10話




「これより、第一異能学園、クラス分け試験を行う。生徒は速やかに整列し、列を乱さぬよう移動せよ。そして、第一学園に恥じぬ結果を出して欲しい」


 校長らしき人物が前に出て生徒にそう言い聞かせる。

 ……あれぇ? あの人どこかで見たような……


「はーい、お前らこっちに注目ー!」


 そこで担任から声がかかった。


「このクラスはまず、異能の移動速度から測る。この中で攻撃系の異能を持っている奴は前に出てこい」


 異能、使いたくなかったんだけどここ異能学園だし仕方ないよね。



 異能には分類があって、主に攻撃系と身体作用系、そして時空間作用系の三種類に分けられる。


 攻撃系は文字通り相手に攻撃をするための異能。有名なものだと[炎-焔-]だとか[氷-雹-]、他にも[鞭]なんてのもある。


 身体作用系は、人体に直接作用する異能のこと。

 [治癒]や[洗脳]、[身体強化]などがこれに当てはまる。


 時空間作用系は世界の時間空間に作用する異能のこと。

 それは強力だったり微々たる影響しか及ぼさなかったり、人によって効果は様々だが、いずれにせよ時空間作用系の異能はゲームで言うところのスーパーレアな存在なので、世界的に重宝されている。

 [異空間収納]や[時移動]など、世の理を覆すものが多い。


 ちなみにアゲハの[絶対勘知]は身体作用系に属する。


 ボクのは……ちょっとイレギュラーなものだから、これにはビミョーに該当しないかもしれない。


 まあとりあえず、ボクは攻撃系の異能だと[雪切華]と[黒焔]を持っているからどちらにせよ参加だ。

 蒼炎サンは言わずもがな、[蒼炎]を持っているから同じく参加。

 他には確か、[黒炎]も持っていると聞いた。

 実はボクも持っているこれらのような«黒い炎»は割とレアな方に分類される。

 だいたい300人に1人くらいのものだ。

 でもまあ、一人につき異能を3個〜5個持っていることを考えれば、900〜1500分の1の確率になるのかな。


「龍真は攻撃系のやつ持ってるか?」


 うんうん、ボクが知ってたらオカシイからね。一応聞くよ。


「……あぁ。[焔]と[赫炎]だ」


 [蒼炎]と[黒炎]は隠すんだね。

 って言っても、[赫炎]も中々にレアなんだけどね。

 だいたい50人に1人くらいだけど。


 [焔]っていうのは[炎]の進化形みたいなもので、さらに[焔]の進化形が[赫炎]や[黒炎]などだ。

 他にも[氷]の進化形は[雹]だったりと、異能力は鍛えれば鍛えるほどグレードアップしていく。


 因みにボクと蒼炎サンが持っている[蒼炎]や[雪切華]は固有異能と言い、ごく少数の人しか持っていない異能力のことを言う。

 固有異能だと世界中でも片手に数えられるほどしか同じものを持っている人はいない。

 [蒼炎]に至っては、保有者は龍真クンたった一人を除いていない。


 まあ、つまりは[蒼炎]の異能を持っていることを話すということは、自分のことを《青霧》の『蒼炎』だということを話しているようなものだ。


(ま、普通隠すよねぇ)


 見ている感じ、彼は普通の生活を送りたがっているようだし。


(でも、果たして彼にそんな事が出来るのか……)


 日本トップクラス、少数精鋭の《青霧》隊員にして序列一位を今まで貫いてきた彼が、その力を他人に悟らせない事など、出来るわけがない。

 なにか危機的状況に陥った時、彼は咄嗟に力を使ってしまうだろう。


 現代社会でいう、“電子機器”の使用を禁止されているようなもの。

 意識的には使わないものの、無意識下にはその力が垣間見えてしまう。


(こんな《青霧》だらけの学園に入学させたのだって、そのための抑制剤を用意していたに過ぎない。恐らく、《青霧》隊長は任務という名目で龍真クンをここに来させたのだろうけど、実際は人並みの生活を送って欲しかっただけなんじゃないかなぁ)


 調べてみても、この学園の《青霧》隊員・元隊員達は、この数年で入って来た者が多い。

 元々青霧のメンバーはいるにはいたものの、その数は今の3分の1にも満たないだろう。


(いやぁ、縛られるってコワイねー。でも、そんな人を観察するのはとっても楽しいや)


 ボクは密かに笑みを携えながら、試験会場へと歩いた。


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