第25話 土下座は日本の文化です

 土下座。

 それは日本の産み出した素晴らしい風習だ。


 違う国でも、たとえそれが異世界でも通用する。

 誰が見ても、謝罪をしているか・・・もしくは服従しているか。

 言葉が通じなくても、理解してもらえる素晴らしいボディランゲージだ。


「ゴメンナサイ、誤解なんです・・」

「ごめんなさい。切り落とさないで・・」


 二人でそろって平身低頭。大地に頭をつけて土下座。


 河で濡れてしまい、服を乾かしていていたこと。寒くて死にそうだったことを説明し、なんとか誤解を解くことができた。


 藤島さんとエリザベスさんの冷たい視線。

 誤解・・解けたよね?


 いまは、男性・・・エジルさんの起こしてくれた焚火で暖を取っている。

 器用に火打石で火をつけていた。


「それで、あんたらはどこに向かうところだったんだ?」

 すると藤島さんが言った。

「西へ向かうの。国境の方よ」


 田中が文句を言う。


「なんで勝手に決めるんだよ。それよりも首都とかに行くべきだ」

「エリザベスさんと話して決めたのよ。詳しくは後で話すわ」


 なにやら真剣な表情の藤島さん。

 有無を言わせない。


 向こうではエリザベスさんが少女・・エジルさんの娘のジルさんと遊んでいる。

 短時間でずいぶん打ち解けているようだ。


「エリザベスさん、変なしゃべり方~~」

 そう言って笑っている。

「ソウですか・・・わたシ、まだウマく言葉がしゃべれないノデす」


 そちらを見て、エジルさんが目尻を下げている。


「まぁ、それは良いがそろそろ夕方だ。これも何かの縁、今夜はうちに来るのはどうだ?」

 エジルさんが言ってくれた。

 我々は、その言葉に甘えることにした。


「それにしても、なんで急に日本語が通じるようになったんだろう?」

「ソレならば・・キット藤島さんがユウシャなのだカラではないでしょうか?

 ユウシャの能力に違いアリません」

「え~~、てっきり俺が勇者だと思ってたのになぁ!」


 そうか・・・藤島さんが勇者だったんだ。

 それなら、我々は勇者の行く道をついて行くしかないな・・・

 なぜか、藤島さんが物凄い表情で睨んで来た。



―――

 少し後、女子同士のひそひそ話


”言葉がわかるのはあんたの指輪のせいでしょう!なんで私のせいになってんのよ!”

”てへぺろ!”

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