第12話

 今日の夜も自室でいつものようにYouTubeを開いた。仙台の妖精の正体については、二人だけの秘密という事にした。女の子と秘密の約束って青春っぽくて少しドキドキしている。なんだかここ最近ドキドキしっぱなしだ。


 よし、今日もその子――笹窯ボコの配信を見よう。と思ったのだが、今日は配信していないようだった。まあさすがに毎日欠かさず配信は大変だよなと思うが、少し残念に感じた。いつの間にかどうやら俺もファンになっていたみたいだ。


 仕方ない、今日は他の動画を見て時間を潰そう。はてさて。


 と思って画面をスクロールしていたら、画面にが反射していた。俺はすぐさま振り向いた。


 すると、そこには。


「こんにちは! 笹窯ボコです!」


 白がベースの髪に茶色のグラデーション、緑色の大きな瞳、いかにも妖精という感じの服装。


 がそこにはいた。イラストをそのまま大きくして立体化したような姿が、そこにはあった。


「ど、どうして……?」


 俺は混乱したまま、目の前の仙台の妖精に訊いた。


「れもんちゃんも言ってたでしょ? 笹窯ボコはわたしだって。それってさ、つまり、


 何を言っているんだ、この子は。


 何も考えられないままでいると、笹窯ボコは俺の手からスマホを奪った。


「ほらほら、今はYouTubeじゃなくて現実にいるんだからさこっちを見てよ」

「篠塚さんはどこにいるんだ!」

「だーかーらー。れもんちゃんもわたしなんだってば」

「違う!」

「違わないよ。わたしは、笹窯ボコで、篠塚れもん」

「ち、違う」


 違う。こんなの、ありえない。バーチャルの妖精が、現実になんて。そんなの。違う。違う。違う。こんなのは違う。


「わかってくれないかー。ま、いいや。せっかくだから今日はちょっと趣向を変えて配信しよっか。でも彼氏バレとか思われるかなー。どうしよっかなー。まいっかー。とにかく始めよ」


 目の前の妖精は、俺のスマホを手早く操作した。


「配信スタート。こんにちは! 笹窯ボコです! 今日も元気に配信していきます!」


 そして今日も、笹窯ボコの配信が始まる。


 彼女はきっと、今日も不思議な雰囲気で視聴者を魅了するのだろう。

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