第10話 結婚の先輩

 婚姻届けの証人。

 一人目は、美月の親友の高橋ミキに依頼した。

 美月は、実家で高橋ミキから署名をもらってきた。


 その間、健司は知ったが・・・


 美月は高橋ミキに尋問されて、健司のプロポーズの場所・言葉などすべてを白状していたらしい。

 しかも、その場所は常連になっている店である”いい天気”であった。

 つまり、その店の常連たちに健司のプロポーズのすべてがばれてしまっているということ。


 ううむ、しばらくあの店には行けないな・・


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 そして、今日は証人を依頼したもう一人の家にお邪魔している。

 もちろん、健司と美月の二人でだ。


「いらっしゃい、よく来てくれたね」

 先輩が奥さんと一緒に迎えてくれた。

「先輩、お願いしてしまって申し訳ありません」

「いやいや、早乙女君の頼みだったら歓迎だよ。おめでたいことだしね」

 部屋に案内されて、改めて挨拶する。

「改めて、この度結婚することになった瀬戸美月です」

「瀬戸美月です。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします。おめでとうございます」


 早速、署名と捺印をしてくれた。


「ありがとうございます。助かりました」

「いやいや、全然問題ないよ」

 すると、美月も話す。

「マンションも貸していただいて、ありがとうございます。とても素晴らしいところなので喜んでいます」

「いやいや、こちらこそ借りてもらって助かっているんですよ」


「それで、結婚式とかどうする予定なんだ?」

「そうですね、家族だけやろうかと話しているんです」

「なるほどね。うちは結婚式をやらなかったけど身内だけでやるのもいいかもね」


「そうなんですか。結婚してどれくらいなんですか?」

「まだ1年なので、うちも新婚なんですよ」

 美月の質問に、奥さんが答える。

「え、そうなんですか?」

 先輩は健司よりも年上の50代。奥さんは若くて、まだ30代前半らしい。

 我々以上に年が離れている。

 しかも、新婚。

 我々と状況が似ている。


 その後、健司と先輩はお互いの近況について話をした。


 それとは別に、美月と奥さんは談笑していた。


「年が離れていて、不安はなかったんですか?」

「いえいえ、それは全然なかったわね。むしろ年が離れているといいこともあるわよ」

「いいことですか?」

「そうそう、今って60歳で定年してから年金が出るまで5年あるでしょう?年が離れていると、その間に片方が働いて収入あるって大きいわよ」

「なるほど、そうかもしれませんね」

「うちの場合、もし子供ができた時にも旦那さんが定年後に子育てしてもらえるでしょうしね」

「な・・・なるほど」


 そう答えてみたものの、美月は自分に子供ができるということを全く考えたことはなかった。

 その後も、結婚生活のこと。家事のこと。いろいろ話した。


 やがて、そろそろ帰ろうとしているときに美月が先輩夫婦に言った。


「あの・・結婚式は身内だけでやる予定なんですが、親しい友人にも参加してもらおうと思っているんです。もしよかったら参加してもらえませんか?」

「いいんですか?」


 健司も、先輩夫婦に参加してもらうことを考えてはいた。美月から言うとは思っていなかったが。

 健司も言った。

「ええ。まだ日程は決まっていないんですが、ぜひお願いいたします」

「わかった、ぜひ参加させてもらうよ」


 先輩は笑顔で快諾してくれた。



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 これで、結婚式に出席する人がほぼ決定した。

 家族と、美月の親友の高橋ミキ。それと先輩夫婦。

 こじんまりとした式になる予定。


 でも、結婚式ってどこにお願いすればいいんだ・・・


 まずは聞きにいかないといけないな。


 でも、その前に・・・

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