第15話 [二人っきりの図書室②酔った文乃]
とりあえず誤解を解き、真雪ちゃんに落ち着いてもらった。
「さっきは取り乱しちゃってごめん!」
「うん……大丈夫、問題ない……」
嘘である。結構疲れたし、多分今げっそりとしていると思うよ。
「あ!そういえばまだお菓子あるの忘れてた!」
「え?まだあるの?」
真雪ちゃんはカウンターの下にある引き出しを開けたかと思ったら、カモフラージュ冷蔵庫だった。
そしてそこから高級そうな箱を取り出していた。
「ここ図書室だよね……?」
「うん?何言ってるの?そうだよ?」
「そう……そっか!」
百合園は思考を放棄した。
「でね!これ僕のお母さんの友達からもらったらしいんだけどお母さん甘いもの苦手だから私にくれたんだ〜」
「ほぇ〜、高級そうなチョコだね」
真雪ちゃんが蓋を開けるとそこには様々な柄のチョコがあった。
「フミちゃんにあげます!」
「うーん……興味あるけどお菓子食べ過ぎると太っちゃうし……ゔーん!」
さっきカステラ食べたし……でもこのチョコ美味しそうだし……。
「フミちゃん、太りやすいチョコは糖分が多いチョコ。だけどこれは高級チョコ……つまりビターチョコ……」
「はっ!糖分が……少ない……!?」
「正解」
指パッチンをして私に指をさしてきた。
真雪ちゃん…なんて気がきく子なんだ!
「でもいいの?高級チョコ食べて」
「いいの!僕だけじゃ食べきれそうになかったし!」
「ありがたやぁ、ありがたやぁ」
真雪ちゃんのが光って見えるよ……。
ついつい両手を合わせて拝んでしまったよ。
「では、いただきます!」
チョコを一つもらい口へ放り込んだ。
「んー……んっ!これお酒入ってる」
「え、ほんと?フミちゃん無理だった?」
「いいや、初めて食べたけど結構美味しいね」
美味しいけど一瞬で全身がポカポカと暖かくなるのを感じた。
「あー、ほんとだー!前にいっぱいお酒入りのチョコ食べけど僕は全然大丈夫だったな〜」
私はもう一つ、さらにもう一つとチョコを口の中へと放り込んだ。
「フミちゃん、そんなに一気に食べて大丈夫?」
黙々とチョコを放り込む百合園の姿を見て真雪は少し心配そうに顔をしていた。
そして次の瞬間、百合園が前へ倒れてそのまま額をカウンターにぶつけてしまった。
「ふ、フミちゃん!?」
いきなり倒れた百合園を目撃してあたふたとしていたが、むくりと元の体制に戻った。
「フミちゃん……!?だ、大丈夫なの!?」
百合園の顔を見てみると、半目でぼーっとし、顔が真っ赤な百合園がいた。
その姿に真雪は少しドキッとしていた。
「ん〜美味し〜!」
両手を頰に当てて満面の笑みを浮かべながらそう言っていた。
「フミちゃんもしかして酔ってる……?」
「なんだとぅ?私は〜酔ってないぞー!ポカポカして…ゆらゆらしてたのしぃ」
「酔ってるね」
両手を上に挙げてそう叫んで否定していたが言動が完全に酔っている人であった。
そしてさらにチョコを口へ放り込んだ。
「あぇだよ、風邪風邪!えへへ!」
「かっ、可愛い……じゃなくて!もうお菓子ダメだよ!」
「えー!なんでぇー?風邪だからー?」
「そ、そうそう!」
“もっと酔った姿を見て見たい”と思っていた真雪だが、流石にこれは食べ過ぎだと思ってチョコを取り上げた。
「じゃあ体温測ろ〜?おでこでゴッツンコするやつ」
「えっ———」
百合園が真雪の腕をぐいっと引っ張った。
「ほんとだぁ、あつーい」
「あ、あわ、あわわ……」
額をくっつけず、百合園は真雪に抱きつきながら頰をくっつけ、そのままスリスリしていた。
真雪の顔は百合園と同様にみるみる赤くなっていった。
「真雪ちゃん顔真っ赤〜!そんなに恥ずかしぃのぉ?」
「そ、そりゃ……」
百合園はニヤリと笑い、真雪の唇に人差し指を当ててこんなことを言った。
「じゃあ…もっとすごいことしたらどうなっちゃうかな〜?」
「へっ!?」
小悪魔。
百合園は真雪の真っ赤に染まる顔を見て楽しんでいる顔をしており、まさしく小悪魔という感じでった。
そして顔をどんどんと近づけていった。
「え、そ、僕………ん!」
真雪はぐるぐると目を回していたが、ついに覚悟を決めたかのように目を閉じた。
「———すー……すー……」
だがドサッと、真雪の胸に百合園はダイブし、そのまま眠りへとついた。
(び……びっくりしたぁぁぁ!!いきなりすぎて完全にペースを乗っ取られてしまった……)
顔を真っ赤にし、心臓はばくばくと鳴っている。
真雪は自分のペースを崩されて押されて押されまくると思考が鈍ってしまうようだった。
一方その頃、図書室の外の廊下で。
(((百合園さんはお酒に弱い!そして真雪さんは押しに弱い!)))
百合園
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【百合園FCメモ】
・百合園さんはお酒に弱い。
・酔うとSっぽくなる。
・可愛い。
・真雪さんは押しに弱い。
メモ、ヨシ!
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