第5話

夢眠 中学生



「父親にもされてたんだよね。


「お前、早く死ねよな」


なんて毎日のように言われてたよ。



でも、ある日さ。


なんか仕事で嫌なことあってそのまま帰ってきたその人に、


僕襲われてさ。


殴る蹴るは毎日だったから、

そっちじゃなくて。


本当にあれは怖かった。


今でもたまに思い出して怖くなる。


それでも女の人の方が嫌なんだけど。


それがあったから中学卒業してから

家を出てバイトしながら通ってるんだよ。


極力話したり、触れ合ったりしないようにだけど。


でもやっぱり毎日のように言われてたから

もう自分に自信が持てないっていうか、

自分が嫌いになってさ。


自分って何も出来ない人間でただ居るだけ、生きてるだけで無駄な存在、

邪魔な存在なんだって思っちゃう。



それがきついんだよね。



だから小さい頃からどうやったら死ねるか 暇さえあれば考える癖がついちゃって。


でも死んだらそのあと火葬もあるからなぁとか

その後のことも考えて、

よく分かんなくなって、

また振り出しに戻って。


それの繰り返し。


今日も何回

こうやって死んだら良いのか?

いや、その後がなぁー。


って思ってるか分からんな。


存在ごと消えたいなぁ。


だからそう思った時に

夏儺と離れ難いなって。


そうゆうこと」





「夢眠…。目」



静かに聞いてくれてた夏儺に指摘されながら触られて泣いてることに今気付いた。



「…ははっ。もう精神崩壊してるみたいだ。笑えてくる」



あははっ。

と馬鹿みたいに笑ってしまう。


そんな姿を見せるのは初めてで、夏儺がオドオドし始めた。



「夢眠、え、何?

ちょ、もうすぐ着くからね」



泣いてるのに、笑ってる。


僕にとってはいつも通りなんだけどな。


でも、『離れ難い』って言うのは


今夏儺の頭から抜けてるみたいだからいいや。



「あー、班長ー!夢眠が壊れたー!」



改札から出て駅前で班長を見つけるなり、

夏儺が僕の腕を引きながら叫んだ。



「?どうした?ん?花影が泣いている?」


「なのに笑ってるよ?」


「笑い泣き、ではないよな?ちょっと怖いよどした?」



みんな心配してくれるのは嬉しいけど、

大袈裟すぎてまた笑ってしまう。



「ははっ、いや、昔話してたらねぇ、こうなった」


「昔話?花影の?」


「花影自身の話なんて聞いたことないよね?」


「だって話したことないし、話すことでもないし」


「え、聞かせてよ」




あぁ、変なことになったよ…。

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