第14話 [二人っきりの図書室①]




 校舎裏から図書室までやってきた。


 図書室に入ったのだが、中には全く人がおらず、カウンターに真雪ちゃんが座っているだけであった。



「あ!フミちゃん来てくれたんだー!!」



 図書室内とは思えないほどの大声で私に向かって話しかけ、手をブンブンと振っていた。



「真雪ちゃん……一応ここ図書室だよ?」


「え?別にいいんだよ、ほとんど誰もこないし!」



 そういうとカウンターの下に入り、ごそごそと何かを取り出して上へ置いた。



「真雪ちゃんは紅茶がいい?それとも緑茶?コーヒーもあるよ!」


「待て待て待て!なんでコーヒーやら緑茶があるの!?」



 取り出していたのは湯沸かし器とティーパック。



「だって読書には飲み物が必要なのだよ!」



 鼻歌を歌いながらペットボトルの水を湯沸かし器に入れ、スイッチを押して湯を沸かし始めた。



「だからと言って図書室に持ち込んでいいの……?」


「先生から許可出たんだ!」


「おい先生、ザルすぎやしないか?」



 はたして図書室で湯を沸かして飲み物を飲んでもいいのか?

 真雪ちゃんを信頼しているからとか?



「ほらほら、真雪ちゃんも座って!」



 カウンターの中にもう一つ椅子があり、その椅子をポンポンと叩いて私をそちらへ呼んでいた。



「まあ……いっか。んじゃお言葉に甘えて。私は紅茶で」



 真雪ちゃんの隣に座り、バッグを床へ置いた。


 この図書室はあまり大きくなく、少し薄暗い。だから人があまり来ないらしい。

 まあそのおかげでお茶できるらしい。


 果たして喜んでいいのだろうか?いや、喜んでいいだろう。


 ※百合園は六時間目に古典の授業を受けていました。



「フミちゃん、こんなのもあるよ〜」



 取り出したのはカステラだった。

 いや、カステラと皿とフォークだった。



「えぇ……ここ図書室だよね?」


「うん?そうだよ?」



 まあ気にしたら負けだ。何も言うまい。


 私は差し出されたカステラを食べ始めた。



「ん……美味しい……!」


「本当!?よかった〜、これ僕が作ったんだ!」



 真雪ちゃんは胸を張ってドヤ顔をしていた。



「いや、本当にすごいし美味しい。毎日食べても飽きないかも……」


「ぇ」



 私がカステラをモリモリと食べていたが、真雪ちゃんがピシッと固まってしまった。



「ん?どしたの?」



 固まってこちらを凝視している真雪ちゃんの顔の前に私の手をフリフリとしているとハッとして動き出した。



「ふ、フミちゃん大胆だよ……僕もまだ心の準備ができていなかったのに……」



 気がついたと思ったら急に頰を赤らめながらくねくねと動き出した。


 なんだ?なんのこと———あっ、しまった。

 “毎日食べたい”とかいうベタベタなプロポーズ的なことを言ってしまったァァ!!



「えへへ〜!仕方ないなぁ、僕でよかったらカステラでもなんでも作ってあげるよ〜!!」


「言っておくけど、さっきのプロポーズじゃないからね?」


「そ……そんな……」



 幸せそうな顔は一瞬で変わり、絶望したような表情をしていた。



「フミちゃんは僕の心を弄んで……」


「弄んでないって!」



 あー、だめだ。なんか真雪ちゃんが暗い顔しながらブツブツと言ってる。

 仕方ないなぁ……。



「ほら、元気出してよ。今まで食べたカステラの中で一番美味しかったから」


「ほ、ほんと…?」



 真雪ちゃんがこちらを向いた。ちょっと顔に生気が戻っていた。



「ほんとほんと!もっと色んな真雪ちゃんの(作ったお菓子)食べたいよ」


「そそそそそれはどういった意味で!?!?」



 無理に笑顔を作ったせいで不敵な笑みになってしまった。

 だが真雪ちゃんの様子がおかしいぞ?



「い、色んな僕を…た、食べたい……?」


「………ハッ!?語弊だ語弊!!色んなお菓子を食べたいの!!」



 慌てて訂正しようとしたのだが聞く耳持たずという状態だった。



「えへ、えへへぇ〜」



 顔を赤くし、手で頰を押さえながら“キャー!”と、歓喜の悲鳴をあげていた。


 語弊だって……。

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