第5話 始まりの街(前編)

 それはほんの一瞬の出来事。その感覚は正直言って慣れたいものじゃないが、二人にとっては大したことない事なのだろう。


 郊外に出現した途端、二人はその好奇心を街の外壁へと向けていた。


「すごいな、ロキは――」

「すっごいでしょ! ロキはすっごいんだからね!」


 すかさず振り返ってそう告げるルキ。まるで自分の事のように、胸を張って答えている。そんなルキを微笑みながら、ロキはその頭をなでていた。


「じゃあ、行こうか」


 もうこのままいくしかない。当然、歩き出すその先には衛兵が待っている。見知った顔がいる事を願いながら、俺は二人を誘って歩き出していた。


「たのしみだね」

「うん、たのしみ」


 二人にとってはこれが冒険の始まり。そして、俺にとっての始まり街に向かう。周囲に魔王の配下の気配はないが、たぶん今も監視している魔王に言いたい。


――もっと先に言ってくれよ! この魔法!


 一抹の不安はあるが、俺達は王都の門へと向かっていた。

 

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