第34話 キノコ雲

 現代の符術に使う”符”は、昔の和紙で作られたものとは違い、カード状の物である。トランプに偽装されているのだ。

 書かれている呪言も、透明なものとなり一般人にはわからない。


 カード状になっているから、昔の物より飛ぶとはいえ念を込めて飛ばした。


 もう、何度もやって来た動作。


 ところが、符は目標を大きく逸れてものすごいスピードで飛んでいった。

 弾丸のようなスピードである。


 それこそ、ヒッチ隊長を通り越し兵たちまで通り越し…

 何百メートルもの先の岩山に突き刺さった。




 ちゅど~~~ん!!



 岩山が吹きとび、物凄い火炎が広がった。爆風の衝撃が全員を襲う。


 火炎は、立ち昇り…数十メートルのキノコ雲となって空を焦がした。



 藤島は、区h氏をパクパクさせながら、キノコ雲を指さしゆっくりとエリザベスの方に顔を向けた。

 涙目になっている。


 ただの目くらましのつもりが、大爆発である。


「あ~~、言い忘れてたっスけど。隊長が言うにはこっちの世界では魔法の効果は何倍にもなるらしいっスよ」

「何倍どころじゃないわよ!」

 半泣きになりながら、藤島は叫んだ。

 何十倍。そうとしか思えない。


 もし本気の魔法を使っていたら、このあたり一帯が消し飛んでいたであろう。


 ヒッチ将軍や兵隊たちは、茫然とキノコ雲を見上げている。

 無理もない。


 こんな大規模な火なんて見たこともない。


 やがてヒッチ隊長が生気の抜けた表情で、こちらを見てきた。

 兵の何人かは・・・ひそかに股間を濡らしていた。


「た・・・退却!!」

「あああああ。悪魔だ~~~!?やっぱり異世界の悪魔だ~!」


 現れた時のスピードも速かったが、逃げるときはさらに速かった。

 全速力で、それこそ死ぬ気で逃げて行った。


 藤島は疲れた顔でエリザベスに言った。


「あなたねぇ…もっと早く言ってよ…」


 藤島は、内心頭を抱えた。

 別の意味で、この世界では魔法が使えない。


 まともにコントロールできる規模の魔法。今、手持ちの符には・・無い。

 先ほどの符が手持ちの最弱に近いものであった。


 他の符は、この世界では威力が強すぎてとても使えない。


「新たな符を作らなきゃ…」

「あ、言っときますけど」

「なによ?」

「この国、紙なんか無いっスよ」


 藤島は叫んだ。


「ええ~~~~~!!」

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