第16話3-1忘れていた


 休業要請外支援金の申請ができるかもしれない。心夢はそれを知り、目の色を変えて資料を作成していました。登記簿謄本がなくても固定資産税の書類等をいくつか用意したら大丈夫かもしれないということでした。

 彼女は一度諦めたことが認められるかもしれないということで、嬉々として煩雑な資料作成をしていました。今の心夢には祖父関連の話は頭のどこにもありませんでした。一心不乱にお金のことを考えていました。

 どうしてそうなったかといったら、劇団仲間のグループラインに投じられた1つの連絡からでした。そこでは、申請の締切が延長されたのでしていない人は諦めないで欲しいという内容が書かれていました。それを見て心夢は、本来の〆切直前にダメもとで申請方法をネットでもう1度確認しました。

 すると、建物の登記簿謄本がなくても大丈夫な方法が書かれていました。それを見た時の心夢は言葉失い、体中に血が駆け巡ったのを感じました。余りにも血が暑すぎて、鳳凰の生命の火を頭に浮かんだくらいでした。

 彼女は一通りの資料を準備をしました。何度も何度も足りているのかをチェックして、何度も何度もチェック欄に指を指しました。同じ単純作業を資料準備後に10回は軽くしたと思います。

 そして、心夢は劇団の知り合いにラインをしました。その人は形勢逆転のラインを送ってきた人ではありませんが、その数日前に別のラインを送ってきた人でした。そこには、資料確認のための専用の行政書士は役所に頼むと時間が掛かるので自分がお世話になった行政書士を早急に紹介します、という内容が書かれていました。

 彼女は行政書士を紹介してもらいました。そして、2日後の昼に会うことになりました。明るかった日はまだ沈んでいませんでした。



 2日後も太陽が照っていました。



 翌日、エアコンを買いに行きました。



 エアコンを取り付けに業者が来ました



 全てが快適に進んでいました。



心夢は給付金のこともエアコンのことも問題が解決して、肩の荷が降りました。ガンガンに冷やした部屋のソファーに横たわりながら、ほかの問題がないか思いを巡らせていました。そして、気づきました。


「晴美はコロナで大学が休みのはずなのに、どうして大学に行く?」


 そう思った瞬間に、ラインが入りました。男からで、祖父の死について久しぶりに話をしようという連絡でした。最近ゴチャゴチャしていたので、心夢は完璧に忘れていました。

 

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