第6話 イイハナシカナー?

 こんにちは。セレスティア・ラル・シャンデール(10歳)です。


 あれから早いもので月日がすぎ、私も10歳になりました。

 破滅フラグを0歳にして早々につぶしてしまったため、これといって人生の目標はありません。

 兄リュート、兄アレスもどちらもいい子ですし、どちらが王になってもきっと国は繁栄するでしょう。二人とも仲がとてもいいため、王位を争って戦争などという事もまずないと思います。そのため私が出る幕はまったくありません。

 

 

 そして元々はこの世界はRPGの世界です。

 主に勇者の冒険がメインなので王族などたまにイベントでおつかいの依頼をしてくるか、やられ役ででてくる程度の存在のゲームです。

 つまり何が言いたいのかと言うと、王族の設定がおもいっきり「ふわっ」としていることに気づきました。

 

 父と母がいい人すぎて寛容なだけなのかもしれませんが、王族としての仕事も特になくわりと自由に生きさせてもらっています。


 変な皇族と婚約させられて公衆の面前で「婚約破棄だ!」と婚約破棄されることもなく、かといって隣国から白馬にのった王子様がくることもなく、縦金髪ロールの令嬢に嫌がらせされる事もなく、変な竜がやってきて運命の番だーと迫ってくることもありません。


 誰にも嫌がらせされることなく、障害になりそうなものは親や兄たちが全力で先回りして排除して守ってくれるため、私はとっても平坦な人生をおくっています。


 何が言いたいかと言うと。


 ぶっちゃけ暇です。


 家族愛に満ち溢れた現状に何か不満があるわけではないのですが、0歳にして人生の最大目標をそうそうに成し遂げてしまったため、目標がない事に気が付きました。

 失敗しました。これなら魔族の残党くらいは残してやるべきだったでしょうか。

 完膚なきまでにその場に居合わせた魔族はすべて叩き潰してきたため、「魔王様の仇―!」とほかの魔族が来ることもありません。




「――というわけでお父様。平民のふりをして魔術師学校にはいりたいです」


 執務室で仕事をしていた父に話しかければ


「うん。僕の可愛いセレスティア。

 もちろん可愛い娘のお願いなら何でもかなえてあげたいところだけれど、

 何でそういう結論に至ったか過程もちゃんと説明してもらってもいいかい?」


 と、にっこり微笑みました。

 赤子の時から10年たっているにもかかわらず相変わらず若いままのイケメンなのはやはりイケメン補正だからでしょうか。


 そう言えば父に何故そういう結論になったか話すのを忘れました。


 暇 → 何か人生に盛り上がりがほしい → 王族だと皆距離をおくか、かしこまっていてつまらない → ていうか、この10年友達ができない → 王族だからみんな遠慮しているに違いない →平民になればいいんだ!転生物Web小説の主人公みたい!


 と、とてもくだらない理由なのですが。流石にそれを親に言うのははばかれます。

 私としたことが失敗しました。せめて父親を説得する言い訳くらいは考えて挑むべきだったのに、思い立ったら吉日で行動してしまいました。


 転生して10年。私はある事実に気づきました。


 どうやら、私は深く物を考えて行動するタイプではないという事を。

 わりと脳筋です。思い立ったが吉日で行動するタイプです。


 王族は暇だから平民になって4年過ごし、友達と青春を謳歌したいなどと、そんなことを許してくれる王族がどこにいるでしょうか。せめてもっともらしい理由を考えてくるべきでした。


 私が思案していれば


「……わかった、僕にも話せないようなことなんだね?」


 と、父が憂いを秘めた目で尋ねてきました。


 はい。内容が恥ずかしすぎて話せません。

 20歳くらいになったとき立派な黒歴史として過去を消去したくなるくらいくだらないです。


「わかった、セレスの好きにするといい。

 僕はいつだって君の味方だよ?

 君は優しくて分別もある。君が隠すほどという事はそれなりの考えがあるんだろうしね」


 と、にっこり笑いました。


 ――天使――


 何ですかこの絵に描いたようないい親は。

 申し訳ありません、これで子供がちゃんと考えがあって思慮深い子だったら、無条件で子供を信じてあげ、自主性を重んじられる賢い親と崇高な目的のために頑張る子供として語り継いでいいレベルの「イイハナシダナー」となったのですが……。


 あいにく子供が馬鹿だったせいで、貴方の評価まで「単なる親ばか」という悲しい結果になってしまいました。

 貴方の子どもはそこまで凄い事は考えておりません。過大評価のしすぎです。


 今更何の考えもありませんでした★とは、空気の読めない私でも言えません。

 ここは全力で乗っかるのみです。


「ありがとうございます。お父様。必ずや目的を果たして見せます」


 美少女オーラを振りまいて言う私。

 美少女は得です。特に何も考えていなくても周りが勝手に深読みしてくれます。

 何も考えていない私でも、凄そうに見えるのは美少女補正があるからでしょう。


 やっと人生の目標ができました。

 この四年で――平民で学校に行きたがった凄い言い訳を考える。

 

 これが私の人生最大の目標です。

 まぁ、四年もあるのでなんとかなるでしょう!たぶん!

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