第15話 こんな親バカは嫌だ

(そうだ、あくまでみんなが大きく捉えすぎて考えが飛躍しているだけだ。そうだきっとそうに違いない。大丈夫、きっと大丈夫だ。だが…)


「わ、私はどうすればいい」

「とりあえずアルトが帰ってきてから彼の様子を見てから考えましょう。今のアルトのクレアさんへの失恋のショックがどれほどのものか見てからでないと」

「そもそもなんでアルトからの告白を断ったんや?別に断る理由なんて特にないやろ」

「何を言っているのだ貴様は?母親と息子が付き合うなんてそんなのおかしいだろう」


(おい、さっきまでそれこそ意味深で理解不能なことばっかり言うとったくせになんでここだけ真面目なこと言うとんのやこいつは)

(いつも人目もはばからずあんなにイチャイチャしてるのに、エルフの価値観って一体…)

(ロベルト!この件に関してだけは私達一般エルフとクレア様を一緒にしないでください。流石に心外です)

(一応慕っているセルレアにまで言われるとは…)


「別に血は繋がってないんだしいいんじゃないですか?」

「だが血は繋がっていないといえ息子を異性として見るなどまるで変人ではないか」


(クレアさんのアルトへ接している姿は基本変人だと思いますが…)

(変人いうより変態の類やと思うけどな)

(流石にそれは言い過ぎです。アルトへの愛情が行き過ぎていているだけでそういう類ではありません。せいぜい少し…そう、世間より少しだけアルトに対して特殊な感情を持ち合わせていて、アルトと接する時の光景が世間的に少々お見せできないくらいで時折手におえないくらい暴走してしまうだけなのです)

(暴走時は口が滑っても”だけ”とは言えないけどね)

(世間的に言うとそれを変態やら異常やら言うと思うんやけどな)


「つまりアルトを異性としては見れない…アルトに異性としての魅力を感じないということですか」

「なんだと、貴様…アルトに魅力がないと、男として駄目だとでも言いたいのか」


(ええ…何でこうなるの!?もうこの人めんどくさ過ぎる)


「違いますよ、あくまでクレアさんから見てアルトは男としての魅力的には映らないのではないですかという話です」

「何を言うか、あの子は魅力の塊だ。あの子の心を表したかのような真っ白で絹のような手触りのいいつやつやの髪。まさに天使のような微笑みの笑顔。そこら辺のシスターなどよりきれいな心にやさしさや配慮を兼ね備えた完璧な性格。抱きしめたときの柔らかな抱き心地。何より私のことを思いやって尽くしてくれるあの年では考えられないようなあの包容力。我が子ながら完ぺきというほかない息子だ。そんなあの子のどこが魅力的に映らないというのだ」


(いつものことながら聞いてて頭痛のするアルト自慢。頭が痛い)

(私も気持ち悪さで昼食で口に入れたものリバースしそうです)

(駄目だこのエルフもどき…話が通じない。早く自分の部屋に帰りたい)


 ロベルト達は目の前のエルフの姿を形どった何かに会話を成立させることの難しさを嫌とうほど痛感するのだった。そんな3人が誰でもいいからこの場を代わりに収めてくれと思っていると、窓の外に目を向けていたロイの目にアルトが返ってくる姿が確認できた。


「クレア、丁度アルトが返って来たみたいだか…らー!」


 ロイが言い切るよりも早くクレアは3人の襟元を掴むとドアを蹴っ飛ばして物凄い速さで玄関へと急いだ。


(アルトアルトアルトアルトアルトアルトアルトアルト)


 その際クレアの頭の中はアルト一色で、当然無理矢理連れきている3人への配慮など微塵もなかった。3人供連れていかれる間、強力な力で襟元を引っ張られていたため、強烈に首を絞められことになり、クレアが玄関に到着するまでの僅かな間にくだらなすぎる理由で生死の境をさ迷っていた。


(く、首がもげるかと思った)


 3人が瀕死であることに微塵も気付かないクレアは今か今かとアルトがドアを開けるのを待っていた。そして待ちわびた瞬間がやってきた。


「ただい…わ!ロベルトさん達どうしたんですか?3人供こんな所で倒れられて」

「3人供玄関でなんか寝転がるんじゃない。通行の邪魔だろうが」


(((誰のせいだと思ってるんだ!)))


 あまりにくだらな過ぎる事で死にかけた3人はアルトの前なのもあって睨むに睨めず、言いたい事を心の中にしまい込んだ。

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