第五話 覇王の止まり木

 僕は水に飛び込んだ瞬間から泳ぐのをやめていた。

 

 勿論、溺れるためじゃない。

 

 下手に水の流れに逆らえば体力を消耗する。

 

 重要なのは川の流れに身を任せることだ。

 

 最低限の息継ぎをしながら川を潜り、溺れた少女二人を探し出すのがベストな計画だろう。


 問題は今の子供の身体で二人を抱えて泳ぎ切れるかどうかだが。

 

 エーカという子はともかく、ノアは本当に変わった子だ。

 まさか泳げもしないのに、溺れた人間を助けに行く人間がいるとは思わなかった。


 出会ってからまだ十分も経っていないが、本当に印象的な子だ。

 

 ──さて、彼女たちはどこにいる?


 溺れているなら川の流れ通りに進んでいるはずだ。

 ならばこのまま潜りながら探していく。


「……っ!?」

 

 そして、僕は一分も経たない内に二人を見付けることが出来た。


 だが僕は驚くべき光景を目にする。

 

 水の中、彼女たちは丸い球形としか形容できない空間にいた。

 

 例えるならば直径数メートルのシャボン玉。その中に二人はいる。


 どうやら意識はないようだ。だが、急流に流されることはなくシャボン玉のような空間に留まっているのだ。

 

 ……これはひょっとして?

 

 水中を潜りながら、僕もその空間に到達する。僕の予想が正しければ……。


「──ッ」

 

 ビンゴだ。


 この空間に水はない。空洞になっているのだ。しかもこの場所、呼吸が出来る。

 

 不思議な感覚だ。水はないのに無重力のようなふわふわとした浮遊感が身体を纏っている。


 二人に溺れた様子がないのでもしかしたらと思ったが予想通りだった。

 もしかしてこれが異能の力というものだろうか。

 

 するとこれはノアの力か?

 

 だったら泳げないのにもかかわらず飛び込んだのも納得がいく。

 

 ノアを動かすとシャボン玉もどきの空間も移動する。なるほど彼女を中心にシャボン空間は形成されているらしい。やはりこれはノアの力だ。

 

 となれば、話は早い。


 このままノアを運びながら河岸まで移動するとしよう。



 *****



「つ、着いた……」


 僕は二人の少女を抱えながら河原に到着した。(これも不思議なことにシャボン玉のような空間は水面から出たと同時に消失した)

 

 呼吸が出来る空間だったとはいえ少女二人を運びながら数キロ進むのは重労働だった。


 あのまま急流に逆らいながら二人を救助していたら、きっと助けることは出来なかっただろう。最悪、僕も溺れていた可能性がある。

 

 ぞっとしない話だ。


「ごほっ、ごほっ……」


 栗色のショートカットの少女の意識が戻り、苦しげに水を吐き出す。

 たしかエーカという名前だったか。多少、水を飲んだようだが命の別状はないようだ。


「……あれ、アタイ……どうしてこんなとこに……」


「やあ、気分はどうだい」

 

 背中をさすりながら僕はエーカの体調を伺う。


「ひゃい!? だれっ!?」

 

 エーカが真っ赤になりながら僕から離れた。まあ目覚めた直後に見知らぬ人間が隣にいれば当然か。


「って、そうか、あの時欄干らんかんが崩れて……アタイ、溺れて……」

 

 濡れねずみの僕と自らの姿を見て、次第にエーカの顔に理解の色が浮かぶ。


「……そっか、アタイのこと助けてくれたんだね。ありがとう」


「まあ一応、そういうことになるかな」

 

 ほぼノアの力のおかげだがね。説明すると長くなりそうだから今は黙っておこう。


「おーい、エーカぁ! 溺れた姉ちゃん! 大丈夫かぁ!?」

 

 土手の向こうから二人の少年少女が走ってくるのが見えた。


 さっき橋にいた額に傷のある男の子と丸眼鏡をした女の子だ。


「あ、ガル! アリエッタ!」

 

 エーカが走ってくる二人に嬉しそうに手を振る。


「さて、この寝坊助はいつになったら起きるやら……」


「……うーん、もうそんなに沢山アッティルトは食べれないよぉ……うへへ……」

 

 ノアに視線を向けると、まるで漫画のような寝言をむにゃむにゃと呟いていた。


「……まったく、この子は」

 

 エーカとは違い、水を飲んだということもなさそうだ。健康体。下手をすれば死んでいてもおかしくはなかったのが。

 

 僕はおもむろにノアの鼻と口を塞ぐ。


「……えっと、アンタ、何しているんだい?」

 

 エーカはやや不審そうに僕を見る。


「完全犯罪」

 

 冗談めかして……というか、冗談なのだが僕は言った。


「ふ、ふごぉ!?」

 

 十秒ほど経過し、呼吸の通り道を塞がれたノアは当然のように跳ね起きた。


「あ、あれ、ここどこ!? アッティルトは!?」

 

 起き抜けのせいか、前後の記憶が混乱しているらしい。ノアが不思議そうにきょろきょろと周りを見渡す。


「……って、あれ、そうか、わたしあの時溺れて……」

 

 びしょ濡れ状態の僕とエーカ、そして自分を見て状況を悟ったようだ。


「うひひ、ごめんね。アイくんに助けられちゃったみたいだね」


「は?」


 何を言っているんだと思った。


 さっきのシャボン玉──異能を使って──僕たちを助けてくれたのはノアのおかげだ。


 もしかしてさっきのは無自覚だったのか?

 火事場の馬鹿力というが、生存本能が無意識に異能を使わせたのだろうか。


「ノア、君は……」


「──三人とも無事か!?」


 土手を走っていた額に傷のある少年──ガルと呼ばれた少年が滑るように土手から降りてくる。十秒ほど遅れてアリエッタと呼ばれた丸眼鏡をした少女も到着する。


「このっ馬鹿エーカっ! この人たちが助けてくれなかったら死んでたかもしれないんだぞ!」


 ガルが怒ったような剣幕でエーカに詰め寄っていた。……いや実際怒っているのだろうが。


 エーカがバツの悪そうな顔で頬を掻く。


「……心配させたのは悪かったけど、そんなに怒ることないじゃない。ガルのビビってる顔が面白くてさ、アタイもまさか欄干が崩れるとは思ってなかったし……」


「あんなぁお前さ……」


「ガーちゃん、エーちゃん! 今は喧嘩は良いからお礼! お、れ、い!」

 

 喧嘩というよりも、じゃれあいような雰囲気の中、アリエッタが僕とノアを指して声を上げる。


 三人は幼馴染か何かなのだろう、言い合いする中でも信頼感のようなもの感じられる。


「……って、そうだったな、兄ちゃん姉ちゃん、ずぶ濡れままだと風邪を引いちまうし、とりあえず休めるところに案内するよ」



 *****



 僕たちがガルに連れてこられたのは『覇王の止まり木亭』という名前の建物だった。


 頑強そうな木材で建てられた三階建ての建物で、一階は酒場、二階と三階は宿泊施設を兼ねているらしい。ファンタジーでありがちな酒場兼民宿といったところか。


「……しかし、覇王の止まり木ね。何か逸話でもあるのかい?」


 僕が尋ねるとガルは自慢そうに頷く。


「おうさ! この店は覇王さまがユニゼラルのとうぶしさつの時に必ず立ち寄っていた由緒ある旅亭なんだぜ!」


 とうぶしさつ……東部視察か。たしかにこの店はオルド大橋から数分の距離にあるし、小休止で立ち寄るには絶好の場所だ。……って、そうか、だから『止まり木』なのか。


「……そんなことはいいから早く中に入ろうよ? アタイ、服がずっと中途半端に濡れていて気持ち悪くなってきたよ」


「うーん、そうだねぇ、わたしもちょっと身体が冷えてきたよ」


 エーカの言葉にノアが同意する。


「おっと、悪い悪い、それじゃあ俺の家──覇王の止まり木亭にようこそ!」


 ガルが西部劇に出てくるようなスイングドアを開けて、建物の中に入っていく。


「……この大馬鹿息子っ!」


「んげっ!?」


 ……だが、家の中に入った瞬間、ガルの頭上にゲンコツが飛んできた。

 

 ゲンコツを振り落としたのは三十代中盤の恰幅の良い女性。風貌は、酒場を切り盛りする威勢の良い女将といった感じだ。


「いきなり何すんだよ、母ちゃん!」


 ガルが抗議を上げる。やはりというか、何というか、ゲンコツを振り下ろしたのは彼の母親らしい。


「何すんだじゃないよ、橋にいる露天商の人たちからエーカちゃんが橋から落ちたって聞いたよ。ガル、一体何してんだい!」


「オレは何もしてねぇよ! エーカが勝手に落っこちた──あだぁ!?」


 ガルが反論の言葉を上げるが、またもやゲンコツが振り落とされる。


「馬鹿たれ。女の子が危ない目に合ってる時に助けに行くのは男の役目なのさね。それがなんだい、情けないったらありゃしない」


「ちょ、ちょ、おばさん、悪かったのはアタイだから……」


 流石に見かねたのかエーカが助け舟に入る。


「エーカちゃんは良い子だねぇ。こんな不甲斐ない息子の肩を持つなんて……っと、そうだね、まだアンタたちにお礼を言っていなかったね」


 ガルの母親の視線が僕とノアに向けられる。


「聞いたよ。ウチの不甲斐ない息子に変わってエーカちゃんを助けてくれたんだったね。あたしはこの店の女将のメリドールっていうんだ。……っと、ここで長話するのもなんだね、お風呂を沸かしてあるから入ってきな」

  


 *****



 さて唐突な話だか、文明が発展しているのかを図る指針の一つに入浴文化というモノがある。


 ただの風呂と侮ってはいけない。

 身体が洗えなければ不衛生になる。不衛生になれば引いては疫病が蔓延する。

 

 衛生観念の低さは社会に甚大な被害を発生させる。


 中世ヨーロッパでは窓から糞尿を投げ捨てるのが当然の常識だったという。

 下水施設が整っていなかったせいだ。

 当然路上に糞尿が増えれば、それを餌とするネズミが繁殖し疫病が蔓延する。過密である都市部であればなおさら。中世ヨーロッパで黒死病と呼ばれたペストはネズミを媒介として蔓延したという話だ。

 

 だが風呂、シャワー、水洗トイレが一般的に普及するには高度な上下水道の仕組みが必要になってくる。

 清潔であるということはその社会、文明が高度に発展しているという証左なのだ。


 これまで住んでいたのが貴族の豪邸だったせいでいまいち確信を持てなかったが、この世界の文明基準は僕の世界で測るなら十七世紀、十八世紀ぐらいだろうか。


 もっとも異能という超常の存在があるせいか、どこかチグハグな面もあるが。


 たとえばクロムバッハ家の僕の自室には当然のようにシャワーが備え付けてある。蛇口を回せば温かいお湯が出てくるのだ。


 驚愕した。お湯があるならば熱源が必要なはずだかそれが皆目見当がつかない。ガスではない、薪を燃やしているわけでもない。謎である。


「──はあ、良い湯だ」


 などと考えながら、僕は覇王の止まり木亭の大浴場の湯船に浸かっていた。


 女将であるメリドールに案内された風呂場は大きかった。


 ヒノキのような木で作られた浴槽は二十人は楽に入れるような大きさで、浴槽の対面には鏡が置いてあり蛇口と石鹸が備え付けられている。

 鏡の上には『入浴する前に身体を洗え』という注意書きがある。


 何というか、ほぼ日本の銭湯に近いな。

 

 男女で湯が仕切られているのもそうだし、天井が吹き抜けになっていて向こう側でキャッキャと騒いでいるノアたち女子の声が聞こえる。


 しかし日本にいた頃は自分のことを風呂好きだとも思っていなかったが、久しぶりに大きな風呂に入るとリラックスできるのが分かる。何だろう、日本人的なさがなのだろうか。


「向こうはもう仲良くなっているみたいだね、ガル君」 

 

 一緒に湯船に浸かっていたガルに僕は笑いながら話し掛けた。


「……はぁ、女連中は気楽でいいぜ。この後風呂場を掃除するのはオレの仕事だってのによぉ」


 憂鬱そうにガルがうなだれる。

 そうか、風呂掃除は彼の仕事なのか。


「なぁ兄ちゃんもそう思う……って、そうだっけ、まだ自己紹介してなかったよな」


 ふと気付いた様子でガルが居住まいを正す。(湯船の中でだが)


「オレは名前は……ガルド・キリーク、覇王の止まり木亭の次男坊だ。さっきはオレの仲間を助けれくれて本当にありがとう。……たぶんあのままじゃオレはビビって何も出来なかったと思うから」


 ガルが誠意を込めて頭を下げてくる。

 歳の割にはしっかりした子だ。きっと両親の教育が良いのだろう。


「……僕は別に大したことはしていないよ」

 

 実際そうだ。本人は自覚がないらしいが、エーカを助け出せたのはほぼノアのおかげだ。僕は溺れていた二人が運んだだけ。


「アタイはエーカ・イェニア! よろしくね!」


「……えっと……アリエッタ・フェムシュタット……ですっ!」


 天井の吹き抜けの向こうから二人の少女の声が聞こえてきた。どうやら僕たちの会話が聞こえていたらしい。


「僕は……アインス・トゥルス・クロムバッハ。クロムバッハ家の者だよ。この村には最近来たばかりでね。色々と教えてくれると助かるよ」


「クロムバッハ!?」


 ガルが驚いた様子で口をあんぐりと開ける。


「あの覇王の懐刀のクロムバッハ家だって!? 兄ちゃん、すげぇ家の人間なんだな……いや、なんですね!」


「敬語はいいよ。堅苦しいのは苦手でね。気さく接してくれた方が僕としても嬉しい」


 まして僕は貴族の紛い物だ。貴族様だと祭り上がられてもどう振舞っていいかも分からない。


「分かったよ、アインス兄ちゃん。……へへ、スゲェよな、後で色々と覇王の逸話とか教えてくれよな」


 薄々分かっていたことが、覇王が没した後の今の時代でもあっても、覇王という存在自体は崇敬の対象となっているらしい。


 まあ世界を統一した英雄だろうしな。当然といえば当然か。日本だって信長、秀吉、家康は人気のある歴史の人物だ。



*****



「ノア?」


 風呂から上がった後、酒場兼食堂の広間に戻ろうと廊下を歩いているとノアに出会でくわした。

 ちなみに少年少女トリオは風呂掃除のため大浴場に残っている。(ガルに一人で掃除させるのが不憫だと思ったのかエーカとアリエッタが手伝うと申告したのだ)


 ノアは何故だか廊下の真ん中に立っていて、何かを見上げていた。

 彼女の視線を追うと、壁に掛かった一枚の絵画を見ている。


「これは……」


 壁に掛かった絵は人物画だった。

 白髪で威厳のある人物が、賢者のような面持ちで椅子に座っている絵だった。


 絵の題名は『覇王の止まり木』だった。

 僕は理解した。


「……そうか、この人が覇王なのか」


 おそらくは、この旅亭の名前の元となった絵画なのだろう。

 まあ実際の本人と比べてどこまで精巧に似せてあるのかは分からないが。


 相手は当時の世界一の権力者なのだから、デッサンのモデルみたいに何十分も静止してもらって描いたわけではないだろうし。

 

 ちなみに僕が見ていた書物にも覇王の姿が描かれている物はなかったから、覇王に関する人物絵は初めて見る。


「…………」


 ノアは不思議な表情で絵画を見続けていた。


 なんだろう、憧れの野球選手を見るような目付き、あるいは険しい山脈に挑戦しようする登山家の目付き、その両方がごちゃまぜになっているような気がする。


「……あ、アイくん。ううん、何でもないよ。覇王様の絵を初めて見たからちょっと気になっただけ」


 僕に気付いたノアが苦笑する。


「そういえば初めて会った時に聞こうと思っていたんだけど、君はクロムバッハ家の関係者なのかい?」


「……うぐ」


 ノアの表情が気まずそうものに変わる。なんというか手付かずの夏休みの宿題を指摘された学生のようだ。


「そ、そういえばさっきメリドールさんに会ったんだけど、お礼にアッティルトをご馳走してくれるんだって。ほらアイ君いこいこ」


 ……露骨に誤魔化そうとしているな。

 僕は強引なノアに手を引かれて廊下を移動する。


「お、出てきたね。ウチの自慢の風呂はどうだったい?」


 食堂兼酒場の広間に戻ると掃除をしていたメリドールが僕たちを迎えてくれた。

 

「ありがとうございます。良い湯でした、あんな大きなお風呂には初めて入りましたよ」


 僕が褒めるとメリドールが嬉しそうに笑う。僕としても半分ぐらいは世辞が入っているが、こんなファンタジーな世界であんな大きな浴場に遭遇するとは思っていなかった。


「あはは、クロムバッハ家の御曹司様にお褒めの言葉を貰えるなんて光栄さね」


「え?」


 なんで僕の素性を知っているのだろうと思ったが、その疑問はすぐに氷解した。

 広間の奥側、酒場のカウンターに座っている人物を見て。

 

「ネフェラ?」


「……ぴゃい!?」


 隣にいたノアが素っ頓狂な声を上げる。……ぴゃいってなんだ。

 そこにいたのネフェラだった。僕のよく知っているクロムバッハ家の侍女。

 

「ごきげんようでございます、お坊ちゃま」

 

 ネフェラは僕たちに気付くとカウンターからこちらにやってきて挨拶する。


 ネフェラの腕には肉や野菜が詰まった買い物袋がある。って、そうか、食料品の買い出しはこの覇王の止まり木亭でしていたのか。


 ちなみにノアは何故だかカカシみたいにずっと直立不動だ。


「……おやおや、不思議ことに見知った顔がございますね。はてさて当家の見習い侍女がなぜこのようなところにいるのでございましょう」


 ネフェラの鋭い視線がノアを貫いている。

 ノアは顔から汗をだらだらと流している。 


「事前の連絡、使い魔の手紙によると、貴方が到着するのは遅くても一週間ほど前だったはずですが……」


「……いや、その、それは侍女長の課題が難しくて……」


 静かに詰問するネフェラに終始目が泳いているノア。


「ほほう、『こんな課題お茶の子さいさいですよ、侍女長。出来なきゃ冬の一時金ボーナス無しでいいもんね!』と申し上げていたのはどこのどなたでございましょうか」


「……ちょ、侍女長、簡単とはいったけど一時金ボーナス無しなんて……あ、うん、どうだろ調子こいたかも……」


「はぁ……ともあれ、詳しい言い訳はお屋敷で聞きましょう」


「あだだ! ちょ、ちょっと、侍女長! 耳引っ張らないで! ……っていうか、わたしアッティルトまだ食べてないのに!」


 ネフェラがノアの耳を引っ張り外に連れ出す。 


「それではお坊ちゃま、昼食までにはお戻りになられますように」


「……あ、うん、分かった」


 去り際にネフェラがそう言いながら、まるで嵐のように消え去っていた。

 

 やはりというか、なんというかノアはクロムバッハ家の関係者……というか見習いの侍女だったらしい。

 

 何が原因かは知らないがこってり絞られることだろう。

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