08_冷蔵庫

朝だ。起きて気になるのはそのパネルだ。早速見てみると、今日は何と、何やら棚のようなものが写っているのが見える。


それが何なのかはすぐに分かった。冷蔵庫の中身だ。しかもご丁寧に、顔を動かすとそれに応じ、パネルがまるでガラス窓になって中を覗いているかのように映像も動く。


飲みかけのワイン、バター、昨日食べそびれた焼き鮭…つまり今の僕の心の関心事はこの、冷蔵庫のスカスカの中身と言うことか。


しかしドアを開けなくても中身が確認できると言うのは、考えようによっては便利だ。面白い。

おもむろに冷蔵庫のドアを開けてみると、実際の中身とレイアウトはパネルに写った映像とはかなり異なっていた。映像は記憶を元にしているのだろう。記憶とはいい加減なものだ。


ドアを閉め、改めてパネルを見てみると、映像は直前に見た冷蔵庫の中身に変わっていた。何の断りもなくこっそり間違いを訂正してしまうとは、自分の無意識というのはつくづく現金なものだ。そして、そういう無責任で一貫性の無い自分の内面は見たくないものだとも思った。


僕は小林さんが言っていた芸術の定義を思い出した。

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brand 吉川 卓志 @Lolomo

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