第6話
汚名が晴れた翌日、紅葉は朝一で担任に職員室に呼び出されていた。
特に謝罪もないまま、謹慎が明けたことをぶっきらぼうに告げられた。
勘違いで濡れ衣を着せられたというのに、謝罪の一言も無いのだ。
朝のショートホームルームが始まるまで、まだ時間がある。天気も良かったため、紅葉は屋上に訪れていた。朝早いこともあり、そこには誰もいない。寝っ転がって、広々とした屋上を独り占めする。
「……こんなもんだよなぁ」
先ほどの教師の対応を思い出して、独り言をぽつりとつぶやく。今までだって、似たようなことは何度もあって、その度にまったく信じて貰えなかったのだ。
けれど、今回は違った。水野彩葉。あの子だけは紅葉を信じて、紅葉のために動いてくれたのだ。落ちこぼれで、どうしようもない自分を見捨てなかった。
「お人よし……お節介?世話好き……」
どれもしっくりこない。特にメリットもないのに、どうして彩葉が自分のために尽力してくれたのかちっとも分からなかった。
けれど、きちんと感謝をしなければいけないのは確かだ。どうすればこの気持ちが伝わるか、昨晩悶々と考えたが、方法は一つしかなさそうだ。
傍に置いてあるリュックサックから、参考書を一冊取り出す。難しくて、中々理解することができなかったけれど、恩人のために紅葉は必死に参考書と向き合っていた。
放課後になって図書室へ向かえば、やはりそこには水野彩葉の姿が合った。紅葉と目が合うやいなや、嬉しそうに手招きをしてくる。
「ちゃんと来てくれたんだね」
「当たり前でしょ。……これ」
参考書を手渡せば、彩葉は意外そうな表情を浮かべた。宿題として出された分に加えて、この前の勉強会で解けなかった部分もきちんと解きなおしてある。
「……丸付けて」
「うん」
赤ペンを取り出して、彩葉が一問ずつ解答と照らし合わせて丸付けをしてくれる。その表情が凄く嬉しそうで、たまにはまじめにやるのは良いかもしれないと、紅葉はこっそりとそんなことを考えていた。
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