いない猫

入り方や話の進め方が、定番の怪談にある構成に思われて一回騙されました。怪談が好きな人ほどこの話、好きだと思います。

私も同じような経験あるよ！
……と前半を読んで思ってたんですが。

そう来ましたか。

どんでん返しがキリリと決まっております。

　在りし日の愛猫との記憶、懐かしさと共に質感を持って現れたその霊。こう聞くとじつに心温まる展開だと感じながら、そう　では　ない。

　終盤に大きなひっくり返しが起きる。整理して考えてみると、これはYを介したムギ(猫)の飼い主(真)がいだく観念ではないかと察する。畳部屋が古いものとしてフローリング床と対比されるように、そのような生活様式がなかったY以前の誰かとしか思えない記憶これ即ちムギの飼い主ではないか。
　
　そうするとここにムギの霊体、その飼い主の霊(？)、他者の記憶をあてがわれたY、その話を聞かされる語り手、といくつもの層がこの小さい関係性の中に見受けられる。もっと言うと伝聞、都市伝説…続きを読む