第25話 メイク

「私ね、本当はこういう風にメイクとかの仕事もしたかったんだ。だから、学校でも勉強してきたし、その後も練習してたんだ」

「そうだったんだ、メイクの仕事も得意そうだもんね」

「そうかな、今度店長と相談してみようかな。チェーン店にメイクの店もあるんだよ」

「いいじゃない、ミキちゃんならうまくよ」

「そしてね、美月の結婚式のメイクをやるのは私だって決めてたんだから」

「……ありがとう、ミキちゃん」


 今は、美樹の部屋で美月の結婚式のメイクのリハーサル中。

 ヘアアレンジまでしている。


「それにしてもねぇ、美月がほんとに結婚するとはね~」

「もう入籍したから、過去形なんだけどね」

「いやいや、結婚式が本当のイベントでしょ」

「そうなのかなぁ」


 アイラインを書いてもらい、チークを入れてもらう。


「やっぱりね、ウェディングドレスは女の子はあこがれるものよ」

「そ……そうなんだ」

 

 美月は自分のドレスはいい加減に即決してしまっていた。

 あまり、あこがれはなかったのである。


 仕上げにしてもらう、ピンクのリップ。パール入りでキラキラと光っている。


「さぁ、完成よ。どう?」

「うわぁ…」


 ミキの部屋で見るメイク。

 普段の服装をしていると派手に見える。


「ちょっと派手に見えるかもしれないけれど。これは、ウェディングドレスを着て、明るい部屋で見るとちょうどいいのよ」

「へえ・・・」


 普段見慣れない化粧。まるで、自分ではないみたいだ・


「ほら、こんな風にね」

 ミキが白いシーツを持ってきて、美月の体を覆う。


「なるほど、こんなイメージになるんだ」

 美月は、改めて結婚式をやる実感が出てきた。


「ミキちゃん。ありがとう…」

「まだ、リハーサルよ。本番はもっと気合入れてメイクするからね!!」

「うん」


 美月の目から涙が出てきた。


 自分がこうやって結婚できたのも、全てミキのおかげである。ミキがいなかったら、自分はどうなっていたことか。


「ほら…泣かないの。メイクが落ちちゃうよ」


 ミキは涙を流す美月の肩を抱いて頭をなでる。


「ミキちゃん……本当に…ありがと…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る