第12話 [いじめ・・・?]




「じゃあここテストに出るから覚えとけよー」



 授業中、先生からそんなことを言われることがあるだろう。

 私は今現在言われている真っ最中だ。

 ちなみに私はその“テストに出る”ところを絶対に覚える。


 点数を取るためではない、その逆だ。点数を下げるためにそれを覚えている。


 中学生の時、それなりに勉強をして、それなりにテストを受けたら満点を取ったことがあった。


 ただし地味に生きると決めたからには点数を平均にしなければならないのだ……ッ!!


 地味に生きるって大変だなぁ……。



 ———キーンコーンカーンコーン



 チャイムが鳴り、授業が終わった。

 今の授業は六時間目だったのでもう今日の授業はおしまい。



「姉貴!今日は先に帰ります!」


「おー、そりゃまたどうして?」



 華織が私の席までやってきて敬礼をしていた。



「いや〜今日こそは小説を読もうと思いましてね」


「そっかそっか、やっぱり昨日は読んでいなかったと」



 私はニコニコとした表情で華織に話しかけた。

 華織はサーっと顔色が悪くなっていった。



「墓穴掘ったァァァァ!!」


「また明日ねー……」



 そのままダッシュして教室を出ていった華織を私は手を振って見送った。


 私もバッグに教科書を詰め込み、教室を出ようと席を立とうとすると一人の女子に話しかけられた。



「ねぇ……ちょっとあとで校舎裏きなさい」



 昨日私に向かって舌打ちしたクラスメイトだった。



「……いいけど」


「そ、ならいいわ」



 うーん……やはりこうなってしまったか。まあだいたい予想はできていたけれど。


 さっきの子はよく華織と一緒にいたから私の存在をあまりよく思っていないのだろう。



「フミちゃーーん!今日も図書委員あるんだけどきてくれないかな!?」



 教室の扉を勢いよく開け、私の元に真雪ちゃんが走ってやってきた。

 尚、真雪ちゃんが持っている二つの爆弾はブラジャーごと縦に揺れていた。



「今日はいけるよ。だけどちょ〜っと用事あるから……待っててね」



 私は真雪ちゃんの頭をポンポンとしながら言った。


 百合園は気づいていなかったが、真雪の顔はみるみる赤く染まっていた。



「う、うん……待ってる、ずっと待ってるから!!」


「うぇ?お、おう……」



 そんなにも強く返答されるとは思っておらず、驚いて変な声が出てしまった。


 私は教室を出て、言われた校舎裏まで向かった。



〜〜



「来たのね」


「そりゃ、まあね」



 校舎裏までやって来たが、いつのまにか周りには数人の女子がおり、囲まれている状況になっていた。


 逃がさないという強い意志を感じるな。まあ私は逃げも隠れもせず、ただ真正面から迎え撃つ…!



「単刀直入に言うけどさぁ……」



 昨日舌打ちした女子がそう言うと、周りの女子たちの雰囲気も変わった気がした。

 おそらく次、動くだろう。


 大人しくいじめを受けたり、ボコられたほうが後々面倒ごとが増えないと思うが、そんなの私じゃない。


 個性アイデンティティの損失は未来の損失。自分が望まない未来なんてそんなの自分の未来なんて呼ばない!

 どれだけ苦しめられたっていじめられたって構わない。私は私を貫き通す!

 個性のないつまらない人間にはなりたくないから!



 次の瞬間周りにいた女子たちが一斉に動いた。



「っ!」



 私は身構え、攻撃に備えた。



「「「「「百合園さんのファンクラブを作らせてください!」」」」」



 女子たち全員が腰を九十度曲げ、右腕を差し出して来ていた。



「———……ふぇ?」



 私は予想外すぎてまたも変や声で驚いてしまった。

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