第11話 [敏感系主人公]




「行ってきまーす」


「行ってらっしゃい〜」



 朝。

 まだ休日ではないので学校へ向かっていた。



「姉貴おはよーございまーす!!」


「おはよう、華織。朝から元気だな……」



 馬鹿でかい声で私に挨拶して来たので耳がキーンとなってしまった。



「そういえば小説読んでくれた?」


「えっ!?あっ……えーっとですねぇ…」



 華織はなぜかおどおどとしていた。


 まさか読んでいないのだろうか……。



〜〜



 ———昨夜、華織宅。



「今日は楽しかった〜!」



 華織は百合園と同様に帰宅して自分の部屋のベッドにダイブしていた。



「姉貴が勧めてくれた小説読まないと……でもその前に!」



 華織はスマホをポケットから取り出し、今日撮った写真を見始めていた。


 それは百合園がゴスロリ服を着ている写真であった。



「むはーー!!姉貴可愛いぃぃ!!」



 ベッドの上でゴロゴロと何回転も転がり、悶えていた。



「スマホに保存しておくだけじゃ不安だ……別のスマホにも移すか……?いや、電子に任せるのは不安だ!印刷機を所望するっ!!」



 と、このように華織は昨日、百合園の写真をありとあらゆる方法で保管しておくために奮闘していた。



〜〜



(姉貴の写真をいろんな方法で保存してたなんて言えねー……)


「あ、あれですよ……ちょっと読んだんですけど寝ちゃいまして……」


「ふーん?じゃあ一番最初はどんな感じだったか覚えてる?」



 私は焦っている華織に対し、さらに追い詰めるような言葉を放った。



「え…えーっと、あれですよね、その……地球が滅亡したりして……」


「全然違う」



 ……なんだか華織が昨日何してたかわかった気がしたな……。

 私の写真昨日めちゃくちゃ撮られたからそれを……。


 言おうとしたのだが、別にそこまで追い詰めたくはないので言葉にするのをやめた。



「写真より現実の方が良くない?」


「はいっ!それはもちろん———……って、な、なんで……」



 はっきりとは言わず、少しぼやかして言ってみたのだけれど気づいたようだ。

 顔を真っ青にしてこちらを見ていた。


 ふはははは、そこいらの鈍感系ではないのだよ、私は。

 エスパーにもなれるかな?


 そんなことを思いながら学校へと向かった。



〜〜



「おはよう、フミちゃん!」


「おはよう、真雪ちゃん」



 教室へ向かっている最中、真雪ちゃんにばったり会った。


 真雪ちゃんは目が合うとこちらに駆けつけて私に抱きついて来た。

 私より少し背が低いので私の胸に顔をうずめ、私のお腹あたりに真雪ちゃんの胸が当たっている状況であった。



「……あれ?華織さんはなんだか元気がないんだね。引っ剥がされるかと思ったのに」



 真雪ちゃんは私に抱きつきながら華織の方へ顔を向けていた。



「……っ!ぅぅ……」



 真雪ちゃんにガンを飛ばしているが、私が怒っていると思っているのか、先程からかなり大人しくなっている。



「華織」


「は、はひ!なんでしようか!!」



 華織はシュバッ!と曲がり角に隠れ、顔だけこちらに覗かせていた。



「別に怒ってないから。ね?」



 優しい笑みを浮かべながらそう言った。



「姉貴……!」


「でもあれは流石に少し恥ずかしかったからもうやるなよ…」



 私はプイッと華織から視線を外した。


 だって想像してみてよ。普段全く着ない超派手な服をパシャパシャ撮られるんだよ?

 恥ずかったぁ……。



(フミちゃん顔が少し赤くなってる……。何したんだ……華織さん……!)



 顔が緩みきっている華織を睨みつける真雪であった。

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