幕間

こんな夢なら

 夢を見た。


 辛くて悲しい夢だ。大切な人を失った夢だ。

 思いだせるのは、それだけだった。私はぼんやりと光に包まれて、ただ茫然ぼうぜんとその中をただよっているだけだった。


「終わったのか……何もかも」

 

 自分でも信じられないくらいかすれた言葉がれた。

 なんという――なんという長い夢だったのだろうか。

 その内容は、決して思いだせないが。

 ようやく、終わったのだ。何もかもが。


「そう、終わったんですよ。何もかも」


 背後から、懐かしい声が聞こえた。柔らかい日差しのような、懐かしい声。聞いているだけで心が暖かくなって、涙が零れるような――抑えきれなくなった言葉が、どこからか勝手にあふれてくる。


「こんな……こんな姿にまでなったのに……強く……強くなれなくてごめんな……」


「なにを言っているんですか。私――ずっと言ってきたじゃないですか」


 彼女は私の手を取って、静かに握りしめた。


「貴方がどんな姿になろうとも、ただ、一緒にいられるだけでいいんですよ」


「ああ……」


 なんという――なんという夢だろう。

 こんな夢なら、もうずっと、覚めないままでいてほしい。


「これからは、ずっと一緒ですね」


 彼女の微笑みにやっと頷いて、私は――彼女に手を引かれるに意識を任せた。

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