俺の、そして俺たちの物語は、まだ始まったばかりだ。

 主人公は高校に入り、部活選びに悩んでいた。そこで、部活の勧誘を受けたのがe‐sports部だった。しかし入部試験に行われたゲーム内のサバイバルで、主人公は不甲斐ない結果しか残せなかった。しかし主人公は、同級生にバトミントン部に誘われ、「誰でもいいから入部してくれないかな」という言葉に、ハッとする。「誰でもいいわけじゃない。俺だからできることがしたい」と、主人公は再びe‐sports部の門を叩く。そしてゲーム内にいたある人物とフレンドになり、密かに鍛錬を積んでいた。しかしそのフレンドは善意から主人公を鍛えていたわけではなく、主人公から全てを奪うために悪意を持って近づいていた。
 そんな中、e‐sportsの大会が行われることになった。e‐sports部の目標はもちろん優勝することだ。序盤の段階で部活の三人の先輩がクリアしていく中で、主人公だけが迷宮に残された。心配する先輩たちが見守る中、主人公は大きな進歩を遂げいていた。そして主人公は、その戦いで他人の人生までも変えていく。
 これはただのサバイバルゲームではない。e‐sportsを通じた人間関係を描いた青春小説であり、主人公の成長物語だ。
 
 e‐sportsものを書くときに、誰もがキャラクター設定に悩むところだが、この作品では、現実の先輩たちと主人公がゲームの中でもきちんと書き分けられていて、それぞれを見失うことがありませんでした。例えば優し気な先輩なのに激辛マニア。唯一の女子の先輩は超酸っぱいのが好き。厳しい先輩なのに激甘党、という風に、正確と好みが少しずつずれていて、面白かったです。この三人の先輩はゲームの中ではそれぞれのプレイスタイルに応じた武器を使い、戦法も違います。

 e‐sportsが好きな方も、今まで興味がなかった方も、この作品で是非触れてみてはいかがでしょうか。きっと、心打たれこと間違いなしです。

 ちなみに、これは一章分のレヴューになります。たった一章でこの内容が詰まっていることにも驚きで、作者様の筆力の高さが伺えます。

 是非、御一読下さい。

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