第32話 野宿の朝ご飯

 朝、寒さで目が覚める。

 焚火は相変わらず燃えているようだが、早朝の寒さで目が覚めたようだ。


 焚火をよく見ると、木の枝に刺さった魚が2匹、火のそばで焼かれている。香ばしいにおいがしてきている。


「おはよう…」

 すると、藤島さんが物凄く不機嫌そうに答える。

「おはよう、よく眠れた?」

「おはようございまス」

 魚を裏返しながらエリザベスさんも挨拶してくれる。


「う…ううん。いい匂いだな」

 田中も目が覚めたみたいだ。


 我々はしばらく、食事をしていない。

 魚の香ばしい香りに思わずよだれが出そうになる。


「う…うまそうだな。食っていいか?」

 田中が聞いた。

 すると、予想通りの答えが返って来た。


「ダメに決まってるんでしょ。食べたければ自分で取ってきなさいよ」


 やっぱり?


「どうやって取ったんだよ?釣りとか?」

「針も糸もないのに釣りができるわけないでしょ?岸辺にいたところを手づかみで取ったのよ」(エリザベスさんが)

「岸辺にいるのか?じゃあ、取ってくる!」

 田中が駆け出していく。

「あ!僕も!」

 一緒に僕も走っていった。



 

「あいつら馬鹿なの?走って行ったら振動で魚が逃げるに決まってるじゃない」

「マァマァ。どうセ、岸辺にサカナはいまセンから」

 川岸で、水面を見つめる後ろ姿を見ながら二人はため息をつく。

「そろそろ焼けたようね。塩いる?」

「あ、ありがとうございマス。塩なんか持ッテいるんですか?」

「昔の修行した時、塩が無くて苦労したのよ。あとは、魔法の媒介にも使うことがあるしね」 

「苦労しているんでスネ」


 向こうでは、田中が騒いでいる。

「おーい、川辺にサカナなんかいないぞ~!」

「もっと、よく探しなさいよ!」

 藤島さんが叫び返す。


「この後、どうしようか?」

「ソウですね…」

 魚を食べながら、地図を広げて相談する。

「こっちの道をイクと国境にデルみたいですね」

「ちょっと遠回りじゃない?」

「でも、軍の施設トカ迂回できマス」

「そっか…じゃあ、その道で行こうか」


 相談していると、田中と吉岡が戻って来た。


「おい、見てくれよ。魚は取れなかったけど、代わりにキノコがたくさんとれたぞ」

「あ、それ僕が見つけたんですよ」


 藤島さんとエリザベスはそれを見て言った。


「ソレ多分ドクでス」

「どう見ても毒キノコじゃない。その毒々しい色見てもわかんないの?」


 あからさまにがっかりする男二人。


「さぁ。もう出発するわよ」

「でも、まだ何も食べてないよ…」

「いい加減腹減ったぞ」


「ちょっとぐらい食べなくっても死にはしないわ。置いていくわよ!」


 よたよたと歩く男どもを引き連れて、国境を目指して歩き始めた一行であった。

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