第3話 おまかせで

「はい、かしこまりました」


 おまかせで、なんて初めて言った。他人に自分の何かを決めてもらうのが、めちゃめちゃ苦手な私が。数分後、一体私はどんな頭になっているのだろう。

 チョキチョキ、チョキチョキ。

 ドキドキ、ドキドキ。




「あっ……」


 しばらくして目を開けると、これまでに見たことがなかった自分の姿があった。


「いかがですか?」

「……店員さんは、こういうのが好きなんですよね?」

「あ、はい!」

「そうですか……」


 私は気持ちが押さえられず、後ろを振り向いた。


「ありがとうございます!」


 良かった。カット前に勇気を出して、お願いして正解だった。


「おまかせで。店員さんの好きな髪型にしてください」


 あなたが好きな人間に、少しは近づけたでしょうか。

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美容室物語 卯野ましろ @unm46

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