第24話 秘密がばれた日

「お、もう結果が配られたんだ」


 健司は会議から職場に戻ってくると、同僚が見ている書類を見て言った。


「そうなんだよ、結構ヤバいんだよね」

「あはは、まぁしかたないよな」


 健司も、ヤバいことは自覚している。しかし、あまり気にしていなかった。

 この時点までは。


「あれ?」

 健司は自分のデスクの上を見て不思議に思った。

「ん?どうした?」

 同僚が聞く。

「なんか、俺にはまだ配られていないみたいなんだ」

「あぁ、知らなかったのか?」

「え?」



「うちの会社、結婚したら健康診断の結果は自宅に送付されるんだ。家族に見てもらうために」


「ええ!?ほんとに!?」

「そうだよ、知らなかったんだ」

 そういえば、以前に聞いた記憶がある。


 健司は、そのあと仕事に集中できなかった。

 その日は、珍しく残業を早めに切り上げて会社を出た。


 なんとか、美月より先に帰れますように…


 しかし、残念ながら美月の会社の方が終業時間が早いのだ。

 自宅に近づくと、部屋の明かりがついているのが見える。


「ただいま…」

「健司さん、お帰りなさい!今日は早いんですね」

 ニコニコと美月が迎えてくれる。

「今日は早く終わってね」

 そういう健司の背中を冷汗が伝っている。

 この様子だと、まだ届いていないのだろうか。



 だが、リビングのテーブルを見るとその希望は断たれた。

 テーブルの上に大きな封筒。表面に「ご家族の方へ」「健康診断結果在中」と大きく赤文字で書かれている。開封した後のようだ。


”ご家族の方へ、なんて書かなくていいのに…”

 そう思う健司に、美月が話しかけてきた。


「健司さん、この封筒に”ご家族の方に”って書いてあったので開けて見てしまいましたけど」

「あ・・・あぁ、結婚したら自宅に送られるんだ…」


 嫌な予感しかしない。


「この結果なんですけど、γ-GTPと中性脂肪が多いですよ、かなり」

 美月は健康診断の結果を見せてきた。


「あはは…年齢的なものかな?」

「所感には、お酒の飲みすぎには注意ってかいてあります!」

 あ、これは結構怒っているな…


「私、嫌ですからね。健司さんが先に死んで、一人寂しく生きていくなんて」


 そう言われると身もふたもない。

 美月は続けて言った。

「やっぱり休肝日って必要だと思うんです!あとは飲む量とか!」


 やっぱりそうなるよね…

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