第33話 邂逅

ちょっと短いです。書き直すかも。

◇◇◇◇


「はらへったー!めしー」


 2分おきに田中が文句を言う。

 よたよたと歩く男二人。


 現在は大きな岩に囲まれた岩山の間を縫う道を進んでいる。

 正直、移動スピードが上がらない。

 藤島さんはイライラしてきている。


「なんか食べるものー」

「うるさい!黙ってチャッチャと歩きなさい!」

「だって、腹減って力が出ないんだ」

 声も弱々しい。

「いい加減、早く国境に行かないと…」


 その時、大きな声がした。


「国境がどうしたのでありますかな?」


 20メートルほど先の岩陰から、ヒッチ隊長が姿を現した。

 同時に、ヒッチ隊長の背後に数十人の兵士たちが現れる。


 全員、剣をすでに抜き放っている。


「怪しいと思ったら、国境を抜ける気だったか。シャイン王国に寝返るつもりのようですな。

 やはり、異世界人は信用ならん!」


「ちょ!ちょっと待ってください。誤解です!誤解なんです!」

 田中が言う。

「問答無用!抵抗すれば殺す!

 いや、ぜひ抵抗してもらいたい!」

「そんな無茶苦茶な……投降します!投降しますからちょっと待ってください!

!」


 そして、ひそひそ声で相談してきた。

”おい、ここいったん捕まるしかないぜ”

”そうだね、抵抗できるわけもないし…逃げる元気もないよ”


 そう言った吉岡の目に飛び込んできたのは。

 田中の背後から、木でできた杖を大きく振りかぶって後頭部に振り下ろそうとする藤島さん。


 ”な・・なにを・・・”


 そこまで口にしたときに、吉岡も後頭部に激しい衝撃を受けて気を失ってしまった。



 ヒッチ隊長は、何をしているのか理解できなかった。

 男二人の後頭部を女性が殴ったのだ。


「さて、なんとかして逃げないとね」

 こいつらの意識がないうちは、魔法が使い放題ね…

 藤島は、日本において魔法が大っぴらに使えなかった憂さ晴らしをしようと狙っていた。


 まずは、目くらましのために煙幕を張るため、煙が多く出る火炎魔法の符を懐からこっそりと取り出す。


 もともと、藤島は符術を得意としていた。魔力を紙などに蓄積し、いざというときに開放するのだ。日頃から符を常時身に着けていたため、日本から数十枚程度の枚数を持ち込んでいる。


 今使おうとしているのは、火炎魔法でも比較的小規模の物。敵をひるませるには十分だろう。


”目くらましをするわよ”

 エリザベスに耳打ちすると同時に、符をヒッチ隊長の足元めがけて投げつけた。


「あ!!ダメっす!!」


 エリザベスが慌てて止めたが、もう投げてしまった後であった。

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