第31話 野宿 女子Side

 夜道を歩く4人。

 せっかく泊まれると思ったのに、追い出された。

 田中の余計な一言で・・・


”まったく!余計なことを言うんだから。情報はできるだけ秘匿しておくってことを知らないのかしら”

”あ・・これ、念話って奴っスね。隊長もやってました”


 藤島とエリザベスは思念で会話を始めた。


”でも、これって便利っすね。向こうの世界では結構メジャーなんスカ?”

”魔法使いの修行を始めたら最初に覚えさせられるわね。何しろ魔法使い同士の会話が漏れるとまずいからね”


”それにしても、どうするっスか?野宿しかないと思いますけど”

”まずは水の確保ね。さっきの川に戻りましょう”

”なんか手馴れてるっスね。あたしはこんな事慣れっこっスけど”

”私も、修行させられているときは何日も山の中を徘徊させられたから慣れてるわ”


 闇を、女子二人は全く意に介していなかった。


”野宿の場合、火はどうするっスか?”

”適当に石をぶつけて火花を出せばいいわ。何とかなるでしょ”

”頼もしいっすね”


 それにしても、さっきの少女の眼差し。

 恐怖に満ち溢れていた。


”なんで、あんなに我々が怖いのかしら”

”昔、この国を異世界の悪魔っていう魔法使いが焼き払ったんㇲよ。

 なんでも、子供の頃に召喚されて変な教育を受けたらしいス。

 そのうち異世界に追放されたらしいんスけど”


”・・・・・あいつか・・・”

”心当たりあるんスか?

”一人、異世界から戻って来て大騒ぎになったことがあるわ。性格がハチャメチャだった・・・敵となったら誰も容赦しないって”

”多分そいつっす”

”・・・日本人のせいなら連帯責任かぁ・・”


 藤島は頭を抱えた。


”ともかく、まずは今夜の寝床ね”

”了解っす、方角は合ってるっス”

「とにかく、どこかで野宿しましょう。水があるので昼間の滝のあたりに行くのがいいと思うわ」

「わたシも賛成デス。あの滝のアタリがいいと思いマス」

 エリザベスさんも、全く動じていない。


「あんなところに行っても屋根もないだろ。雨降ってきたらどうするんだよ」

 田中が文句を言う。

”馬鹿っスか?”

”馬鹿なんだからしょうがないでしょ”


 滝のほうにとぼとぼと歩く男二人を引き連れて歩いていく。




 川についたが、星明りの中とはいえ、あたりは真っ暗である。

「この先どうするんだよ、こんなところで寝るのか?」

「そうだけど?」

「・・・・・・マジか・・」

 何を分かり切ったことを聞くのか・・・


 エルザは男どもをほおっておいて、最初に火をおこしやすい落ち葉などを探していた。


「エリザベスさん?」

「ハイ、近くにいまス」

「何をしてるんですか?」

「落ちバや枯れクサを探してマス」

 何もしていない男二人。役立たずである。


 向こうの方から、バキ!と言う音が聞こえた。

 藤島が流木を折っている。


 そして、藤島さんとエリザベスさんが話し始めた。

「この石でいいかしら?」

「こっちの方がイイと思いまス」


 石と石をぶつけてみる。


 ガキン・・・ガキン・・・・

「手慣れてマスね」

「まぁ、何度もやらされたから」


 ガキン・・・ガキン・・・・

 火花が散る。

 それを、枯れ草で受けている。


 小さな赤い光がともった。

 急に枯草に炎が移りパチパチと燃え上がった。


「早く、木を・・・」

「これデいいでショウか」


 だんだんと大きくなる炎。

 それは焚火となった。


「あなたたち。その辺から気を探してきて!」

「は・・はい!」


----


 ようやく、焚火が安定して燃え始めた。

 僕と田中が探してきた木は湿っているものも多い。本当に役立たず・・

 仕方なく、焚火の近くに置いて乾かしている。


「藤島さん、すごいですね。なんでそんなことできるんですか?」

「アウトドアが趣味なのよ」

「ワタシもイエでは焚火をしてマシた」

 

 だんだんと男二人は眠そうになっていた。田中は舟をこいでいる。


「いいわよ、火を見ておくから寝ておきなさい」

 藤島さんが言う。


 石がゴロゴロしている地面。仕方ないといった風に二人は横になる。

 そして、眠りについた。


”ほんとに寝るんだ”

”見張りはどうするっスか?”

”危険な動物とかっているの?熊とかオオカミとか”

”オオカミはたまにいますけど、めったに人を襲わないっス”

”むしろ、人間の方が危険か・・”

”しょうがないから二人で交代っスか?”

”ほんとにこいつら役立たずなんだから”


 あきれた目で男どもを見る二人。

 ほんと、置いていきたくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る