第20話 見張りが動かなかった理由は知らない
[更新頻度の落ちている中、沢山の☆・♡・ブクマなど本当にありがとうございます!リアル関係との折り合いもありますが、ゆっくりと更新頻度を上げていこうと思います……( ˘ω˘ )]
「……と、言う訳でして、負化なんてできる技術を盗賊団なんかが持っていたら困るのです」
「なるほど」
だいたい理解した。まあ、そりゃそうだよね。失敗してもリスクが高い――――しかも、『歪化』とかいう周囲にも大規模な被害が及びかねないリスクだ。安易に行われて歪化した魔物が大量発生……なんて、洒落にもならない。
成功したら成功したで、魔物次第ではとんでもない戦力を保有したならず者の集まりができあがる。ドラゴンを従えた盗賊団とかなんなんだよ、という感じだ。本当になんなんだよ。
レイの魔法で紋章の反応を辿りながら、もう少し歩く。
俺はそもそも(回復とか系統を除いて)魔法が悲しいくらいに使えない。ヘイルは探索系の魔法は苦手だという。感覚で相手を探し当てるほうが得意なのだとか。
アーロは放浪騎士であるからか探索魔法は使えるらしいのだが、大まかな位置を探り当てるのが限界だとか。
消去法になるが、魔法のエキスパートであり、この面子の中で最も精度の高いレイが使うこととなった。
そしてたどり着いたのは、地下へと向かう道の見える洞窟の入り口だった。
ただ、入り口周辺の木々は少々開けているため光量は多いはずなのだが、不自然なまでに洞窟の中は真っ暗だ。
洞窟の周辺に人の気配がないため、試しに(アーロが)魔法で照らしてみても、外から光を受け付けないのか、全く中が見えない。
外部から中が見えない洞窟や遺跡。たしかこういうのって……
「これは……」
「多分、魔術洞じゃねえかな……自信ないけど」
「えっと、魔術洞、です?」
「ああ。いわば『ダンジョン』の一種だな」
基本的に『ダンジョン』というのは人工物だったり、自然物だったりいろいろあるが、共通する特徴として、「内部に充満する魔力濃度が周囲より高い」という特徴がある。そのせいで、例えば「一定時間毎に内部構造が変わる」だとか「侵入する以外、外部から干渉することが難しい」だとか、とにかくめんどくさいことになっている。ぶっちゃけ「ローグライクゲーム」みたいなものだ。
歴史的にも世界的にも昔から有名なダンジョンには「侵入時に装備と一部の例外以外すべての持ち物が消え去る」ダンジョンなんかもある。ちなみにそのダンジョンは、多くの物語の舞台になっていたり、伝説がたくさん残されていたりしている。ロマンってやつが眠っているのだとか。間違っても俺は行く気はないけど。
「ダンジョン、ですか。ティファさんが居たら一番良かったのですが、彼女呼び出しくらってますしねぇ……」
「む?ティファ、とは、あの”
「なんかそんな感じの呼ばれ方してたよな、ティファ」
「なんと?!」
アーロが驚く。確かに、ティファは勇者だそうだが、それにしても過剰反応なんじゃないかなとは思う。
「む?もしや、ローグライク殿は”
「そんな呼ばれ方もありますね。ちなみに、こっちのヒルフェさんは”
「レイ?!」
「は…………」
バターンとアーロが倒れてしまった。あわてて治癒を施す。
ヘイルがおそるおそるゆすると、アーロはすぐにとび起きた。
忙しいな。というか、レイはたまにやるその悪ノリやめない?!
「だ、だ……大丈夫です……?」
「……うむ、考えるのは一旦止めたぞ。まずは早いところ、盗賊団を殲滅しなければ!行くぞ!」
「え、あ、うん?」
後で聞いた話なのだが、勇者の中でもティファは、探索と戦闘のエキスパートなのだとか。
「誰も帰ってこない」とまで言われたダンジョンを、単独で踏破して、無事に帰ってきたのだとか。しかも、しっかりと地図も描いて、その上古代文明についての重要な手がかりも発見し、更にダンジョンの攻略を困難にしていたある魔物をきっちり討伐したのだとか。勇者だとは聞いていたし、戦いも見ていたが、それはそれとして素直に驚いた。
ずかずかと入っていくアーロを慌てて追いかける。
不思議なことに、洞窟に入るとすぐに視界が開けた。外側から見た時は暗闇で、今も灯りもないのに真昼の屋内のようにはっきりと見える。本で読んで知っていたが、実際に入るのは初めてだ。かなり変な感覚がする。
……と、悠長に思う暇もなかった。入った途端、こちらに槍を向ける男が二人いた。
「侵入者め、手をあげろ!」
まあ、そりゃそうだよね。見張りくらいそりゃいるよね。というか、洞窟内から外はしっかり見えるので、多分侵入してくるまで様子を見ていたのだろう。
どーするっかなぁ……とか思っていたら、ずかずかとアーロが前に出た。
「やあやあ!我こそは!放浪騎士アーロー……」
「うるさい!」
見張りA(仮称)がアーロの言葉をさえぎって槍を振るおうとする。
が、その槍がアーロに届く前に、ヘイルが見張りAに対して回し蹴りを叩きこんだ。そのまま壁に叩きつけられた見張りAは気絶。
それを見た見張りB(仮称)は当然ながら、「侵入者だ!」と報せに逃げようとする。しかし、その前に突如として氷漬けになり、動けなくなる。
「安心してください。命に別条はないですから」
レイがそう言うが、多分魔法を使ったのだろう。杖を持たずに詠唱もなしで魔法を使ったのは、流石「宮廷魔術師」だと思った。
「先生、と、とりあえず、縛り上げますですか……?」
「あ、うん。ロープ誰か持ってる?」
「吾輩、持っているぞ」
アーロからロープを受け取り、見張りAをまず縛り上げる。それから、氷漬けになった見張りBの氷を溶かして(こちらも気絶していた。)、同じく縛り上げる。しっかり手首も足も巻いて、固結びだ。
「さて、さっさと奥に行きましょうか。静かに頼みますよ?罠もある可能性もありますので、気を付けてください」
「例えば色の違う床とか」、と言う。まあテンプレート的な罠なので作りやすいし自然発生しやすいしでダンジョンにはよくあるというのも、本で見た。確か、なんかそういうゲームあったよね。
アーロを先頭に、俺達は魔術洞の奥へと進みだした。
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