第二幕だ私を褒めて褒めまくれ!

 ドンキホーテとアレン先生のコンビは特にサンチョ博士の実験に巻き込まれやすい。今日は特にガッツリと巻き込まれた。


 なんでも革新的な発明をしたいという、博士の要望からして嫌な予感がした、黒い羊は急遽、博士との付き合いが長い2人を召喚した。

 今回の事件はそんな2人が博士の部屋に、研究室に入ってきたところから始まる。


 ノックをしながらドンキホーテ達はゆっくりと博士の部屋に入る、前は勢いよく開けて死にかけたことがあるからだ、博士の邪魔者撃退トラップのせいで。


「今回は何もねぇみたいだな!」


 ドアが完全に開ききってからドンキホーテはズカズカと部屋の中に入る。


「おい、まつのじゃ…良いお前がズカズカ入れたということは他に何も仕掛けられておらんな…」


 頭を前足で抑えながら白い猫、アレン先生はため息をついた。

 まずは第1関門は突破だ、第2関門は博士を探すことだ。奇妙なことにサンチョ博士は大概、研究室にいるのにいない。

 研究室の隣あった次元の中にいるだとか、瞬間転移装置という見た目は巨大なリング状の機械で、いわゆる地点と地点を繋ぐテレポートの装置の入り口か出口にいる。

 そんな微妙に研究室を出ているのか出ていない絶妙なラインの場所に居座っているのだ。


「おい!馬鹿博士!どこじゃー!」


 アレン先生の雑な捜索が始まる。


「アレン先生…博士が怒って出てこなくなっちまうぜ?」


 ドンキホーテの制止をアレン先生は聞かない。逆にドンキホーテに言い返した。


「良いか?!ドンキホーテ博士にこれ以上つけあがったらどうする!?いつかとんでもない間違いをしでかすぞ!」

 

 その気持ちはわからないでもないドンキホーテだったが今はアレン先生を落ち着けさせる。


「まぁ気持ちはわかる。でも博士の研究はすげぇ!夢があるぜ!どれも世界の平和につながるものばかりだしよ!それに間違いを犯さないように俺たちがいるんだろ?」


「また甘いことを言って、知らんぞ!」とドンキホーテから顔を逸らすアレン先生。2人は正反対だ例えるなら水と油決して混じり合うことはない。

 アレン先生はサンチョ博士の、子供みたいな好奇心だけで行動する性格が嫌いだし、そんなサンチョ博士はアレン先生の大人すぎる性格が嫌いなのだ。


「まったく、協力し合えばいいのによー……」


 そんなドンキホーテのぼやきを聞くものはいなかった。

 するとアレン先生の3度目の馬鹿博士に呼応するように瞬間転移装置のスイッチが入り、どこかの地点へと繋がったようだ。

 するとリングの中から青い髪に白髪混じった男が出てくる。


「ジャジャーン!サプライズ!決して瞬間転移装置(断じて魔法製ではない!なぜなら?!賢いサンチョ博士は?!小賢しいミス・アレン先生(先生は皮肉で言ってるんだ!!!!)の手を借りるのは嫌だから〜!!あかんべ!あとこれは正式名称だ!落書きじゃないから消すなよ!ヴァンパイアのメイドの小娘!お前さんに言ってるんだ!)が壊れたわけではないぞ!!」


 相変わらず長い正式名称だと思うが律儀に全部、博士は言う。そんな事気にせず、博士はドンキホーテを見るなり期待の眼差し向ける。

 ドンキホーテはすぐ気がつく。


 ――ああ褒め言葉を待っているのか?


「博士びっくりしたよ」


 ドンキホーテは素直なリアクションをする下手にお世辞を交えるのは相手にとって失礼だ。


「本当かイェーイ!私はサプライズの天才だからな!」


「本当に天才じゃよ阿呆とつくな」とアレン先生は口から猛毒を放つ。しかし以外にもサンチョ博士はアレン先生の毒に波風立てる事なく紳士的にこう返した。


「今は褒め言葉と受け取っておこうミス・アレン」


 その言葉にアレン先生はまるで毛玉が喉に詰まったみたいな顔をして「うぇ」と呻いた。アレン先生にとっては気持ち悪いようだが。

 ドンキホーテに、とっては喜ばしい事だこんなに、アレン先生に譲歩できる博士は貴重だからだ。

 しかしなぜそんなに機嫌がいいのか?その答えはすぐにわかった。博士が自ら説明したからだ。


「今の私は上機嫌だ、なぜなら!!実はね言ってしまうとね今回は大冒険なんてしなくていいんだ!いやそれは残念なお知らせだが!今回はなんともう発明品ができてます!イエイ!」


「嫌な予感がする」アレン先生は毛玉を吐き出すみたいに言葉を吐き捨てる。


「さあみんな瞬間転移装置(断じて魔法製ではない!なぜなら?!賢いサンチョ博士は?!小賢しいミス・アレン先生(先生は皮肉で言ってるんだ!!!!)の手を借りるのは嫌だから〜!!あかんべ!あとこれは正式名称だ!落書きじゃないから消すなよ!ヴァンパイアのメイドの小娘!お前さんに言ってるんだ!)をくぐれ!私の発明品を見せてやろう!」


 サンチョ博士の促されるままにドンキホーテ達はリングをくぐる。最悪博士を力づくで止める覚悟をして――


 リングをくぐった先は、謎の砂漠だったいや砂漠ではない広大な砂漠の割には地面がなぜか湿気っている。まさかありえない事だが…


「ここって海の中か博士?」

「その通りだ騎士ドンキホーテよ!さすが我が友どこかのクソ猫とは、大違いだ」

「わしも気づいておったわいなんなら最初からな!」

「なんなら私は入る前から気づいてた!なぜかって?私がここに空気をまるでトンネルのように定着させたからな!!!」


 なるほどとドンキホーテは博士の説明でわかった、よく地面を見てみると謎の装置が置いてある。これで空気の道を作っているのだろう。


「だがよ博士の技術力なら潜水服作った方が良かったじゃねぇか?」

「潜水服だって?!冗談じゃない!あんなものクソだ!どうせなら自然体ままで見た方がいいのだ。あの世紀の大発明をな!!」


 アレン先生は嫌な予感がしているようだがドンキホーテは世紀の大発明と聞き胸を高鳴らせているようだ。


「さあもうすぐだ!私についてこいあの砂丘を超えたら見えるぞ!」


 ドンキホーテは「行こうぜアレン先生!」とアレン先生を急かし、肩に乗せ走っていった。


「おいドンキホーテ!ワシは嫌な予感がするのじゃが!」

「まあそん時はそん時さ!行こうぜ!」


 まあその時はその時、というドンキホーテの言葉にたしかにヤバイものならば破壊すればいいか、とアレン先生も覚悟を決め、砂丘の先にある、世紀の大発明を見ることにした。


「じゃあ行くぞ!」


 見に行こうと思ったら博士、視界に立ちふさがり邪魔していた。どうやらここでもサプライズしたいらしい。


「ジャジャーン!」


 その掛け声とともに博士は退き、ついに世紀の大発見を、見られるらしい。

 姿を見せたそれは巨大なピラミッドだったただ一つ普通と違ったのは頂点の上に謎の機械があることだった。

 その世紀の大発明をみたアレン先生は固まり、ドンキホーテは、目を輝かせる。


「おおすげぇ!ピラミッドも博士が作ったのか!」

「バカ言っちゃいかんドンキホーテ!あれは海の民が作ったもの!頂点の機械だけだよワシが作ったのは!」

「へぇじゃあ!海の民に協力してもらったのか?」

「何をいう私一人で制作、設置、テストをやったんだ」

「へぇ……!!!つまり勝手にあれを作って、おいて、作動させたんじゃな…………!!!」


 アレン先生は今にもサンチョ博士を殺しそうな目つきで見つめている。


「あー、アレン先生からってもしかして…」


 アレン先生は目で伝える「ぶっ壊すぞ」と。そんなアレン先生の殺気を気にせずサンチョ博士は説明を続ける


「ドンキホーテや馬鹿猫にはわからんだろうが今のこの世界には使われてないエネルギーというものがある、例えばメタンとか石油とか…おっと難しすぎる上に言っちゃいけないことだったか?」


「まあ歴史改変は起こらんだろ」と博士は話を続ける。


「それらは未来ではもう活用されてるんだが、唯一ウンコまでエネルギーとして活用している未来で未だにエネルギーとして使われていないものがあるのだ!それなーんだ!」


「それは!」と、サンチョ博士が答えを待たずにいう。


「宇宙からの侵略者!またの名をエイリアンまたの名を…」


 アレン先生が食い気味に言う。


「邪神…!!」


 サンチョ博士が指を鳴らす。


「そう使われていないエネルギーそれは…」


 自慢げに酔いしれるように、宝物を見せびらかすように勿体ぶって言った。


「邪神エネルギーだ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る