26話 開戦

「警察……」


「もう私の事はいいから!逃げて!」




 イルマが悲痛な声を上げる。


 しかしそれは駄目だ。それだけは。




「駄目だ。見捨てる事は無い!俺の心が「焼き尽くせ!」って感じな限り!<火炎弾>!」


「は?」




 流石にこの話に<火炎弾>の詠唱を組み込むのは難しかった。


 だが問題なく<火炎弾>を発動し、不意打ちで男を吹き飛ばす。


 イルマを救い出し、男を殺し、路地裏まで離脱する。




「サトシ、なんで助けたの?」


「『なんで』って、仲間だろ?どんだけ世間知らずなんだよ」


「そうですよ。仲間は助け合うもので」


「それより、早く別の姿に変装しないと警察に通報されているなら大惨事になる」




 確かにそうかもしれない。


 俺は新しい魔道具を三十分かけて作った。




 ただの魔道具を作るのに、能力スキルや魔法を作る時位の魔力と時間を消費するって、どういうことなのだろうか。




 まあ、<変装用具:改>と名付けたその魔道具を起動し、別の姿に変装する。


 いいじゃないか。




「魔王退治が迫ってきている。防具を強化しよう」


「そうね」


「そうですね」




 以下は省く。


 皆済まない!




 俺は<空間転移門>を開き、一度王都へ戻る。


 今頃は戦いも終わっているだろう。


 そんなことを考えながら<空間転移門>へ足を踏み出すと。


 その奥では物凄い<威圧>が解き放たれていた。




「何が、あったんだ……」


「ジェネルと、賢治ね。魔王軍将軍と参謀よ」




 そこにいたのは、賢治だった。


 あの、元クラスメートでパシリ時代の同僚。


 博士賢治。




「賢治。何やっているんだ?」


「お前、誰だ?」




 記憶喪失か、とぼけているのか。そのどちらかは区別で出来なかった。


 まあ今度この話はすると思う。




 そして、賢治の他には将軍的な魔人族の人がいた。


 恐らく、実力から選ばれるという魔王軍将軍なら強いのだろう。全ての<威圧>は将軍から発せられていた。




 こんな時に欠かせないのはステータスチェックだ。


 ステータスチェックではその人々の強さを確認する事が出来る。




 相手の強さ・手札を知る事は、冒険者等の戦闘職に就く人々の生命線となる程重要なことなのだ。


 と言う事でチェック!




名前:ジェネル=魔人=シルエ


性別:男


Lv.62 精神Lv.62


天職:指揮官、魔導師


年齢:33歳


攻撃:970


防御:990


速度:995


魔力:1320


筋力:1200


能力:指揮<士気向上Lv.55、覇気分配Lv.45、拡声Lv.62、意思疎通Lv.62、判断Lv.55、方針決定Lv.34、実行力強化>


魔法<詠唱省略Lv.100 進化=詠唱破棄Ⅸ、魔力強化Lv.87、魔法陣省略Lv.2>


武人<覇気、闘気、威圧>


魔法:基本属性魔法<水Lv.4、嵐Lv.76、雷Lv.43>、空間収納Lv.3




 何と言うか、能力数はそれほどでもないが熟練度が……。


 量より質と言うやつか。


 って言うか、なんか項目が変わっていないか?




《多すぎたので、省略しました。詳細も見せられます》


 便利だな⁉




 するとジェネルが攻撃を仕掛けて来た。


 魔法か⁉




「<風渦>!」


「それか」




 風で渦を作る魔法だった。


 対して強くないが、攪乱に使われる事もある。




「<魔法技術吸収>、<風渦>!<炎渦>!」


「何⁉未知の魔法か⁉」




 <魔法技術吸収>で魔法技術を吸収し、<風渦>を逆向きに放って打ち消し、<炎渦>で反撃する。


 だがジェネルは<魔法強壁>で防ぎ、<電撃連撃>で反撃してくる。




「<魔法技術吸収、<雷渦>!<精霊焼撃>!<妖精召喚:エルフ>!」


「召喚魔法⁉実力者じゃないか!」




 <雷渦>で打ち消し、聖霊の力を借りて<精霊焼撃>で焼き尽くすと、エルフの力を借りようとエルフを召喚する。


 エルフが見てみたいって言う理由もあったが、一応戦いに勝つためだ。




「どうだ⁉」


「まさか……。全属性に適性があるのか⁉」




 そんなに珍しいのだろうか。


《勿論です》




「<岩槌>そんなに、<波渦>珍しいのか?」


「<魔法強壁>……これじゃダメか⁉<天使召喚:守護天使>!よし。って……防げない⁉<天使召喚:熾天使加護>!」




 <天使召喚>か。欲しいなぁ。


 ならこれでどうだ!




「<魔法技術吸収>!<雷炎嵐波>!」


「何⁉四属性複合魔法⁉」




 これも凄いのだろうか。


《まあ勿論です》




「凄いのか?」


「これが出来るなら伝説級の魔法使いと言われる」




 賢治が説明する。


 俺は伝説級の魔法使いか。




「<並列起動:《雷嵐・水渦・岩破》>!」


「並列起動⁉いや、もうこれ以上驚く事はないだろう!」




 これでどうだ⁉


 <四属性複合魔法>とやらだからな。




「<魔法消去剣・全開>‼」


「何だこれ!」




 魔法がッ!消された⁉


 なんでだ?


 ジェネルは魔法術式を構成はしていない。


 魔道具類か?魔力の流れは感知できたし。




「<武具奪取>!」


「ちょ待てよ!」




 賢治が俺の武具、つまりローブを剥こうとしてくる。


 おい!変態かよ!




「<封印拘束>!」


「何⁉拘束系すら使えるのか⁉」




 賢治は知り合いで親友の為、拘束だけで済ます。軍の人に預ける。


 ジェネルには攻撃をするつもりである。




「くぅ!<高速魔力弾>」


「<魔法強壁>!」




 <魔法強壁>で防ぐ。


 この程度で十分だ。




「<炎剣乱舞>!<嵐海>!」


「は⁉待て!」




 炎剣で弱体化させ、<嵐海>、嵐の海に連れて行く。


 これってチートコンボか?


《そうですね》




「何をする気だ!俺は魔王軍将軍だ!捕虜にすれば魔王様が高い身代金を……」


「死ね!<殺人弾>!」




 最恐無属性魔法、<殺人弾>を容赦なく放つ。


 <嵐海>の世界から戻ると、俺が召喚したエルフが魔王軍を片付け……蹂躙……戦闘していた。




「これで良しっと」


「サトシ、結構残酷ね」


「ビビったよ。怖い」


「ちょっと近寄りたくなくなります」


「腹黒……」

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厨二の世界で大冒険! ナナシリア @nanasi20090127

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