4月30日 異国より

長い間更新していませんでした。

実は最後にエピソードを公開した後すぐに赴任先から「30日以内に渡航してください」と連絡があり準備に追われていました。何と5日前の4月25日に「飛行機のチケットを予約しました、28日です」とまた急な連絡がきて慌ただしく渡航しました。

というわけで、今異国の地で隔離されています。


隔離期間中はフルで働いてはいけないらしく、時間だけはあるのでしばらくゆっくりしようと思います。忙しくて読みかけにしたままのお話を読んだり映画を見たりして過ごそうかな。ホテルが広くて綺麗なのでありがたいです。


何かダイアリーに書けるような怪異を探したんですけどね、何もなさそうですよ。部屋に幽霊もいないし、向かいの廃墟ビルにはもちろん怪しげな人影もなく、隣室から聞こえてくる咳はちゃんと隣室の宿泊客がしていた咳でした。実は隣室は空き部屋で……なんてことはありませんでした。


そんなわけで怪異蒐集は隔離期間明けにすることにして、今はひたすらだらだらしています。何かあれば海の向こうの怪異録に随時追加していきます。写真などはTwitterに載せているのでよければそちらも覗いてみてください。


……ところで、先程書類を整理していたんです。こんな時期の入国ですので、書類が大量にあります。陰性証明書やら隔離ホテルの予約控えやら、合計20枚以上の紙の束です。

その中に赤い封筒がまぎれ込んでいました。呪いの手紙といった類ではなく、遠く離れた大切な人からの手紙です。1年以上前にもらって、確か実家の本棚にあるお手紙ボックスに入れたはずのものなんですが。「絶対遊びに来てね! おいしいパスタやアイスクリームを食べよう」といったことが書いてあったはずなんですが。


懐かしくなって封筒から手紙を取り出すと


『私があなたを愛していることをいつまでも忘れないで』


という一文が目に飛び込んできました。以前はそんなこと書いてなかったはずです。


いつからか連絡を取らなくなってしまったので、きっと寂しい思いをしているのでしょう。その人が泣いている姿がふっと頭に浮かびました。明日連絡してみようと思います。赴任のこと、何も知らせていなかったのできっと驚くでしょうね。その人のいる国と日本はすごく離れていましたが、今私がいる国はさらに遠くなってしまいました。もしかしたらもっと悲しませるかもしれません。


ただ、何となく思うんです。一緒にパスタやアイスクリームを食べるのはそんなに遠い未来ではないんだろうなと。

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奇異ダイアリー ツカサ @tsukki0922

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