11話



 黒く四角いカメラレンズがついた計測機器のようなものが並んでいるところに、ボクたちは集まった。


 ここから異能を奥へ撃ち込む際に、横にある計測機器が速度を測るらしい。


 ボクはどれくらい力を出そうかな?

 とりあえず蒼炎サンを見てから決めよう。



 始めの人は少し遅かった。

 記録は935リト。

 リトというのは異能の速度の単位で、平均が600前後って聞いたことあるような気がする。

 そこら辺は興味が無いからあまり覚えていないけど、そう考えればこれは高い方なのかな。


 ちなみに、あの人の異能は[空気砲]らしい。

 一見弱そうに聞こえるが、使いようによっては人を殺すこともできる異能だ。



 次の人は……普通。

 1203リトだ。

 あれれ? こんなに遅いものだっけ?



 周りは歓声を上げているが、ボクはイマイチだった。

 隣の蒼炎サンもそんな感じだ。

 頭にはてなマークが浮かびそうな顔をしている。



 なんだか釈然としないまま、蒼炎サンの番が来た。


「じゃ、行ってくる」


 そう言って彼は指定位置に立つ。

 そして片手を掲げ……




 ───ヒュンッ!




 その場の皆が一様に目を疑った。



 ───なんだ今のは? 本当に放ったのか?

 ───見えなかった……



 担任すらも唖然とする中、ボクは満足気に呟く。


「そうそう、それだよ! それが攻撃系異能だよねぇ」


 記録は4823リト。

 うんうん、妥当だよね。

 ……多分これは本気じゃないだろうけど。


 にしても蒼炎サン、最初からぶっ飛ばすねぇ。

 でもさすがにボクがあの速度で打ったら怪しまれるから、もうちょっと弱くしよ。


 それからしばらくして、ボクの番がやって来た。

 指定位置に立ち、両手をだらんと下げて異能を当てる目安の的を睨むように見る。


 そして……




────[炎]


 ビュッ!











「あ、あー……」


「「「「「……え?」」」」」





 ピピピッ


 計測機器の電子音が鳴る。



 【5212】




「……計測結果、5212、リト……?!」


 教師が驚きの声を上げる。

 もちろん蒼炎サンも目を見開いていた。

 これにはボクも予想外だ。


(異能を意地で使っていなかったのが、こんな形で裏目に出るとは……)


 しばらく異能力を使っていなかったせいで、制御が甘くなっていたようだ。


 数年前はそんなこと無かったのに……。


 でも感覚は掴んだから、もう大丈夫だ。


 まさか本気じゃないとはいえ蒼炎サンの記録を超えてしまうとは……。


 《青霧》メンバーに目をつけられただろうけど、特に優秀なのは速さだけって事にしとこ。

 ボクは蒼炎サンと同じクラスになれれば良いだけだしね。

 今回は失敗しちゃったけど、次からは少し優秀なだけの生徒だってアピールしないとな。



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