表の姿が必ずしも正解ではない件について俺は語りたいんだが。

たこざえもん

第1話 奴の裏の姿と出会ってしまった話

 窓越に見える中庭の花びらが、長椅子に花びらが風に負け1つ落ちていく。


満開に咲いている花びらは風に負けじと咲いているが、どんなに咲こうとしてもいつかは限界がくる。


花は美しく咲いたら散るだけなのだから。


持ち抱えきれないほどの量のプリント束からボールペンが落ちて渡り廊下の方に転がっていく。


「瑠衣、ねぇ聞いてる?今日は私と遊ぶんでしょ?」


「違うわよ、今日は私と!」


太陽は東から上り西に沈むように進んでいく。


誰が決めたわけでもない


ただ、自然の摂理となるもの 


毎日、同じ所へ通い同じ景色を観る。


誰も違う景色を観たいとは思わず、踏み込まない。


その中からでて我が道をいく奴もいる。


俗世に染まったままの奴もいる。


俺はどちらだろうか。


俺は前者だろうな。


そして、前者は容姿端麗で華やかに活躍できる奴と腫れ物のように扱われる奴に区別される。


「ごめん、何の話だっけ?」


「もう、今日誰と遊ぶのかって話よ」


「ちゃんと聞いてよね」


「でも、そこが瑠衣の可愛い所だよね~」


「男に可愛いゆうな」


「えへへっでも瑠衣って凄いのね~」


「何が?」


「だって~先月の芸能雑誌の表紙に載ってて現役イケメン俳優ナンバーワンでしょ!っあでも今月は載ってなかったような‥」 


先月‥

「こら、未来!ダメでしょ。瑠衣だって頑張ってるんだから。来月にはまた表紙飾ってるわよ!」


フォローになってねぇよ。


また、景色をみることにした。


片腕を掴まれ振り払ってもまた次の手が被さっていく。


作り笑いをして適当に言い訳して逃げるか?


いや次あの面倒な原せんの授業だからな


そう考えていると反対の方向から俺たちの方向にくる奴がいた。


目の前の野郎を下から上までみるが、サイズの合っていないダボダボの制服。


前髪が見えないくらい長く肩の下の所で束ねられたボサボサの髪。


おまけにメガネときた。


正直、ムカついた。


自分を持ってないようなそんなつまらない奴が俺は嫌いだ。


そいつは動きを止めを止め俺の足先を凝視する。


「そこに落ちてるボールペン取りたいんだけど…」


周囲が固まり静まった


ゴロン…


ボールペンを拾うふりをし遠くに投げる


「あっ~悪い、手が滑ったな」


「も~瑠衣いじめちゃ可哀想じゃない」


今まで固まっていた女子はうっすら笑みを浮かべクスクスと笑う


野郎は俺が投げたボールペンを拾い口を開く


「空っぽ」


一瞬周囲が静まり返った。


「は~なんなの!?あいつ」


「まぁまぁ、イケメン顔の瑠衣が羨ましいだけでしょ。放っておこうよ、ねぇ、瑠衣?」  


「あぁ、そうだな」


正直この時、俺は女子たちの話は耳に入ってなかったと思う。


さっきまで怒りでいっぱいだったはずの胸が違う思いに巡らされていた。


なぜがその言葉が頭の中から離れなかった。






「ちょっと待ってよ~瑠衣?」


今日誰が俺と遊ぶかの権利を争い女たちが追いかけてきているが聞こえていない振りをしひたすら走る。


俺はコイツを引き連れ他の奴に追いつかれない速度で走る。


野郎の胸倉を掴み近くの空いている部屋にそいつを投げいれる


周囲を見渡すと薄暗く机と椅子があるところから使われていない元教室だろうな


「ちょっと…ちょ…離せ!」


勢いよく振り払われる


「なんなわけ?急に走り出して、部屋に連れ込んで。」


俺をまっすぐに睨みつけるその視線の

影に虎のようなオーラを感じゾクッとした寒気が俺を襲った。


「つーか、何?イケメン様は男でも仲良くする趣味があるわけ?」


「うるせぇ。ちょっと付き合えって言ってるんだ」


しばらくして窓を少しあけ外の様子を伺うとしんと静まっていることが分かる。


ようやく散らばったみたいだな…


「完全に遅刻じゃん…次は原先生の授業なのに」


まじめか


んっ?原せんの授業?


「えっ?お前同じクラス?」


「いや、だから俺に話しかけたんじゃないの?ノート見せて欲しいとか…」


こんな奴いたっけ?


「お前…」


「何?」


「お前…名前は?」


「呆れた…クラスメートの名前すら知らないわけ? 桂だよ、桂遥」


コイツ…いちいち突っかかってくるな

怒りがこみ上げてきそうだが一端落ち着こうと深呼吸をした。


「そういうお前は俺の名前知ってるのか?」


「一之瀬、一之瀬瑠衣でしょ。知ってるよ。良くも悪くも君目立つからね」


本当にコイツは!?


怒りが限界まで達しそうになるが拳を握りしめて必至に踏ん張る


何か…何かないか?


コイツの弱点になりそうな何か…


「お前、髪切らねえのか?」

そう言うと髪を守る素振りをしている

これはいけるかもしれない。

「良いから顔見せろってついでにメガネも外して…」


「おいちょっと…」


髪を無理やり上に上げたその時、妙に整った黒髪にグリーンアイの顔が一瞬見えた。


桂が俺を突き飛ばし涙目になりながら落ちたメガネを拾い上げ逃げるように部屋を出ていったあと、我に返った。


近くのトイレにふらついた様子で行き鏡をみる。


「いやいやいや、あいつ誰!?って桂か…じゃなくて」


バンと鏡を叩き、見た先の顔が妙に苦笑いしていた。


つい数十分前に起きたことに未だに頭がついていかずふらふらになりながら午後はサボって自宅に帰るとなんとなくリビングの机に置いてあった芸能雑誌を見た。


「あっ、これ俺が今月載り逃した奴じゃ‥

母さんワザとか?」


っん?開いてすぐのページに『帰国子女イケメン化モデル現る!』と書いてある記事が


何だこのいけ好かない野郎は‥


黒髪にグリーンアイ。この顔何処かで


その瞬間一瞬時間が止まったと思う。


時計の針の合わさる音とともに俺は大きく目を開き目を疑う。


何度も見返してもそこに移る顔の人物が知っている人物と同じ顔をしていることに気がつくのにさほど時間はかからなかった。


そうだ、この顔は‥桂遥の顔だと


これが俺一ノ瀬瑠衣と桂遥の苦い出会いの始まりであるのを俺はまだ知らない。



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表の姿が必ずしも正解ではない件について俺は語りたいんだが。 たこざえもん @takomuun

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