第4話「アルベルト・R・セナ」

 僕は自分の家があまり好きはでない。

 いや、嫌いだ。


 窮屈過ぎる部屋に重苦しい空気感。


 生まれ変わって尚。

 僕の世界は変わらないのか……。


 ただ、前世と違うのは縛れないこと。

 干渉がなくクールな家庭は、

 僕にとってはある意味、ラッキーだった。


 僕はこの世界の色々な場所を、見て周るのが好きだった。

 前世も今もずっと一人だ。


 ただ、孤独感はない。

 何故ならば──ずっと一人だったから。

 誰かと一緒に居るってのがどんな事か分からなかった。


 ────いやもう興味がなかった。

 今更、だった。


 そんなのメリットがあるのかい?

 僕には分からなかった。


 親子の手を繋ぐ姿。

 赤子を抱き締める姿。

 僕には関係のない事だった。


 僕はいつもの様に未知の場所を探検する。

 そして、幻想の森へと足を運ぶ。


 僕は森の中を歩いた。

 こんなに綺麗な森は見た事がない。


 一つ一つが、木が優しい光を放っている。

 綺麗だ。


 僕は美しい景色を見るのが、大好きだ。

 これを見ている時は、心が癒される。

 癒されるってのは、僕はこの世界で初めて知った。


 すると、少し空気感が変わったような気がした。

 僕は徐に魔法を唱え。

 ──その場へと向かった。


 そこに居たのは──

 僕と同い年くらいの黒髪の少年だった。


 ものすごく、怯えた姿。

 何かに追われている。

 僕は魔法で感じとった。


 ──そして、僕はニッコリと微笑みながら声をかけた。


 えっ……びっくりした。

 急に声をかけたからって。

 そんな驚くと思わなかった。


 目の前の少年は僕をまじまじと見ている。

 何かまずいことを言ったのかな?


 この間──どうしたらいいんだろう。

 ずっとこの子──僕の方を見ているよ。


 僕はおどけた振りをして。

 少年に声を入れた。


 少年はまた、じっくり僕を見ている。

 何か変な事を言ってしまったのだろうか?


 少しして、少年が僕に謝ってきた。

 驚かせてしまってごめんなさいと。


 僕はその少年に名乗った。

 しまった……全ての名前を言ってしまった。


 それに途中で気づいて。

 なのだよって変な話し方になった。


 どうしよう……。

 すると、少年は直ぐに名乗った。


 ──えっ???

 何も聞かないの?


 なんで???

 僕は予想外だった。


 僕は少し動揺して。

 彼に変な名前って言ってしまった。

 ────嫌われる。


 すると、彼は名前の組み合わせを気にしていた。

 僕は呆気に取られて。

 ────初めて感じた感情に支配されていた。


 僕は不思議な感覚に浸りながらも、

 彼に告げた。


 魔物が近くにいるという事。

 しかも、近づいている。


 目の前の彼が音が近くなる程に怯えだした。


 守りたい。

 ────えっ???

 守りたいって何?


 ────えっ???

 知らない。


 僕はハッとして考え出すと何故か、僕は魔法を唱えていた。


 目の前の彼は目を輝かせている。

 僕の魔法を見て。

 なんて、瞳をしているんだ。


 僕はその瞳に見惚れながらも。

 彼に声をかけた。


 やはり、彼は親が居るらしい。

 また僕は一人だ。


 ──寂しい。

 まだ一緒に居たい。


 寂しい?

 ──何この感情。


 この感じが孤独感。

 僕は寂しい人間なの?


 僕は考えに浸っていた。

 僕から離れようとする彼の姿を見て。

 言葉が零れてしまった。


 一緒に居たい

 僕は何言っているの??

 断られる……きっと。


 ──寂しい。


 すると、彼は僕の手を握り。

 一緒に行こうと言ってくれた。


 ──嬉しい。


 僕は彼の背中を見ながら走っていく。

 夜の田んぼ道は足音が響く。


 でも、この足音はとても心地がいい。

 いつもの足音と違う。


 そして、僕は彼の家の前に着いた。

 僕は緊張した。


 なんて顔をして入ったら良いか、

 分からなくなっていた。


 僕はこういうのには、

 慣れっこだったのに。


 緊張しながら彼の家へと入る。

 優しい笑顔を見せる女性の姿があった。


 僕は何とも言えない気持ちになった。

 これが母親。


 僕は徐に間を空けて挨拶をする。

 彼女の母親は何も聞かずに笑顔を見せて。

 泊まっていけと言う。


 ──えっ……。

 僕はまた予想外だった。


 僕はそのまま泊まることにした。

 そして、僕はクリームシチューを食べる。


 ──美味しい。


 心に染み渡る。

 美味しい……。


 僕はこんなに美味しい食べ物を知らなかった。


 ──食卓を囲むってことが。

 こんなにこんなに幸せなんだって事も。


 僕はそう思いながら。

 後悔した。


 今まででの僕の人生はなんだったのだろう。


 僕は寝室に行く際。

 彼にわがままを言ってしまった。

 一緒に居たいと。


 そして、一緒に横になった。

 彼は魔法が知りたいらしい。

 僕に教えて欲しいと……。


 まだ一緒に居れる。

 ────嬉しい。


 僕は優しい眠りについた。


 次の日──

 僕は彼に魔法を教えていた。


 しかし、おかしい。

 彼は魔法を使えないらしい。

 ────この世界は魔法が当たり前なのに。


 僕は考え、行動を起こした。

 そして、魔法の講習を開始した。


 まずは火属性の魔法だ。

 彼は使えない。


 でも、彼はとても目を輝かせていた。

 その後も他の属性を試すが、

 魔法が使えない。


 だが、彼の瞳はずっと綺麗だった。

 、光属性のみしか使えないか。

 ──なるほど。


 僕は光魔法を唱えた。

 そして、彼は同じ魔法が使えた。


 彼の喜びが僕の心にも伝えていく。

 ──嬉しい。


 彼はその時、幻想の森で見せた。

 魔法を唱えた。


 僕はその光に見惚れてしまった。

 なんて……綺麗な光なんだ。


 僕の使った魔法を唱えてくれた。

 ────嬉しい。


 何故か彼は僕を茶化した。

 僕は感情的になった。

 彼の表情を見ていると。


 すると、彼が僕の笑顔が僕の笑顔を見ると。

 ──幸せになると言う。


 僕は驚愕した。

 ──僕の世界では作り笑顔しないといけなかった。

 その僕が笑顔??


 しかも、僕の笑顔を見て幸せになる?

 嘘だ。


 そんなの……しんじれ──その瞳は嘘じゃない。

 ……本心で言っているんだ。


 ……この世界に来て僕は救われたんだ。

 ありがとう……本当にありがとう。


 ────僕はこの出会いにとても感謝をした。



 お昼ご飯を食べて。


 魔法の練習を再開した。

 僕は気合いが入った。


 彼の役に立ちたい。

 少しでも彼の助けになるのであれば。

 それがこの世界に僕が来た、意味なのだと。


 僕は魔法を唱えた。

 また彼は目を輝かせていた。


 やった、僕は役にたっているのだよ。

 ──嬉しい。


 僕は二つ目の魔法を教えようとした。

 アイテムボックスから短剣を出し。

 治癒魔法を教えようと。


 回復魔法は絶対に必要。

 彼は喜ぶ。

 また、彼の綺麗な瞳が見れる。


 すると、僕の予想と違う──動きをしている。

 何故──僕の血を止めようとしている?

 これから僕が治癒魔法を見せるから。


 ……えっ……なんでそんなの悲しそうな顔をするの?

 僕はわからないのだよ。


 僕の為に?

 そんな顔をしているの?


 ……………………………………



 僕は身体が動かなかった……。

 僕の瞳はからだんだんと彼が消えていく……。


 僕は…………。





 ──彼の手から暖かい光が全身に伝わってくる。

 僕の今までの後悔がその光で消えていく……。



 ────彼に会えて良かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る