第9話 けんさく・けんさく~

 少し前。十年くらい前であろうか。若者は分からないことがあるとすぐに検索して自分では考えないと言われたものだ。

 以前そう言って、若者をバカにしていた年寄りもみんなスマホを使っている。わからないことがあればすぐに検索する。

 本で調べるよりも早いからね。


 美月と健司も例にもれず、婚姻届けについて検索をした。便利な世の中になったものである。


「証人って、両親でもいいらしいですよ。お互いの父親にする場合が多いそうです。あとは親しい友人とからしいですよ」


 ほんと便利になったものだ。

 そうか、親でもいいんだ。


「あと、印鑑証明とはいらないみたいですね。印鑑は何でもいいみたいですよ。」


 なるほど、保証人とは違うようだ。


「じゃあ、証人は誰にお願いしましょうか?お互いの父親にしますか?」

 おそらく、それならば問題なくすぐに書いてもらえるだろう。


「あの・・私はミキちゃんにお願いしてみようかと思います」


 美月は親友の名前を挙げた。

 なんとなく気持ちはわかる。


 美月は、親友の高橋ミキのことをかなり信頼している。

 その親友にお願いしたいのだろう。


「そうですか・・じゃあ私も親よりは友人のほうが良いですね・・」

「誰かいるでしょうか?」


 一人思い当たる相手がいる。

 友人というよりは先輩。かなりお世話になっている相手である。


「以前、会社にいた先輩にお願いしようかと思います。かなりお世話になっている人で、このマンションの部屋の大家さんでもある人ですよ」

「あ・・・なるほど。たしか、この部屋は先輩に借りたって言ってましたね」



 思い立ったら、すぐに行動。先輩に電話した。

 結婚しようと思っていること、承認をお願いしたいということを告げる。

 そしたら、二つ返事でOKしてもらえた。


「大丈夫だそうです」

「それはよかったです」

 ほっとした顔をする美月。

「それで、今度書類を持って訪問しようと思うんですが・・一緒に行きませんか?」

「あ・・そうですよね。一緒に行ったほうが良いですね」

 夫婦そろってって言ったほうが良いだろう。この部屋を借りている身分でもあるしね。

「いいですよ、一緒に行きましょう」

「先輩も新婚ですから、参考になる話が聞けるかもしれないですよ」

「へぇ、そうなんですか」


「ところで、ミキちゃんにもお願いしたほうが良いんじゃないですか?」

「あ・・そうですね!」


 おそらく、高橋ミキならば断われることはないと思っている。


 しばらく、電話で美月は話している。

 なにやら長く話し合っている。なんだろう・・?


 電話を切って、ため息をつく美月。


 あれ?


「どうしたの?まさか、断られた?」

「いえ、証人の件はOKだということなんですが・・・」


 では何だろう?


「二人で書類を持って会いに行こうと言ったら、私の実家で女子会をやるって言いだして・・・・ミキちゃんとうちの母と妹で・・・」


 はい?

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