





 その後、サーゲンレーゼはライル達のファクトリー近くに着陸し、エクリプスを回収した。 



――― サーゲンレーゼ内

 ブリッジ



エールス「ライル君どういうことだ! なぜ撃たなかった」


シノ「なぜ彼らを逃がしたの?」


 そこには大きな人だまりができていた。 まるで尋問をされているようだった。 みんな血相を変えて追及してくる。だけど、ライルはその中心で口をつむる。


ニルス「艦長、俺に話させてください」


 エールスの肩を軽く撫でて、奥からニルスがライルの前に立った。 当然ニルスの表情は氷のように冷たい。


ニルス「ライル君。君があれに乗り慣れてないのは考慮しよう。だけど、あの場で敵は撃てたはずだ。 なぜ撃たなかった? 何か理由があるなら話してくれ」


 ライルは黙っている。 自分は悪い事はしていない。 だけどそれを言えば、反感を買われる気がした。 だから黙ることしかできなかった。 


ニルス「黙っていてはわからないぞ!」


サフィー「そんな怒鳴らないでよ! ライル君? きっと何かあったんだよね? もしかしたらトラブルとかがあったのかも。 ねぇ? ライル君?」


シノ「ライル君教えて頂戴? 機械にトラブルがあったの?」



 周りが余りにもしつこく、終わりそうにない為、ライルは本心を答えた。


ライル「殺したくなかったから。 殺す必要なんかなかったから、撃たなかっただけだ」


 それを聞いたニルスの顔色が変わる。


ニルス「ただ、そんな理由で撃たなかったのか!あいつらは殺しに来てるんだぞ」


ライル「そんな理由? 人を殺すことがそんなに立派か!」


ニルス「俺たちが戦争しているってことは知っているよな?

 俺たちを殺したいのか!!」


ライル「なんでそうなるんだよ! そんなこと一言も言ってないだろ! なんなんだあんた」


ニルス「なら、なぜ、撃たなかった! 奴らを逃がして何がしたいんだ!!お前は!」


 ニルスがライルの胸座をつかんで怒鳴る。


 誰もがニルスと同じ気持ちだった。



サフィー「ちょ、ちょっとニルスさん! だめですよ、暴力沙汰は! やめてください」 



 サフィーが必至で止めようとする。


ニルス「ふざけるなよ! こいつ! 俺たちが命懸けてここまで戦ってるっていうのに、敵を逃がしたんだぞ。 それがどういうことか! そのおかげで次はこっちの誰かが殺されるかもしれないんだぞ!!」



サフィー「それは……そうですけど……、 でも暴力はやめてください。

 ライル君だって急に巻き込まれて戦ってもらってるんですから」



 酒を持ったグロスも少し離れてそれを聞いている。



ライル「もう離してください。 俺には関係ないって言ってるでしょ!

 そんなに殺したいなら、あんたがあれに乗ればいい。 関係のない俺にばかり、殺させようとしないで、口で殺せと命令だけして、どっちが最低だ!」



グロス「あぁ、言っちまいやがった……」



エールス「ライル君、違うんだ、あの機体には」


ニルス「お前、もういっぺん言ってみろ。

 俺が、お前に任せて指をくわえてただと! そんな話してんじゃねぇんだよ!!」


 ライルは思いっきりほほを殴られた。 その拍子で倒れる。 ニルスはさらに馬乗りになってライルに殴りかかり揉み合う。


サフィー「ちょっとやめて、」


シノ「あなたたちやめなさい。男性連中も見てないで、早く止めなさいな!!」



 どんちゃん騒ぎが続く中、一発の銃声が鳴る。あたりは一瞬で静かになった。



エールス「いい加減にしないか、お前ら! 見苦しいぞ。仕事のあるものは持ち場に戻れ! 他の者は早く休め。解散だ! ニルス隊長!! 」



ニルス「はっ!!」



 ニルスはピンと立ち上がると敬礼する。



エールス「隊長が、チームを乱すような行動をすることが正しいのか!!」



ニルス「申し訳ありません」


エールス「わかればよし、各自持ち場に戻れ!解散」 


 エールスはうつむきながら、出ようとするニルスの腕をつかむ。


エールス「ニルス。 お前の気持ちはよくわかる。 全員の場で叱ることになった事はすまない。 だが、もう少し、隊長とした振る舞いを心掛けろ。正しいをなんでもかんでもむき出しにして言い訳ではない。 その場にあった振る舞いを、 」


ニルス「いえ、艦長。 すみません。 俺が熱くなりすぎたんです。 だけど、仲間の事を考えると、どうしても」



エールス「わかっている。 だが、ライル君は軍人でも訓練を受けてきたわけでもないんだ。 そんな彼に何を求めてる。 我々が国民から求められる側であるべきだろ」


ニルス「……はい その通りです。 お手数をおかけしてしまい申し訳ありません。 失礼します」



 そう言ってニルスは渋った顔で出て行った。



エールス「ライル君、ちょっとこっちへ来てくれ。


 すまなかった。 皆の非礼をお詫びさせてくれ。

 我々は君を頼りにしてしまっていた。 だからこそ、ニルスもあそこまで熱くなってしまった事をわかってやってほしい」



ライル「わかりませんよ。そんなこと。 なぜ俺が怒られなきゃならないのか。別に許すとか許さないとかそういう話なんですか」



 エールスは何から話せばいいのか、言葉を詰まらせる。 生きている環境、見てきた思想がちがえば、当然理解し合うのには時間がかかる。 

 どこから説明するべきなのか、エールスは考えていた。 



エールス「ライル君、もし君に時間があるなら、少し私の部屋に来てくれないか?」


シノ「か、艦長?!」


 シノはひどく動揺した。


エールス「大丈夫だ。 ライル君だから、暴動を起こしたり、首を取るようなことはしないさ」


シノ「そんなのは、わかっていますが。 そうだ、仕事、艦長の仕事が」



エールス「私のしないといけないことは終わらせてある、他に私が休憩をもらって困るものはいるか?」



クルー1「大丈夫ですよ艦長!」


クルー2「こちらも大丈夫です、ゆっくり休んできてください」



エールス「うん。ありがとうみんな。 では少し休みをいただく。 何かあったらすぐに連絡してくれ」


 皆の反応を確認して艦長はライルと出て行った。



 グロスが、まじめに仕事をしているジャンに肩をかける。


グロス「シノ副館長さんったら、 見たかあれ」


ジャン「グ、グロスさん!! えぇ見ましたけど」



グロス「ありゃそうとう、焼いてたね。 あの必死さ」


ジャン「確かに、だって艦長の部屋って、ほとんど誰も入ったことないですもんね」

 

 サフィーが嬉しそうに入ってくる。

 

サフィー「あぁ、皆さんもやっぱり聞いてたんですね!!」



グロス「サフィーちゃんもか。 やっぱり女の子は鋭いねぇ」


サフィー「えっへっへ、今時女子を舐めないでくださいよ。 そりゃ焼きます。自分よりも先に、お部屋に入られちゃうなんて、 やっぱり自分が一番で居たいですもんね。 あの怖いシノ副館長のあんな姿が見られるのが、結構癒しだったりします。 副館長も、冷たく見えてやっぱりかわいい女の子ですよね」



ジャン「ほんとですよね。 普段は冷たい感じなのに、ああいう時だけ動揺するのが、たまり給ったストレス解消になりますよ」



グロス「おめぇらほんと性格悪いな」


サフィー「もぅ、何言ってるんですか! グロスさんこそ同じように楽しんでるじゃないですか」


ジャン「大体、みんな黙ってたのに、持ち出してきたのグロスさんなんですからね」



シノ「そこ!! 何話しているの!!」



 突然のシノの咆哮。 勘の鋭い彼女には要注意だ。



ジャン「はい!! いえ、なにも。」



シノ「ちゃんと整備は終わってるんでしょうね??」


ジャン「も、もちろん」



シノ「そう、じゃあ、何やら楽しそうな会話をしていたみたいだし、私も混ぜてもらおうかしら」




サフィー「あぁぁ、私、フロントに行かないといけない用事があったんだった、い、急いで行ってきまーす」



グロス「そ、そうだ、俺も見回りに行かねぇと」



シノ「ほぉーいつも飲んだくれてる人が、今日は見回りですか」



グロス「あ、あったりめぇよ! そ、そりゃ務めだから、しなきゃならねえだろ。 じゃ、じゃあな、あと説明よろしくな、ジャン」




ジャン「ちょ、ちょっとみんな」


 二人は一斉に散らばった。ジャンは涙ぐんで危機におびえる。


シノ「じゃわたしも気分転換したいし、艦を見回ろうかしら」


グロス「はっ!? ふざけんなよぉ」


シノ「あら、私と一緒じゃ不服かしら、ゆっくりお話ししながら歩きましょうか グ・ロ・スさん」




 シノは話の内容は分からねども、誰が発端かは、察しがついていた。




ジャン「あっはは、いいじゃないですかグロスさん。副艦長と一緒に行けるなんて、光栄ですよ」



グロス「ジャン!てめぇ」


シノ「さぁ行きましょうか、

 ジャン。何かあったらすぐに連絡をください」


ジャン「はい。わかりました。 任せてください」



グロス「おぉぉ、おいおいおいおい、副艦までブリッジ離れていいのかよ。 見回りぐらい俺ひとりでいけるっちゅうに」


シノ「酔っ払いの人をおいそれと一人で行かせられないでしょ、これに懲りたら、もう飲まないことね。 さぁ、話してもらうわよ」



グロス「か、勘弁してくれよ」



 

 ライルは艦長の部屋にあがっていた。 上着を脱ぎそれを椅子に掛ける。 とてもきれいで、私物はなにもない。 そして、なかなかに広い部屋った。

 


エールス「ライル君すまないね。 付き合わせてしまって」


 ライルは不服そうであった。


ライル「別に俺はいいですけど、艦長さんはいいんですか? 休まなくて。 数少ない貴重な時間なのでは」



エールス「いや、いいんだ。 其れよりもこうして、君と話せる時間の方が貴重さ。 ところで我々は戦争をしていると言っていたね。


 我々の世界でもいろんな考えの人種がいるんだ。 それぞれ思うところが違うから、皆が幸せに暮らしやすくするように、手を取り合おうとして協力している。 それが我々が守ってる世界なんだ。 だけど、その考え方から反発し、自分勝手にことを進めようとする者たちが現れた。 それが今我々が戦っているアルカーナだ。


 彼らは彼らの思想を守るために建国した。 それは凄く立派なことだ。 だがだからと言って、みんなで協力しようと手を取り合っている国に、自分たちの思想を強制的に植え付けようとしてねじ伏せてくることは正しい事かい?」




ライル「いや、それは間違いというか、いい気分をする人は少ないと思う」



エールス「そうだ。 だから、それに抗うために争いになった。 我々も戦争など、殺し合いなんてしたくないさ。 だが、そうもいかなくなった。  これでも、最初は話し合いから始まったんだ。 だが彼らは話し合いの場で、我々の大臣を射殺した。 彼らは力をもって見せつける道を取ったんだ。 話し合いでは一行にぶつかり合うばかりで、進展が見えないからさ。 



 しかしそれに従っていては、皆我慢する生活になってしまう。 だから力の暴力から国々を守るために、彼らを止める必要があったんだ。 戦う道だ」


 

ライル「俺にはよくわかりません。 戦う理由とか、そんなの。それに、申し訳ないですが、そちらの戦いの事を知ったところで、俺には何の意味もありません。 何もできないですから」



エールス「わかっている。 昔ある部隊がいた……」



 エールスは語りだした。 その部隊はとてもやさしく、ひと思いのいい奴ばかりがいたと。 人を殺すことをよしとはしなかった。  だが戦争だからむっかてくるものは仕方なく殺した。 そんな部隊。  だがある日、命乞いをした敵兵を逃がしたことで事態が一変した。 内部の情報がばれ、そして仲間が次々と殺された。 その部隊は全滅した。  しかし、その中に生き残りがいて、彼はまた違う部隊に配属された。 人を殺さない主義を貫いたのだ。



 だからまた同じようなことが起きて、その部隊は散った。 それが各部署で起こったのだ。 この時知った。 敵は命を懸けて戦っていたのだと。 自分たちの大切なものを守るために。 人は、すべての考えを分かり合えるようにはできていない。


 だから、情けをかければ、それはさらなる力となって、降りかかってくると。 



エールス「それからだ。 L.S.E.E.Dができ、本腰を入れるようになったんだ。

 そうして戦争は激化した。 奪い、奪い合い。やった、やられた。もう話し合いでは何も生まれない。

 誰もが復讐を誓ったんだ。

 こうなってしまえば、情けも何もない。 自分の命は自分で守らなければいけない世界だ。 大切な人を失いたくなければ、自分達で守らなければいけないんだ」



 エールスは続けた。


エールス「ニルスは同じようなことで、彼の恋人を失ったんだ。 とても仲が良かった。大切な人だったんだろう。 だけど、敵に情けをかけたことで、地区が占拠された。 そして自分の同期もみんな失ったんだ。 友も仲間も 」



エールス「信じられるものなら信じたい。 だけど、今俺たちがいるのはそんな世界なんだということだけ知っておいてくれ。 だから敵を逃がすというのであれば、それが降りかかることも知っておいてほしい。 だからって殺戮をしろっていうわけではない。 難しいが、見極めは必要というところかな


 とにかくニルスもここのみんなを守ろうと必死なんだ」



 ニルスの庇護をしたいだけじゃないか。 ライルはそう思った時、急にコールが鳴る。


エールス「すまない。誰からだろう。ちょっと失礼するよ」


 通信はエレクトロニックからだった。 急ぎで話したいことがあると連絡がきた。



エールス「すまないライル君。 私は行かなくてはならなくなった。 話に誘ったのに」



ライル「いえ、かまいません。 お忙しそうですし、お体無理しないようにお気を付けください」


 エールスは上着に裾を通しながら話す。


エールス「ありがとう。 まぁ、この惑星に降りてきたあいつらは、倒さなければならない、 降伏して一緒に宇宙にあげれるならまだいいが、そんな甘い話じゃない。彼らだってそれを望まないだろう。 命を懸けて守ろうとしているんだ。彼らも、俺たちも。 だから、この星に彼らを置いておけばここだって危なくなる。 それに約束したからな。 彼らを排除してからでないと宇宙へ帰してはくれないと。 だから彼らは倒すよ」



ライル「なぜ? そんな話を? 別に俺は、あなたたちが彼らを倒そうと、倒さまいとどちらでも」


エールス「あぁ、そうだな。 それで構わない。  それと……修理とファクトリーの件だが」


ライル「えぇ、いいですよ。うちのファクトリーで修理してください。 腕利きの整備士もいますし、 部品の調達もなんとか協力しますよ」



エールス「ありがとう。恩に着るよ。 なんにせよ、今日の事は本当にありがとう

 皆君には感謝しているよ。 それじゃ」



 エールスは先に出て行ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る